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プーチンが、トランプにラブレター。米露「和解」で歴史がまた変わる

いよいよ来年1月20日にアメリカ新大統領に就任するトランプ氏ですが、早くもロシアのプーチン大統領から、「米ロの協力関係を新たなレベルにしていこう」との書簡が届いたようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者の北野幸伯さんが、今まで対立と和解を繰り返してきた米ロの歴史を振り返りながら、トランプ大統領就任後に大きく変わるであろう両国の関係性を予測しています。

プーチン、トランプにラブレターを送る

プーチン来日で、北方領土は進展なしでも、経済、安全保障面で日ロ関係は良くなりました。そして、アメリカとロシアの関係も、良くなっています。プーチンは最近トランプにラブレターを送りました

プーチン氏、トランプ氏へ書簡「協力を新たなレベルに」

朝日新聞デジタル 12/24(土)11:00配信

 

トランプ次期米大統領は23日、ロシアのプーチン大統領から受け取った米ロ関係の改善を求める書簡を公開した。それによると、プーチン氏は「二国間の協力を質的に新たなレベルにしよう」と呼びかけ、トランプ氏は「非常に素晴らしい」と歓迎してみせた。

 

書簡は今月15日付。クリスマスと新年を前にしたあいさつの形をとっている。

プーチン「二国間の協力を質的に新たなレベルにしよう!
トランプ「非常に素晴らしい!

アメリカ大統領選挙戦時代から一貫して、トランプとプーチンは、「相思相愛」です。ヒラリーは、「トランプはプーチンの操り人形だ!」と批判していましたが、トランプの言動は、一貫していました。つまり、「プーチンと一緒にISを打倒できれば素晴らしいではないか!」。

トランプが来月大統領になり、米ロ関係はドンドン改善されていくことでしょう。

米ロ、対立と和解の歴史

少し、米ロ関係をおさらいしておきましょう。

1991年末、ソ連崩壊。90年代は、クリントン、エリツィンで、米ロ関係はおおむね良好でした。しかしその関係は、「金をもらうロシアが、金をくれるアメリカのいうことを聞く」。ロシアはアメリカの属国状態にあった。

2000年代になると、ブッシュ、プーチンになり、米ロ関係は悪化していきます。

などなどで、ことごとくアメリカとロシアは対立していった。しかし、08年9月、リーマンショックから「100年に1度の大不況」に突入。09年、オバマ大統領とメドベージェフ大統領は和解。「再起動時代」が始まりました。

しかし、12年にプーチンが再び大統領になると、「再起動時代」は終わり。米ロは再び対立の時代に向かっていきます。両国は、シリア問題で対立。アメリカは、「反アサド派」を支援する。ロシアは、アサドを支援する。14年3月、ロシアはクリミアを併合。アメリカは、欧州、日本を巻き込んで「対ロシア制裁」を実施。そして15年、ロシアは、「制裁」「ルーブル安」「原油安」の「三重苦でボロボロになってしまいます。

15年から再び「和解」の時代へ

しかし、15年3月に起こった「AIIB事件」でまた風向きが変わりました。イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国など親米国家群を含む57か国が、中国主導AIIBへの参加を決めた。これでアメリカは、「覇権国家の座を中国に奪われる!」と恐怖し、外交が一変します。

ケリー国務長官は2015年5月、クリミア併合後はじめて訪ロ。「制裁解除もありえる!」と発言し、ロシア人を驚かせました。米ロは、ウクライナの和平維持で合意。2015年7月には、米ロの努力により、歴史的「イラン核合意」が成立。2016年2月、これも米ロの努力により、「シリア内戦停戦」に合意(後崩壊)。

このように、オバマはAIIB事件、ロシア、ウクライナ、イラン、シリア問題を超特急で解決していった。一方、2015年9月に訪米した習近平を露骨に冷遇し、「中国叩きに専念するようになります。

2016年、アメリカ大統領選で、米ロ関係はまた悪化

しかし2016年、オバマの任期が終わりに近づくにつれ、再び米ロ関係は悪化していきました。理由は、トランプがプーチンとの和解を一貫して主張している。ヒラリー陣営は、

とプロパガンダすることで、トランプに勝とうとした。この運動には、もちろんヒラリーを勝たせたいオバマも積極的に参加しました。だから、米ロ関係は、大統領選が近づくにつれ、ドンドン悪化していきました。それでもヒラリーは勝てなかった。

そして、米ロは和解の時代へ

来月、トランプ大統領が誕生します。それで米ロ関係は良くなることでしょう。トランプは、「ウクライナは、欧州の問題だ!」とし、関わらない意向を示している。シリアについては、「アサドよりISの方がもっと悪い」という。つまり、ロシアが支援するアサド政権は延命する。米ロは一体化して、「ISつぶしに動くことでしょう。

唯一の対立点はイランです。トランプは、バリバリの親イスラエルで、「イランとの核合意を破棄する!」と宣言している。ロシアは、一貫して親イランなので、ここに対立の種がある。

こう見ると、トランプの戦略は、オバマがAIIB事件後にはじめた戦略と同じ方向性。ただ、その戦略をもっと徹底して進める方針であることがわかります。

これは、カーターとレーガンの関係に似ています。カーターは、「人権外交」を掲げ、ソ連との融和に務めました。ところが、ソ連が1979年、アフガニスタンに軍事介入すると、さすがのカーターも、強気に転じざるを得なかった。次のレーガンは、ソ連を「悪の帝国!」と呼び、崩壊に導きました。

オバマも、カーターさんと同じく、平和主義者。中国に対し、「基本的にアジアのことは中国に任せたい!」などと寝ぼけたことをいっていた。しかし、2015年3月のAIIB事件以降強気に転じていますトランプはその流れを継承していきます。私たちは、トランプ・アメリカと習近平・中国の覇権争奪戦を目撃することになるでしょう。

日本はアメリカとの関係をますます強固にしロシアと和解する。そして、「日本には沖縄の領有権もない!」と宣言している中国の野望を阻止しなければなりません。一瞬たりとも油断はできませんが、今の路線を謙虚に進んでいけば、日本の勝利は確実でしょう。

image by: Timofeev Sergey / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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