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中国、トランプ発言に猛反発。南シナ海に「怒り」の爆撃機

先日、台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、さらに中国が主張する「一つの中国」についても懐疑的な態度を表明したトランプ次期大統領。これに対して習政権は当然ながら猛反発していますが、メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』によると、中国サイドはアメリカのみならず台湾にまで圧力をかけはじめているとのこと。黄さんはこの行いについて「姑息」と一刀両断するとともに、苦境に陥った中国はマスコミと協調しながら、反日プロパガンダ攻撃をますます強めてくる可能性があると指摘しています。

【中国】トランプ発言に対して台湾に圧力をかける中国の姑息

トランプ氏、「一つの中国」政策終わりを示唆

蔡英文台湾総統との異例の電話会談を行い、自身のツイッターで中国の南シナ海侵略や不公正な関税、為替操作について批判を行ったドナルド・トランプ次期大統領ですが、今度はアメリカのフォックス・ニュースとのインタビューで、中国側が蔡英文との電話会談に「重大な懸念」を表明したことに対し、「なぜアメリカが『一つの中国』政策に縛られなくてはならないのかわからない」と述べ、「一つの中国政策について、これを続けるべきか疑問視する発言をしました。

言うまでもなく「一つの中国」というのは、中国が長年主張し続けてきた中台関係の根本姿勢です。中国政府は台湾を「絶対不可分の中国の一部」として、この「一つの中国」をことあるごとに他国に対して認めるように強要してきました。

前回のメルマガでも書きましたが、多くの台湾人はトランプ大統領の誕生によって、この「一つの中国論」をトランプ氏が否定してくれる可能性があると期待していましたが、これほど早く発言が飛び出すとは思ってもみなかったことです。

ことに、蔡英文総統との電話会談は世界的に大きな話題となりました。中国政府はほとんどパニック状態とも言うべき状況に陥っています。おそらく誰もが予想外だったことに違いありません。

ニューヨーク・タイムズをはじめとするメジャー紙は、トランプが中国を怒らせたと強調し、台湾のメディアも大抵が中国資本によるコントロールが効いているので、ことに「聯合報」と「中国時報」は、わざわざ蔡英文総統にもかかわらず、トランプ氏は冷たかったという旨の、逆の内容を伝えていました

しかし、トランプ氏が電話を受け、蔡英文を「台湾総統」と呼んだことは、自ら公言しています。日本のメディアだけは意外にも客観的事実を伝えています。私としては、日本のメディアが案外、客観的に情報を伝えたことが驚きでした。

ちなみに「メディアは軍事力以上の力がある」と孫文に教えたのは、孫文が師と仰ぐレーニンです。以来、中国の各党各系の武装勢力は、軍よりも「嘘をつくことをメディアの宣伝に託しました。

先のトランプ発言は、早速台湾でも大きく報じられました。もちろん国民党側にはこれを批判したり警戒する政治家も少なくありません。国民党は1992年に中国側と「一つの中国」を認めあったという「九二共識」を堅持してきましたから、これを否定されることは国民党にとっても具合が悪いからです。

また、このトランプの発言によって中国が台湾に強硬手段に出て、何らかの軍事的脅威が起こるかもしれないという懸念の声もあります。加えて、ビジネスマンのトランプ氏は、中国から有利な条件を引き出すために、「一つの中国」を駆け引きの道具として利用しており、中国の譲歩次第で一転して「一つの中国」を認めるのではないか、と不安視する声もあります。

川普叫賣一中/中美互嗆篇:孫揚明》川普把台海拖入多事之秋

しかし、そのような反対意見を載せている台湾メディアのほとんどが国民党系か中国資本系です。目下、台湾のメディアは「自由時報」「民視」「三立」のいわゆる「三民自」以外には、ほとんどのメジャー紙が中国資本、いわゆる「中資」です。もちろん「三民自」にも、経営状況などそれぞれのメディアとしての弱みがあります。

中国政府は台湾だけでなく、日米やEUにも大金をかけてメディア戦略を展開しています。そのなかでも私がもっとも憂慮しているのは、日本のメディアが徐々に中国のエージェント化していることです。日本の一部のメディアは、中国政府から資金援助を受け、さらに現場指導まで受けているとも噂されています。

そこは、「反日が利権となる時代を迎えているという背景があり、中国と利害が一致しているのです。日本のメディアが中国政府によって買収されることも少なからず可能性があります。

そして、中国は台湾企業に圧力をかけ始めています。中国で食品事業などを展開する台湾企業の海覇王グループが、「(中台)両岸はともに一つの中国に属することを支持する」という声明を発表しました。

中国が台湾企業に圧力か、「一つの中国」支持の声明

記事によれば、海覇王には中国当局による税務調査も入っているとのことで、台湾で対中国政策を主管する大陸委員会は、圧力が事実なら「野蛮な行為だ」と中国側を批判しています。

この海覇王グループの経営者は蔡英文総統やその家族とも親密だとされてきましたが、中国に進出しているだけに、その関係から狙い撃ちされた可能性もあります。蔡英文政権は「九二共識」を認めていませんし、政権与党の民進党も「一つの中国」ではなく、台湾はひとつの主権国家だという立場です。そのため、トランプ氏の言動をきっかけに、民進党寄りの中国進出企業は今後同様の圧力がかけられる恐れがあります。

すでに今年の9月には、カナダで行われた国際民間航空機関(ICAO)の総会に台湾が招待されないという事態が起こりました。馬英九政権時には招待されていたことから、蔡英文政権に対する中国の圧力だという見方が強まっていました。

台湾、今年の国際民間航空機関の総会に招待されず 中国が圧力?

逆に言えば、それだけ中国は焦っているということでもあります。1月に蔡英文政権が誕生し、7月にはオランダ・ハーグの仲裁裁判所で南シナ海に対する裁定が出され、同月には韓国がTHAAD(高高度ミサイルシステム)の配備を決定、そして12月にはこのトランプ発言です。中国にとっては頭の痛い事案が次々と起きています。

次期アメリカ大統領が「一つの中国」を否定する可能性があることを示唆したということは、非常に大きなことなのです。中国にその解釈権を与えないと表明したことに等しいからです。

自由時報によれば、北京情報筋の話として、中国共産党は報復対象のために、中国が輸入しているアメリカ製品のリストアップを始めているといいます。もちろん輸入関税を引き上げたりさまざまな嫌がらせをして輸入ストップさせるためでしょう。

將報復美國?路透:傳北京已列好企業名單

とはいえ、アメリカは中国にとって最大の輸出国である以上、報復措置を取れば、アメリカ以上に中国経済がダメージを受けることは間違いありません。中国は約60兆円の貿易黒字国ですが、そのうちの半分以上、約32兆円は対アメリカでの貿易黒字です。アメリカこそ中国の最大の輸出相手国なのです。だからこそトランプ氏は中国批判を続けているわけで、中国が経済的な報復措置に出たところで、痛むのは自分の側なのです。

ところで、このトランプ氏の発言については、中国メディアの日本語版にはほとんど出てきません。中国でも報道官とメディアのやり取りで「一つの中国は米中での基本的原則である」といった決まり文句を繰り返すだけです。

やはり表向きはトランプ氏とは衝突したくないというのが中国の本音なのでしょう。まだ大統領に就任していませんし、就任当初から対決姿勢になりたくないという意図が透けて見えます。だから裏でさまざまな圧力をかけて嫌がらせをするというのは、中国らしいやり方です。

中国は先日、南シナ海に爆撃機を飛ばすという暴挙に出ました。これもトランプ氏の言動に反発したものと見られています。台湾も南シナ海も、中国が「核心的利益」としているものです。トランプ大統領によってこれら中国にとっての権益が侵されれば、もともと経済が落ちていくなかで、習近平政権の正当性が揺らぎかねなくなります

中国、南シナ海に爆撃機派遣=トランプ氏の台湾会談けん制か

トランプ政権による「アメリカ第一主義」になれば、グローバリズムは衰退し、通商国家としての中国は生存がますます厳しくなります。軍事力は米露よりも劣り、経済も苦境に陥ることは避けられません。習近平にとっては運が悪いと言わざるを得ませんが、毛沢東主義への回帰により生き残りを図るしかないわけです。もはや習近平は、自身の立場を守るために必死なのです。

蔡英文政権は少なくとも年内は国内問題の改革に忙殺され、外交までの余裕がないということを台湾政界からの話として耳にしています。台湾をめぐるアメリカの姿勢が大きく変化しはじめた背景には、政治や一部マスメディアのみならず、あらゆる分野の見えないところで台湾人が画策してきたことがあります。私もメディア人の一人として、表に出ないそうした努力をいっぱい見てきました。

戦後の日本は、なにかにつけ「中国が怒る」ということで、自国の主張をせずに、中国の顔色を伺うことばかりしてきました。それが中国を増長させた一因でもあります。かつて私は著書で、日本の謝罪外交は中国の圧力に苦しむアジア諸国にとって迷惑だと書きました。しかしその後、心ある日本人の努力によって、謝罪外交はだいぶ少なくなったようにも思います。

しかし安心はできません。苦境に陥る中国は、日本への攻撃をますます強めてくることでしょうし、国内マスコミと協調しながら反日プロパガンダも仕掛けてくるでしょう。日本人には、それを認識し徹底的に戦う覚悟が必要です。

 

黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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