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【書評】なぜアイリスオーヤマは「クリア収納」を発明できたのか

数々のヒット商品を生み出し続けるグローバル企業、アイリスオーヤマ。今や日本中のホームセンターで、あの見覚えのあるロゴマークを目にすることができるといっても過言ではありません。無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』では、そんな会社を率いる大山健太郎氏の経営理念がぎっしり詰まった一冊が紹介されています。

アイリスオーヤマの経営理念 大山健太郎 私の履歴書
大山健太郎・著 日本経済新聞出版社

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、仙台の書店さんでひときわ目立っていた本。

仙台に本拠地を構えるグローバル企業、アイリスオーヤマの会長大山健太郎氏による注目作です。

「日本経済新聞」連載の「私の履歴書」に加え、著者が20年間、約1,000回におよぶ朝礼のなかから、特に大事だと思う内容を抜粋し、加筆・再構成したものです。

東日本大震災から復興へのドラマと、著者の生い立ち、著者が作り上げた事業の仕組み、ネットビジネス、商品開発のヒント、地域貢献のあり方、経営理念や人材育成の実際など、知りたいことが具体的に書かれており、じつに勉強になります。

なかでも、どうやって次のビジネスを予測するかどうやって需要を創造するかといった視点は秀逸で、著者の手腕の鮮やかさに舌を巻きます。

ほかにも、上場しない理由や、「意欲があれば、追い越し可能」な3車線道路式の評価制度など、経営者としてヒントになる部分がたくさんありました。

さっそく、気になったポイントをチェックしていきましょう。

手持ちの現金がない人はノートに名前を書いてもらうだけで手渡す。代金は後に全額戻ってきた。気仙沼店では寒さの中を並ぶ客に暖房用の灯油を1人10リットルまで無料で配った。まだ電話が通じておらず、本社と連絡が取れていない。居合わせたテレビの取材に店長はこう語ったそうだ。「クビになるかもしれません。それでもいいんです」。緊急時の対応マニュアルを持つ会社は多い。しかし本当の非常事態には役立たない。書類をめくる余裕はなく、起こることはたいてい想定外。肝心なのは、その企業の哲学が社員の体に入っているかどうかだ

夏に向け、節電は日本にとって大きなテーマになると思われた(中略)LEDの照明器具は電力の消費量は小さいが蛍光灯などに比べると価格は高く、普及具合は今ひとつだった。しかし節電のために、切り替える企業はきっと増える(中略)4月にはLED照明の受注量が前年同月比で倍増し5月には3倍から5倍に跳ね上がった。生産ラインを増設していなければ対応できなかっただろう

原油価格は当面、上がり続ける──。皆がそう思い在庫を積み増したと知る。消費者のトイレットペーパー買いだめと同様、需要の先食いにすぎない。戦争勃発から2年、値上がりが一服した途端に商品がだぶつき始めたのだ。まもなく壮絶な値崩れが始まった

産業界向けのビジネスよりも消費者向けビジネスの方が好不況に左右されにくいこともわかってきた(中略)帝国データバンクから日本企業140万社の経営データを購入、半年かけて丹念にチェックすると園芸用品の2社が目に留まった。地方企業で規模は小さいが売上高を伸ばしており利益率も高い

「今後はベンダー機能も自社で持つ」。私はあえて難しい道を選んだ。町工場以来の「できることは自前で手がけ、経験を社内に蓄積すべし」という姿勢にも合う。方針を決めたことで、小売店との取引拡大につながった

作った物を売るのではなく、売れた物を迅速に作るのだ

給与は高く、人件費は低く

売上は努力で利益は知恵で決定する

当社がこれまでに変えてきた、収納、園芸、ペットの市場には、すべて「キーワード」がありました。収納では、「しまう収納から探す収納」がキーワードでした。しまう不便よりも探す不便の方が大きいという考えからクリア収納が生まれました。「キーワード」がなければ、世の中を変えるような大きな需要創造をすることはできないと考えます

著者は、東日本大震災の時、集まった社員にこう語ったそうです。

家族が心配だろう。しかし私たちの商品を出荷することが東北の復興になる。企業には企業にしかできない役割がある。未来を見すえ、前に進むことだ。人を出せないかわりに3億円を自治体に寄付する。皆は東北のために、ここにとどまって仕事をしてほしい。

大義を謳うこと。コンセプトを作ること。キーワードを作ること。

本書には、経営を動かす原理原則と、著者がそれにどうやって気づいていったかのドラマが描かれています。ぜひ読んでみてください。

image by: Wikimedia Commons

 

毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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