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【書評】なぜ「反戦・脱原発デモ」は中二病と言われてしまうのか

反戦や脱原発を掲げデモを繰り返してきた「リベラル派」の人々。そんな彼らについて取り上げた書籍が無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で紹介されていますが、内容は辛辣なもので…。記されている「リベラル派が勝てない3つの理由」は説得大、です。

 

 

『反戦・脱原発リベラル』はなぜ敗北するのか
浅羽通明・著 筑摩書房

浅羽通明「『反戦・脱原発リベラル』はなぜ敗北するのか」を読んだ。浅羽といえば「ニセ学生マニュアル」だが読んでいない。オタクやオカルト分野の論評は、たぶん宝島系で読んだことがあるが忘れた。この本は、オタク的で少し意地悪なご隠居と、リベラル派に同情的な質問者の対話編。ご隠居は「反戦・脱原発リベラル」の動きを観察し「これでは勝てないなという

理由1:原発を再稼働させ、安保関連法案を成立させようとする安倍政権に撤回を迫れるだけの決定的なカードを、リベラルの側が何も持っていない。ちょっと目障りなだけで、なんとも思われていないのがあのデモだ。

理由2:リベラルの人たちの発言には、これで本当に勝ちたいと思っているかと疑われるものが多かった。若手論客・古市憲寿に「デモをやるにしてもちゃんと目標を定めて効果測定してやっていかないと意味がないんじゃないですか」と問われた社会学者の小熊英二教授は「効果測定なんかしたら楽しくないから意味がない」と答えた。「これだけの規模のデモを無事に行うことができた。そのこと自体が快挙だ完全勝利だ」と映画監督・想田和弘。目的と手段がいつのまにか転倒している。

理由3:彼らのアピールが、安倍政権へ投票しているだろう層を、納得させるだけのリアリティに乏しいものばかりだった。

ご隠居はこの三つの理由を一つずつ、詳しく論じていく。「三ちゃん二生のデモ」という見立ては秀逸。デモ参加者は、ばあちゃん、じいちゃん、かあちゃん、学生、先生で、労働の現場の働き手が数えるほどしかいないデモでは、実務的知性が希薄で、「命より大切なものはない」「あの戦争を繰り返すな」という常套句が生活者の実感からかけ離れている。あの戦争って? 誰が大東亜戦争をもう一度やれと言ってるんだ? 原発や安保関連法には、日本の社会経済を担う現役にとってどうしてもくい止めるべき急迫性はない。あるのはリベラルのバーチャル脳内観念世界限定の話であり、真に受けるのが愚かであろう。

冷笑家を自認する筆者のとびきりの提案。原発を吉祥寺と千代田区へ、東京の米軍基地の拡大、さらに高学歴・高偏差値・実家の年収1,000万以上の子女から徴兵していくシステムを確立→政財界トップは我が子を殺したくないから開戦に踏み切る確率は激減、戦争はできるがしない国の完成だよ。ご隠居はリベラル派を「セカイ系で中二病」と診断する。リアル系を予めブロックし、大東亜戦争と日本国憲法で自己中にガッチガチに守りを固めたのが日本のリベラルだ。この本、「反戦・脱原発リベラル」が勝利するためのヒントがいくつも入っている。読んで不愉快になるでしょうが、我慢して読みましょう。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock

 

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