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談志の名言を胸に刻め。仏は極右大統領を選んでも後悔しないのか

来年に予定されているフランス大統領選挙。今回注目を集めるているのは、決戦投票まで残ると見られている極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン氏です。当選確実とすら言われたヒラリー氏の落選は、女性が国家元首になることの難しさを物語っていますが、ドイツのメルケル首相の例もあります。一体、ルペン氏はどれだけ票を伸ばせるのでしょうか。無料メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』の著書のひとり・パリ在住の日本人MAOさんが現地からレポートを届けてくださいました。

移民への道 ~現実が真実~

大方の日本人と同様、フランス人も、イギリスのEU離脱は可決されないと思っていましたし、トランプ氏が大統領に選出されることもないと思っていました。BREXITのときは、イギリス人は本当に馬鹿だ日和見主義だ、という声が飛んでいましたが、フランスは、5年毎に左政権と右政権が交代する国で、ミッテランの長期社会党政権にうんざりして右温厚派のシラク、こんなんあかん、もっと右へとなってサルコジ、いややっぱり強硬派はあかん、となって社会党オランド、そしてオランド全然あかんがなーとなって、来年の大統領選では間違いなく右政権になります。日和見主義は同じですよ。

オランド大統領ですが、ついに支持率が10パーセントを割り、これはもう絶対ギネス記録、と思っていましたが、韓国大統領が上を行きましたね。韓国大統領の汚職ですが、フランスではコネ入学は当たり前で(許されてはいけないことなのですが)議員か貴族の友達がいれば好きな学校に入り放題、と言われているくらいですので大統領のコネで大学に入学したのがなぜそこまで問題になるの?という反応ですね。一般人の友人に政治事情を漏らしたことは、さすがにフランスでも問題ですけれど。

で、来年の大統領選ですが、2回にわけて行われます。各政党で予備選が行われており、1人ずつ候補が立ちます。12月の時点で9人の候補の名前が出ていますが、事実上は野党第1党の共和国民党と社会党、そして極右の国民戦線党の戦いになります。4月23日に行われる1次選で2人に絞られ5月7日に決選投票が行われます。最大野党の予備選が先日ありまして、首相経験のある右やや強硬派のフィヨン氏、元大統領のごぞんじサルコジ氏、現ボルドー市長でフランス南西部では絶大な人気を誇るやや温厚派のジュペ氏の3氏の争いとなりましたが、フィヨン氏が予想外の大差で勝利。こうなると、もう決まりですよ。

1次選はフィヨン(以下敬称略)と極右のマリーヌ・ルペンと社会党の誰かの争いになるでしょう。社会党は今、候補を選出中ですが、だれがなろうと、今回社会党が勝つことはありえない。で、2次はフィヨンとルペン。トランプ大統領の影響で、フランスにも極右政権が? という声もありますがそれはないです。ほぼ断言できます。理由その1、フランスはアメリカの影響を受けない。その2、ルペン氏は女性。クリントン氏が女性だということが、敗北の大きな原因であったのと同じです。女性の政治家は日本よりずっとたくさんいますよでも国のトップにはなりえない。それがフランスです。

ただ、僅差にはなるだろうと予想しています。私の職場では、フィヨン対ルペンになるのは疑いの余地なしフィヨンが勝つのもほぼ間違いなし、ではどれだけの差が出るか、を賭けていまして私はね、55パーセント対45パーセントでフィヨンと見ているんです。ほかの同僚はもっと差が付くと予想しています。70対30など。確かに、フィヨンはかなり右よりの人なので、極右に投票しようと考え始めている人が、フィヨンで妥協しようとするのは考えられますがルペンは父親ほど強硬な極右路線ではありません。彼女は現実的で頭もいい。今後、フィヨンに流れようとする人々を自分に呼び寄せる作戦を打ってくるはずです。

が、国民戦線党内で強硬派と柔軟派が揉めていますし、ごく最近、彼女は「不法移民の子どもに無償で義務教育を与えるのを中止しよう」などと言い出し、何を馬鹿なことを、と呆れられましたので、今のところちょっと不利ですね(欧州人権条約ですべての子どもへの義務教育は保障されています)。

で、先日の世論調査では、フィヨン65パーセント対ルペン35パーセントと出ましてうちのボスは、68対32と言ってましたから、大喜びです。数字が一番遠かった人が、みんなにランチをご馳走しなければならないんですけど、まずいです、私、今回一番遠かったです。ルペンがんばれ(うそです!)。

現実が真実、とは、故立川談志師匠の言葉だそうです。こんなはずじゃなかった、という言い訳を許さない、厳しい言葉ですね。大統領選の1年後には必ずこんなはずじゃなかったと言い出すフランス人。今回こそは、こんなはずじゃなかったと言わなくてもすむような大統領が選出されることを望みます。

でも同時に、こんなはずじゃなかったのもまた、現実なのでしょうね。なにがどうあれ、受け入れなければならない見据えなければならない。現実が真実、とは、そういう言葉だと思います。

著者/MAO(「移民への道」連載。フランス・パリ郊外(LES ULIS市)在住)
バブル末期に幻想を抱いて渡仏。こんなはずじゃ、と思いつつ、だらだら過ごしてはや10年。パリ在住日本人が避けて通る地域を転々としたあげく、ついに悟りを開き、「おフランス」にて大阪のおばちゃんになりきる決意。肉屋のおじさんと仲良くなるのが得意。

image by: Frederic Legrand – COMEO

 

出たっきり邦人【欧州編】
スペイン・ドイツ・ルーマニア・イギリス・フランス・オランダ・スイス・イタリアからのリレーエッセイ。姉妹誌のアジア・北米オセアニア・中南米アフリカ3編と、姉妹誌「出たっきり邦人Extra」もよろしく!
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