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客の8割が常連。スーパー「オオゼキ」がここまで愛される理由

地域密着型のスーパーでありながら、その品揃えと生鮮食品の豊富さで人気を集めているのが、今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』でご紹介するスーパー「オオゼキ」です。メルマガ著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、「同社は特徴的な経営戦略を行うことで、他店には真似できない多くのことを実現し、常連客を増やしている」と分析しています。そんなオオゼキが実践する3つの戦略とは一体?

差別化されたスーパー「オオゼキ」

こんにちは、佐藤昌司です。「オオゼキ」は生鮮食品を中心とした食料品の品揃えが豊富なスーパーマーケットです。東急線・小田急線沿線を中心に出店しています。

出店はドミナント戦略を基本としている

オオゼキの出店戦略は特徴的です。ジオグラフィック基準地域や気候人口密度などの地理的基準)で市場細分化を行い、出店戦略を描いています。

本社がある世田谷や東急線、小田急線沿線に集中して出店する「ドミナント戦略」を採用しています。ドミナント戦略とは、特定のエリアに集中して出店する高密度多店舗出店のことです。顧客の来店頻度の増加、各店舗で欠品した商品の融通、物流効率の向上、店舗の認知度の向上、広告販促効率の向上などが期待できます。

さらに、民力が高く高額所得者が多く住むエリアで、街の人口密集地や駅前に積極的に出店しています。そういった地域の住人は購買力が高いため、高額商品を販売することができます。

オオゼキは粗利益率が高い生鮮食品を多く扱っているため、高額所得者が住む地域に集中出店することにより、高い利益率を確保した上で高額商品を販売することを可能にしています。扱う商品の特性と出店地域の特性が見事にマッチしています。

また、他社の店舗が閉店した跡地の居抜き物件に出店することにより、店舗の改装費を抑えることができています。空き物件を埋めたい家主との家賃などの交渉において有利に進めることもできます。

正社員比率が高い人材戦略が特徴

オオゼキの人材戦略を見ていきます。従業員構成が特徴的で、正社員比率が約7割と非常に高い水準にあります。総務省統計局の経済センサス調査によると、スーパーが属する産業小分類の正社員比率は2~3割程度となっています。これと比較しても、オオゼキの正社員比率の高さは特徴的といえます。

オオゼキは多くの従業員に責任ある業務を担ってもらいたいと考えています。

現場の社員に仕入や販売などの権限を委譲するなどして、従業員にやりがいを与えています。そのためには、「正社員」という立場の方が馴染むと考えています。

オオゼキでは、従業員がやりたいと思う職種にほぼ100%配属させているといいます。自分がやりたい仕事ができる職場環境を整え、社員のやる気を引き出しています。

こうした人材面での投資の効果により、一般的なスーパーマーケットの廃棄ロス率は3~4%とされる中で、オオゼキでは正社員のきめ細かい対応もあり、廃棄ロス率を0.1%以下に抑えることができているといわれています。

一方で、売上高に占める人件費の割合は一般のスーパーよりも低く抑えることができています。正社員の比率が高くなることにより人件費は増加しますが、それ以上に売上高を上げることができているからです。

生鮮食品を強化した品揃え戦略で大手と対抗

オオゼキの品揃え戦略を見ていきます。品揃えでは、生鮮食品が多くを占めているのが特徴的です。

加工食品では、大手の規模の経済に物を言わせたセントラル・バイイング(本部が商品や原材料を一括して行う中央仕入れ)による価格攻勢が激しく、同じ土俵で勝負することはできません。

一方で、粗利益を確保できる生鮮食品の品揃えを強化することで、品揃えの豊富さや商品そのものの魅力で、大手と対抗することができます。生鮮食品で大手との差別化を図っています。

オオゼキの仕入は本部で一括で行うのではなく、個店の従業員が築地や大田市場などに行って直接買い付けを行うといった個店の裁量での仕入を行っています。顧客の要望があれば少種類少量でも品揃えに加えるという徹底ぶりです。創業時から「個店主義」を掲げ、それぞれの店舗に来店する顧客のニーズに合わせた品揃えを行っています。

個店毎によって異なる顧客ニーズにきめ細かく対応するため、個店の従業員に裁量を与え、顧客が要望する商品があればたとえ一品からでも提供しています。真に地域密着を実現し、顧客第一主義を実践していくことができています。ドミナント出店のため、必要であれば近隣の店舗に商品を融通してもらうことができることも、顧客対応の上で大きな強みとなっています。

仕入の裁量を個店に担ってもらうことにより、本部から届けられた商品をただ単に販売するのではなく、自らが売りたいと思った商品を仕入れて販売することになるので、店舗の従業員はより主体的に販売を行うことができます。

こうした徹底した品揃え戦略は地域の顧客に支持され、顧客の8割近くが常連顧客で占められています。磐石な顧客基盤づくりに成功しているといえます。

オオゼキは「出店」「人材」「品揃え」の3つにおいて、卓越した戦略を描いていることがわかります。この3つがオオゼキの成長の原動力となっているのです。

 

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店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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