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中国のGDPは嘘だらけ。人民元安と資本流失のダブルパンチで暗雲漂う

中国経済の「負の連鎖」がいよいよ本格化か―。2015年度のGDPを「6.9%の成長」と発表している中国ですが、「現状とはかけ離れている」とするのは無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さん。では実際、中国経済はどのくらい危険な状態にあるのでしょうか。北野さんがさまざまなメディアの記事を引きつつ、わかりやすく解説して下さいました。

中国経済の今

中国の挑発がますますエスカレートしています。

中国機へのスクランブル、最多208回 7─9月

朝日新聞デジタル10月14日(金)22時57分配信

 

防衛省統合幕僚監部は14日、7~9月の航空自衛隊戦闘機による中国機への緊急発進(スクランブル)が208回で、前期より9回増えたと発表した。四半期ベースで3期続けて過去最多を記録した。

 

中国軍の戦闘機とみられる2機が9月25日、戦闘機としては初めて沖縄本島と宮古島の間を通り、東シナ海と太平洋を往復するなど、中国軍機の行動範囲は拡大が続いている。

対中国機スクランブル、7~9月で208回(!)。毎日平均2回以上じゃないですか!心配です。なぜ中国は、ますます攻撃的になっているのでしょうか?どうも、経済が本当にやばいことと無関係ではなさそうです。

中国経済、唯一信用できる指標は?

中国のGDP、2015年度は6.9%の成長だそうです。しかし、この数字を信用している人は誰もいない。「ホントは、4%だ!」とか、「いや、3%だ!」など、いろいろいわれています。要は、誰も正確な数字がわからない。

「中国のGDP発表は、あてにならない!」。なんと李克強首相も断言している。同首相によると、あてになるのは、

この三つは、「克強指数」として、世界的に知られています。小泉総理や安倍総理のブレーンをされた高橋洋一先生は、『中国GDPの大嘘』の中で、こんなことを書いておられます。

中国が発表する統計のうち、数少ない、というか、唯一信用できるのが、この貿易統計。貿易統計は外国との関係もあって捏造しにくい。相手国の「正しい」対中国貿易量を集計すれば正確な数値が求められるからだ。

そのとおりでしょう。日本の対中輸出額と、中国の対日輸入額は、同じ数字でなければならない。GDPやその他の指標と違い、ウソをつけば、即座にばれます。唯一信用できる貿易統計で見ると、高橋先生は、「2015年のGDPは、6.9%なんてとんでもない。おそらく、マイナス3%だ」(!)と断言されています。

ちなみに2015年の中国貿易。貿易総額は、前年比8%減の3兆9,586億ドル。輸出は2.8%減の2兆2,765億ドル。輸入は、14.1%減の1兆6,820億ドル。確かにこれで、「GDPは6.9%増です」って、「怪しい」を通り過ぎて「不可能」ですね。

中国経済の今

では、2016年9月時点の中国貿易はどうなのでしょうか?

中国の輸出、急ブレーキ 9月は1割減、7カ月ぶり水準

朝日新聞デジタル10月13日(木)13時27分配信

 

中国の税関総署が13日発表した9月の貿易統計によると、輸出が前年同月比10.0%減の1,845億ドル(約19.1兆円)と大きく減った。輸出の前年割れは6カ月連続で、減少幅が10%以上になるのは7カ月ぶり。世界的な貿易の低迷が、中国経済に重くのしかかっている。

輸出は9月、前年同期比で10%減少(!)。

9月は最大の貿易相手の欧州連合(EU)向けが約10%減るなど、米国や日本、東南アジア諸国連合(ASEAN)など主要な貿易相手向けの輸出が軒並み5%を超える大きな落ち込みを示した。
(同上)

一方、9月の輸入は同1.9%減の1,425億ドル(約14.8兆円)で、2カ月ぶりの前年割れとなった。
(同上)

輸入は1.9%減。2015年は、14.1%減でしたので、よくなっています。しかし、輸出は、昨年通期の2.8%減が、9月は10%減になっている。

輸出が落ちこんだことで今後、中国の輸入にも影響が出る可能性がある。
(同上)

輸出が10%減ったということは世界市場で中国製品の消費が10%減ったことを示しています。そうなると、中国企業もそれにあわせて生産を減らすことでしょう。消費が減り、生産が減れば、企業の売上と利益が減り、所得も減ります。所得が減れば、中国企業、中国人は、投資も消費も控えることになるでしょう。そうなると、当然輸入も減っていくことでしょう。

図にすると、

世界における中国製品需要の減少 → 中国輸出減 → 中国生産減 → 中国所得減 → 中国消費減(輸入減)→ 中国生産減 → 中国所得減 → 中国消費減 →

以下同じプロセスの繰り返し。

このように、中国経済に暗雲が漂っています。夕刊フジ10月15日付は、人民元安と資本流失が深刻であることを指摘していました。

中国、止まらぬ人民元安 見掛けより深刻な資本流出 ゴールドマンが警鐘

夕刊フジ10月15日(土)16時56分配信

 

中国の通貨、人民元の下落が止まらない。10月から国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に正式採用されたが、約6年ぶりの安値水準まで売り込まれた。

 

そんな中、中国からの資本流出は見掛けよりも深刻かもしれないと米投資銀行のゴールドマン・サックスが警告している。

 

人民元は「国慶節」の連休明けの10日から続落し、11日には一時1ドル=6.7148元と、2010年9月以来の元安水準になった。米国の利上げ観測やドル高も元売りに拍車をかけた。

 

ブルームバーグによると、8月の公式統計では、人民元決済を通じ277億ドル(約2兆8,700億円)が中国から流出した。

 

2014年までの5年間の月平均では44億ドル(約4,560億円)にとどまっている。

人民元安、資本流出について、週刊東洋経済元編集長の勝又先生は、こう解説します。

人民元安と資本流出の背景について、週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏はこう解説する。

 

「SDR採用を決めた当のIMFが、中国の債務水準に警告を発しているうえ、国際決済銀行(BIS)は3年以内に中国で金融危機が起こる危険性があり、米国のサブプライムローン危機やアジア通貨危機の前より厳しい状況だと警告している。元売りや資本流出は避けられない」
(同上)

「米国のサブプライムローン危機やアジア通貨危機の前より厳しい状況」だそうです。「中国、あるいは欧州(特にドイツ)から次の危機が起こる」というのは、世界的コンセンサスになりつつあります。パニくる必要はありませんが、心の準備とできる対策はしておきましょう

image by:  Frame China / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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