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25年前と変わらぬ体質。電通が学ぶべきだったハインリッヒの法則

大手広告代理店「電通」に勤める女性新入社員の自殺。実は25年前にも電通は同様の事故を起こしていましたが、「表沙汰にならない」努力のみをした結果が生んだ今回の悲劇でした。無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、このような事件を二度と起こさないために企業が知っておくべき「ハインリッヒの法則」が紹介されています。

ハインリッヒの法則

みなさんもご存知のとおり、「電通」の新入社員の女性が昨年末に自殺しました。長時間の過重労働によるものです。パワハラがあったという報道もあります。

電通では、25年前にも同様の事件を起こしています(これが有名な「電通事件」と呼ばれるものです)。

従業員の安全・尊厳・命を軽視する企業姿勢は、25年前と何一つ変わっていなかった。25年前の事件を教訓に、二度と同様の事件を起こさないよう努めるのが、良識ある企業です。しかし、「電通」に限っては、25年前と同様の事件が二度と表面化しないよう、表沙汰にならないように努力してきたとしか思えません。企業体質を変えるのではなく、ただただ、事件の表面化を隠すための努力を重ねてきたのではないでしょうか。

みなさんは、「ハインリッヒの法則」というものをご存知ですか? ハインリッヒの法則とは、1つの重大労働災害の背後には、29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリとするようなことが存在するという法則です。「1:29:300の法則」とも呼ばれます。

今回の電通の事件では、自殺という最悪の労働災害が発生しましたが、この法則に従えば、その背景には、29件の軽微な事故と300件のヒヤリ・ハットが発生していることになります。軽微な事故が起こったときに、再発防止に真剣に取り組んでいれば、「という最悪の労働災害は防げたはずです。

「電通」においては、この「死」という重大災害以外にも、おそらく多くの従業員が体を壊したり、心を病んだりして、働き続けることができずに退職したり、長い闘病生活を余儀なくされたりしていることでしょう(これらも当然、重大労働災害にあたります)。

会社には、従業員に対する安全配慮義務や健康配慮義務があります。25年前の「電通事件」で最高裁は、「使用者は、業務遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」と判示しています。

また、労働契約法5条で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。

わたしは長年、建築現場で現場作業に携わっていました。大手ゼネコンの現場では、必ず、作業前に、その日の作業内容とその作業に伴う危険ポイント、その防止方法を検討します。KY危険予知活動と呼ばれるものです。

今になって思うのは、このKY活動は非常に素晴らしい。これを習慣づけることで、確実に労働災害を減らすことができます。それは、デスクワーク・オフィスワークでも同様です。

仕事において必ず存在するであろう、「ヒヤリとするようなこと」や「軽微な事故」を事前に予知し、回避する方法を立てることで、労働災害は確実に減らすことができるのです。重大な労働災害をゼロにするには、日々の地道な活動が必要です。

小さな事故や事件を、このくらいのこと、この程度のことと甘くみていると、結局、取り返しのつかない事故・事件が発生してしまうことになります。それは、当事者本人とその家族だけでなく、その会社で働くすべての従業員を不幸にします。当然、会社もタダでは済まない。1件の重大災害によって、関係者すべてが不幸になってしまうのです。

それを防ぐためにも、ぜひ、「ハインリッヒの法則」を頭に入れて、日々の業務について考えを巡らせてください。経営者はもちろん、働く人一人ひとりが自分事として考えるべきことです。

 image by: Shutterstock.com
 
 
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