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トランプ氏が中国を挑発。台湾総統への電話会談に習近平がイライラ

先日、異例の電話会談を行ったとされるアメリカのトランプ次期大統領と台湾の蔡英文総統。これに対し、あくまで「台湾は中国の一部」と主張する中国政府は激怒、米国サイドに猛抗議したと伝えられています。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、それでもトランプ氏は自らの姿勢は変えないだろうとの見方を示しています。

なぜトランプと台湾総統の電話会談で、習近平が憤怒するの???

トランプさんが、中国を、激しく挑発しています。なんと台湾総統と電話会談した。

<トランプ氏・蔡氏>米中関係の緊張必至…断交後初の協議

毎日新聞12/3(土)22:28配信

 

【ワシントン会川晴之、台北・鈴木玲子、北京・石原聖】トランプ次期米大統領は2日、台湾の蔡英文総統と電話協議し、安全保障などの「緊密な結びつき」を確認した。政権移行チームが発表した。

それにしても、トランプさんと蔡英文総統が電話で話すとなぜ中国は激怒するのでしょうか?

中国は台湾を主権国家とは認めておらず、台湾を中国の一部と主張する「一つの中国」原則の順守を米国に求めてきた。トランプ氏が台湾独立志向の強い民進党の蔡氏と安全保障問題を協議したことで米中関係の緊張は必至だ。

 

米メディアによると、就任前を含めて米大統領が台湾総統と電話で協議したことが公になったのは、米台が国交を断絶した1979年以降では初めて。
(同上)

アメリカ大統領が台湾総統と電話で協議したのは、国交が断絶した1979年以降初めて!37年ぶりということで、トランプさんの行動は、「革命的」だったことがわかります。

理解が進むよう、少し歴史を振り返っておきましょう。1945年、第2次世界大戦が終わりました。しかし、中国で戦いは終わらず、国民党と共産党の内戦が激化していった。1949年10月、共産党は「中華人民共和国」を建国。1949年12月、国民党は台湾に逃げます。こうして、中華人民共和国と中華民国台湾)、二つの政権が併存することになりました。しかし、いわゆる中国大陸を支配しているのは、共産党の中華人民共和国

さて、2次大戦の結果、ほとんど無傷で唯一の超大国になったアメリカ。栄華は長くつづきませんでした。ライバル・ソ連が、急成長してきた。ソ連は、1949年には、はやくも原爆実験に成功。1955年、今度は水爆実験に成功。1957年、世界で初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功。1961年には、世界で初の有人宇宙飛行に成功。こうした流れを見ると、「昇るソ連沈むアメリカ」という感じだった。

1969年、大統領になったニクソンは、「ソ連に勝つために、中国と組むべきだよな~~~」と考えた。一方、強大化するソ連は、中国にとっても大いなる脅威になってきました。1969年、中国とソ連の軍事衝突があり、両国とも「核兵器使用」を真剣に検討していた。こういう流れがあって、米中は和解することになったのです。

米中和解の「トバッチリ」をくらったのが台湾。アメリカは中国と組むために台湾を捨てたのです。1972年2月、訪中したニクソンは、「台湾に関する5原則」を提示しました。

  1.  中華人民共和国を唯一正当の政府として認め台湾の地位は未定であることは今後表明しない
  2. 台湾独立を支持しない
  3. 日本が台湾へ進出することがないようにする
  4. 台湾問題を平和的に解決して台湾の大陸への武力奪還を支持
    しない
  5. 中華人民共和国との関係正常化を求める

日本人としては、「」が気になります。

とにかく、アメリカは、「中華人民共和国を唯一正当な政府」と認めた。そして、アメリカと中国は1979年、「国交正常化」した。それから、アメリカ大統領と台湾総統は電話で話すことがなくなったと。

37年の伝統を破ったトランプさんに中国は激怒しています。

中国外務省の耿爽(こう・そう)副報道局長は3日、「米国の関係方面に厳粛な申し入れを行った」との談話を発表し、抗議したことを明らかにした。

 

その上で「一つの中国は中米関係の政治的基礎。中米関係が不必要な妨害を受けないよう促す」として、歴代米政権の「一つの中国」政策を継承するようトランプ氏に求めた。
(同上)

抗議してもトランプさんは変わらないでしょう。トランプさんは選挙戦中、「プーチンと和解する」と公言していることで、メチャクチャ叩かれました。欧米では、「プーチン悪魔化プロパガンダ」がものすごい。だから、トランプは「プーチンとの和解」を宣言することで、選挙で有利になるはずがない。しかし、彼は、最後まで言葉を変えることがありませんでした。そして、大統領選で勝利すると、すぐロシアとの和解に動いている。

ですから、台湾についても、中国が何を言おうが変わらないと思います。トランプは、台湾にとって、「最も素晴らしい大統領になる可能性があります。そして、台湾にとっていい大統領は、日本にとってもいい大統領になることでしょう。

まあ、まだそんなことをいうのは、早すぎますが…。

image by: stock_photo_world / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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