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まさかの買収。なぜKDDIは、老舗ビッグローブを傘下に収めたのか?

先日飛び込んできた、KDDIによるビッグローブの完全子会社化のニュース。取得額800億円で240万超のビッグローブ会員を手に入れるKDDIの狙いはどこにあるのでしょうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、ご自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で今回の買収劇を詳細に分析。さらに、現在盛り上がりを見せているMVNO各社もいずれはキャリアに買収される可能性もあるとの私見を記しています。

KDDIがビッグローブを800億円で完全子会社化―老舗ISPがまさかのキャリア傘下に

KDDIは12月8日、ビッグローブの株式を総額800億円で取得し、来年1月末を目途に完全子会社化すると発表した。

ビッグローブには、固定回線を利用したインターネット接続サービスにおいては、2016年9月末時点で200万超の会員がいる。またモバイル事業においても、約40万人の会員を抱えている。

プレスリリースでは「通信領域のみならず、決済、物販事業などの非通信領域で両社のシナジーによる事業拡大を図る」とあるが、狙いは回線契約なのだろう。これまでKDDIが獲得してきた固定回線での契約者数とビッグローブ、さらにニフティも買収すれば、MM総研調べのシェア争いでは2位となる見込みだ。

固定回線に関しては、一度敷設した回線を乗り換えると言うことはほとんどないため、競争は一段落してしまっている状態だ。「乗り換えがない」ということは、ビッグローブを契約しているユーザーはこれからも同じ回線を使い続けるわけで、KDDIにとってみれば安定的な収入源として期待できる。他社からユーザーを引っぺがすことができないのであれば、買い取ってしまうのが早いというわけだ。

一時期、自分はビッグローブの会報誌でコラムを書いたりしたことがあったが、その際に教えてもらった会員の属性を見ても、比較的、年齢層が高いと推測される。この先も継続的にビッグローブを使い続けるであろう人たちであることは間違いなさそうだ。

決して、これから急成長していく分野ではないが、キャリアとしての「安定収入源」としては悪くないのではないだろうか。会員の年齢層が高いと言うことは、それだけ可処分所得が高いわけで、KDDIが注力しつつある物販を強化できる可能性もゼロではないだろう。

KDDIグループはMVNOにおいては苦戦を強いられており、ビッグローブの40万という会員数は魅力的かも知れない。ただ、この時期にビッグローブを契約しているユーザーというのはSIMフリーやMVNOに対する知識が豊富であり、他で強力なキャンペーンを展開していると、簡単にMNPで流出してしまう層と言えるだろう。確かに基盤として40万件は魅力だが、そのユーザー層をどこまで囲い込んでいけるかは、これからの勝負となりそうだ。実際、今回の買収は「高いのではないか」という指摘もある。

ただ、せっかく、ビッグローブを買収したのだから、KDDIにはさらにアクセルを踏んでもらって、ニフティを始め、買収できるプロバイダはことごとく買収して、CATVのような世界観を作ってもらえると面白い

KDDIでは3年間で5,000億円のM&A予算を組んでおり、そのうち800億円をビッグローブに使ったことになる。まだ、余裕はありそうなだけに、第2、第3のプロバイダ買収も視野に入っていることだろう。

それにしても、一時、数千社あったインターネットプロバイダは、続々と淘汰され、老舗といえたビッグローブがキャリアの傘下に入ってしまった。こんなことを10年前に想像できただろうか。

もしかすると、いま盛り上がっているMVNOたちも、老舗であっても、いずれ将来的にはキャリアに買収され、役目を終えるという憂き目を見ることになるのだろうか。

 

石川温の「スマホ業界新聞」』 より一部抜粋

著者/石川 温(ケータイ/スマートフォンジャーナリスト)
日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。
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