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打倒マクドナルド。「牛角」がフレッシュネスバーガー買収で殴り込み

「牛角」などを傘下にもつ外食チェーン大手の「コロワイド」が、国内ハンバーガーチェーン4位の「フレッシュネスバーガー」を買収することを発表しました。ハンバーガー業界はまだまだ新規参入企業の成功が見込めると分析するのは、無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さん。コロワイドはマクドナルド・モスバーガーの2強の牙城を崩すことはできるのでしょうか。

コロワイドがフレッシュネスバーガーを買収、マックやモスを追撃

こんにちは、佐藤昌司です。外食大手のコロワイドは10月14日、「フレッシュネスバーガーの運営会社を買収すると発表しました。フレッシュネスバーガーは首都圏を中心に約160店舗展開し、国内ハンバーガーチェーンで4位の規模です。カフェスタイルで高品質のハンバーガーなどを提供しています。

コロワイド傘下で「牛角」や「温野菜」を運営するレインズインターナショナルが全株式を取得し、「牛角」などのFCオーナーに出店を呼びかけるなどして店舗を拡大していく方針です。

コロワイドの2016年3月期の売上高は2,341億円で、ゼンショーホールディングス(HD)、すかいらーくに次ぐ業界3位です。日本マクドナルドや吉野家を上回る規模を誇ります。

コロワイドは当初、「甘太郎などの居酒屋を主体として事業を広げていきました。その後、M&Aにより事業の多角化を進めていきます。例えば、05年にはレストラン「ステーキ宮」などを展開するアトムを連結子会社化し、14年には回転寿司店「かっぱ寿司」などを展開するカッパ・クリエイト(HD)を子会社化しています。

コロワイドの礎を築いた居酒屋業態の市場環境は厳しさを増しています。若者のアルコール離れや消費者のニーズの多様化により市場規模は伸び悩んでいます。焼き鳥をメインにした居酒屋「鳥貴族」や水産系居酒屋「磯丸水産」などの専門性のある居酒屋は躍進していますが、総合居酒屋は衰退の一途をたどっています。コロワイドは総合居酒屋からの業態転換を進めていますが、市場規模の拡大は大きくは望めない状況です。

コロワイドは事業のポートフォリオを居酒屋業態主体からレストラン業態主体へと大きく舵を切りました。13年3月期では居酒屋が約6割、レストランが約4割の構成でしたが、16年3月期には居酒屋が約3割、レストランが約7割となっています。市場規模が約13兆円あるレストラン事業で更なるシェア拡大を目指していくようです。

こうした背景の中、コロワイドはフレッシュネスバーガーを傘下に入れました。ハンバーガー業界ではマクドナルドとモスバーガーの2強が君臨しています。マクドナルドは14年夏以降に発覚した期限切れ鶏肉の使用問題や異物混入問題などにより業績が悪化しました。最近は業績が回復しつつありますが、依然厳しい経営状態が続いています。

一方、モスバーガーは成長を続けています。08年3月期のモスバーガー事業の売上高は571億円でしたが、16年3月期は669億円となっています。売上高は増加傾向を示しています。本業の儲けを示す営業利益は、08年3月期は11億円でしたが、16年3月期は59億円となっています。営業利益も増加傾向を示しています。マクドナルドの転落とモスバーガーの躍進から、ハンバーガー業界に儲けのチャンスが広がっていることがわかります。

フレッシュネスバーガーはモスバーガーと似ています。高品質でこだわりのハンバーガーを提供しています。例えば、16年10月5日からフォアグラを使用した「クラシックフォアグラバーガー」(1,000円/税抜)を販売しています。これは極端ですが、350~720円(税抜)の高級ハンバーガーを販売しています。モスバーガーのハンバーガーは220~550円(税込)で、それよりもやや高価格帯ですが、高品質ハンバーガーというくくりで同様に見ることができます。モスバーガーの躍進から、この価格帯の需要はあるといえます。

モスバーガーは主に2等地に出店し、主に1等地に出店するマクドナルドとは直接的に競合しないようにしてきました。モスバーガーはマクドナルドの脅威が及ばない場所で成長することができました。フレッシュネスバーガーも同様に2等地を主体として出店を進めていきました。

モスバーガーもフレッシュネスバーガーも共に2等地を主体として出店を進めていますが、2等地での出店は飽和しているとはいえない状況です。出店の余地はまだまだあります。国内モスバーガーの店舗数は16年6月末時点で1,368店舗です。一方、マクドナルドは16年6月末時点で2,917店舗です。2倍以上の開きがあります。1等地と2等地の違いがあるとはいえ、2等地での出店の余地はまだまだあると考えられます。店舗数が約160しかないフレッシュネスバーガーであればなおさらです。

マクドナルドが低迷している今、コロワイドはハンバーガー業界に参入します。同社の資金力とノウハウを活かし、他の事業との相乗効果でフレッシュネスバーガーを成長させることは可能といえます。ただ、懸念材料がないわけではありません。

昨年の秋にニューヨーク発の高級ハンバーガー店シェイクシャックが日本に上陸しました。現在、外苑前、恵比寿、東京国際フォーラムの3店舗を展開しています。シェイクシャックは1等地での出店で、ハンバーガーの価格は580~1,230円(税抜)とかなり高めです。直接的には競合しませんが、完全に影響がないとは言い切れません。マクドナルドは低迷しているとはいえ、業界首位であることには変わりません今後の盛り返しも十分考えられます

いずれにしても、コロワイドによるフレッシュネスバーガーの買収により、ハンバーガー業界の勢力争いは混沌としてきました。外食大手のコロワイドはハンバーガー業界でも名を馳せることができるのでしょうか。今後が注目されます。

 

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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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