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日本の農業は本当に補助金漬けなのか? デマで進められる亡国の農協改革

「日本の農業は保護され過ぎている」という話をよく聞きますが、実はデマだった―。そんな衝撃の事実が無料メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』に記されています。農業産出額に対する農業予算の割合に至っては、日本は27%、アメリカはなんと65%。こんな事実を隠してTPPや農協改革が進められていると三橋氏は警告します。

農家は補助金漬け?

日本ほど農業を保護していない国はない
続 日本ほど農業を保護していない国はない

別に、農協改革(というか「反・農協改革」)の本を書いたからといって、日本の農業や農家、農協に問題がないなどと言いたいわけではありません。と言いますか、問題を抱えていない産業、業界、企業、組織など、この世に1つもないでしょう。

日本の農業も、「各地で多様な農業生産を継続し、国民の食料安全保障を未来永劫、着実に維持すると同時に、日本国民の心の故郷である美しい田園風景を守る」というゴール(ちなみに、三橋定義の「ゴール」です)を達成するためには、様々な課題をクリアしていかなければなりません。

そもそも、日本の農業のあるべき姿は「国民農業」だと思います。国民の胃袋を満たし、飢えさせないためにこそ、日本の農業は存在しているのです。

それに対し、「日本の農家は世界に打って出ろ!」などと世迷言を言っている人々は、農業を「商業農業」として捉えているように思えます。食料安全保障を最も重要視しなければならない農業分野において、ビジネスの優先順位を高めようとしているのです。

ビジネスが優先されると、それこそ「グローバル市場」を相手に、儲けるために農業を営む、という「経営スタイル」が拡大してしまいます。ちなみに、かつて東南アジア諸国が、欧米諸国から特定の「商業農業」を強制された結果、国土が荒れ果て、住民が飢える事態になってしまった歴史があるわけですが、何と呼ばれているかご存知ですか。

>>次ページ 国を滅ぼす商業農業の形態とは?

そう、プランテーションです。

日本はわざわざ、「商業農業」、平将明議員らが言う「付加価値が高い農業」に特化し、自らプランテーション化しようとしているわけです。食料安全保障は、一体どこに消え失せてしまったのか。

しかも、農業や農協に対する批判が「事実」に基づているならばともかく、ほとんどが「ウソ」「デマ」ばかりです。特に悪質なのは、「日本の農業は補助金漬けで、保護され過ぎているからダメなんだ」というレトリックです。この手の主張をする連中は、決してアメリカや欧州の事例は出しません。

日本の日本の農業の所得に対する「直接支払(税金)」の割合はわずか15.6%主要国最低です。欧州の農家の所得に占める直接支払の割合は、軒並み90%を超えており、アメリカにしても26.4%。しかも、アメリカの穀物系は50%前後に達しています。

農業産出額に対する農業予算の割合は、日本が27%。対するアメリカは65%フランス44%イギリス42%スイス62%。また、日本の農業の平均関税率は、アメリカに次いで低いのです。しかも、アメリカ政府は穀物について「輸出補助金」を支払い、グローバル市場への輸出を支援しています。そして、日本に輸出補助金はありません(だからこそ、農業予算対農業産出額の比率が低いのです)。

上記の事実を知った上で、「日本の農業は保護され過ぎている」と主張できる人がいるでしょうか。と言いますか、この手の「事実」が国民に共有されていないからこそ、「ウソ」「デマ」に基づき、日本の食料安全保障を破壊する農協改革やTPPが推進されていっているのです。

事実を知ってください。

image by: Shutterstock

 

『三橋貴明の「新」日本経済新聞』より
経済評論家・三橋貴明が責任編集長を務める日刊メルマガ。三橋貴明、藤井聡(京都大学大学院教授)、柴山桂太(滋賀大学准教授)、施光恒(九州大学准教授)、などの執筆陣たちが、日本経済、世界経済の真相をメッタ斬り!日本と世界の「今」と「裏」を知り、明日をつかむスーパー日刊経済新聞!
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