MAG2 NEWS MENU

帰りたいけど生活レベル落とすの嫌。疲労と残業の狭間で悩む人達

労働問題に関連する様々な話題を、分かりやすい会話形式で解説してくださる『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』。今回は、電通新入社員の過労自殺問題でも話題に上がった「36協定」と、安部総理が掲げる「働き方改革」がテーマです。政府はこれ以上苦しむ人が出ないように、どのように法律を変えようとしているのでしょうか?

36(さぶろく)協定

主人公26才男性、フリーターの新米幸多(しんまい こうた)。たまたま本屋で、「社労士で年収1,000万円稼げる本」を読み、必死に勉強!! ギャンブル気分?? で試験にチャレンジ、運良く見事合格!! 無事に? 社労士事務所に勤めることは出来たが、今までのフリーター仕事とは打って変わり、業務の細かさと責任感に戸惑う毎日。はてさて、これからどうなることやら?

朝礼前、今日はボスが事務所にいる。

E子 「今朝、また労働時間のことニュースでやってましたね~!ボス、見ました?」

所長 「あぁ、カトクのこと? それとも36協定違反のことかな?」

E子 「あ、36協定の方です」

所長 「最近、労働時間のこと、よく取り上げられているね。うちのお客様にもより伝えていかないといけないね」

E子 「監督署の調査も最近多いですよね」

所長 「そうだね。でも、労基法違反に対してはまだまだ甘いからな」

E子 「今朝のニュースは、あれ、要するにどういうことですか?」

所長 「時間外労働が1ヵ月45時間1年360時間を超えているから法違反だと伝えていたね」

新米 「え、それだけ?」

所長 「いや、その後、実際の時間外労働は月に113時間だとか言ってたな。詳しいことはわからないけれど、特別条項もないのに、時間外労働が100時間を超えているということなんじゃないかな」

新米 「36協定の上限を超えているから、労基法違反っていうことですか?」

E子 「特別条項って、使っていても年のうち半分しか使えないんだから、年中残業時間が長いってところは絶対に労基法違反になってますよね」

所長 「そういうことだよな。特別条項は、あくまで『特別』なときしか使えないっていうのが前提だから、年中45時間を超えていたらダメだね」

海外と比べても長いと言われる、日本の労働時間。こうした状況の中で、残業のあり方を変えようという動きが始まっています。

政府は働き方改革の一環として、労働者の残業時間に上限を設けたり、上限を超えた場合の罰則について検討を進めています。そんな中、大きな焦点となっているのが、36協定なのです。

新米 「時間外労働が多い会社さん、やっぱりありますもんね~」

所長 「いま、36協定が働き方改革のなかで焦点になっているんだ」

新米 「え? そうなんですか?」

所長 「現在の労働基準法では、1日8時間1週間で40時間までの労働を原則としているけれど、36協定では、労使間で協定を結べば、上限なく青天井で残業させることが可能になっているよね。これが抜け穴となって労働者に過重労働を押し付ける状況が生まれているんだ」

新米 「そういうことで、36協定なんですね」

所長 「厚生労働省は、先日、36協定のあり方を議論する有識者会合を開いたんだ。時間外労働にはいろんな背景があるけれど、会合では、長時間労働の背景について『依頼されても断れない下請け構造や、24時間営業など過剰なサービスがある』という意見、それとは逆に『残業代が減ると困るという労働者の声もある』というの意見もあがったようだ。残業代が生活給になってしまっているんだね」

新米 「生活のレベルが落とせないと時間外労働も減らせないってことになってしまっているんですね。なんか切ない…」

所長 「政府はこれからも、安倍総理大臣を議長とする『働き方改革実現会議』を開催し、さらに議論を重ねていくだろう」

首相が「長時間労働を自慢する社会を変えていく」と意気込む背景には、日本の労働時間が年間1,729時間とフランス(1,473時間)やドイツ(1,371時間)よりも長い現状があります。短時間勤務のパートなどを除いた実質労働時間は年間2,000時間で推移しており、子育てや介護を抱えた人、高齢者らの柔軟な働き方を阻害していると指摘されています。

E子 「そうなんでしょうね。わたしたちもしっかりしないと、ねっ新米くん!! (どんっ!)」

新米 「え? そんなに背中をきつく押さないでくださいよ!」

所長 「過労死リスクが高まる月80時間』の線引きをどう考えるかだね」

E子 「はい、確かに…」

所長 「政府・与党内では『60~70時間』や『45時間』といった案も浮上しているらしい。実効性を担保するため罰則も設ける方向だそうだ」

新米 「これから、厳しくなりそうですね」

所長 「やっと…ということかもしれないな」

E子 「上限設定の単位も論点になってそうですね。『月70時間』とするより、『3ヵ月で210時間』とか『6ヵ月420時間』とした方が業務の状況で一時的に残業を増やすことができ、企業側には使いやすくなるかもしれない…とか」

所長 「うん、そうだ。規制の難しい仕事に対する『適用除外』をどこまで認めるかも労使で意見が分かれているらしいな。いま、運輸業や建設業などは残業規制の適用除外となっているだろ。規制を強化するに当たり、新たに医師などに広げる可能性もある。経済界からも『適用除外の拡大を求めていくことになるだろう』と声があがっている」

新米 「なんか特区みたいな考え方ですね」

所長 「そうだね。ある厚労省幹部は残業の上限を厳しくする代わりに適用除外の範囲を広げることもできるが、あまり広げると新たな抜け穴』になりかねないと懸念しているよ」

E子 「そうですよね~。なんか部分的には、逆行しているような…」

所長 「単なる労働時間だけでなく、終業から始業の間に一定の時間を置いて休息させるインターバル規制』を導入するかどうかも過労死を防ぐ点で重要だね」

新米 「勉強すること、ますます増えそうですぅ~」

image by: Shutterstock

 

『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』
京都市に事務所を構える労務管理事務所が発行するメルマガ。新米社労士が日々の業務・社会のルール等に悩み・悪戦苦闘する様子を中心に、笑いあり、涙あり、なるほどありの社労士事務所の日常を、ノンフィクション、フィクションを交えて配信中。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け