先方の言葉に対して、「本心なのか、それとも社交辞令なのか」と迷ってしまうこと、よくありますよね。言葉のとらえ方は人それぞれで、だからこそ悩むものなのですが…、今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、ある「捨て台詞」を巡り会社と社員との間で争われた裁判事例が紹介されています。
「こんなとこ働けんわ」は合意と認められるのか
普段の会話で、非常に悩むときがあります。それは、「今度、飲みに行きましょう」と、言われたときです。これは果たして本気なのか完全に社交辞令なのか(グーグルで検索すると「飲みに行きましょう 社交辞令」で17万件もヒットしますね)。
もしこれが、すこしでも本気で行きたいと思っていただいているのであればお誘いしないのは非常に失礼になるのかなと思いますし、逆に社交辞令であればお誘いしてしまっては大変なことになります。
最近は、その場の雰囲気や言い方などでなんとか判断するようにしていますがそれにしてもいまだに悩ましい問題です(いっそのこと「飲みにいきましょう。社交辞令ですけど」とか言ってもらえると楽なんですけどね)。
では、これが裁判になるとどうなるか?
ある一言をどうとらえるかで社員と会社が争った裁判があります。
ある法律事務所でその社員が「不当解雇である」として会社を訴えました。これに会社が反論しました。会社がその社員に解雇を伝えたときに、その社員が言った一言が「こんなとこ働けんわ」でした。そして、そのまま会社から立ち去ってしまったのです。
そこで会社は「不当解雇ではなく、合意(自分から辞めた)によるものである」と主張しました。
- 「こんなとこ働けんわ」という一言
- 会社からそのまま立ち去る
では、これを裁判所はどう判断したか?
裁判の結果、会社が負けました。その言葉や行動からは「合意とは認められない」としたのです。なぜか?
実は、会社はその社員から「合意による」という書面をもらっていませんでした。ここが重要なポイントです。
確かにこの社員の一言と行動を見れば「合意」と、とらえられなくもありません。ただ、その部分を裁判所は「合意とみられるような行動をしていたとしても、書面によるものが無ければ認めることはできない」と判断したのです。
いかがでしょうか? これは実務的にも非常に注意すべき点です。例えば、退職届。みなさんの会社では退職のときに必ず退職届をもらっているでしょうか?
自分から辞めたにも関わらず「不当解雇だ!」とあとから言われるケースというのは実は結構あるのです(解雇だと失業手当がすぐにもらえるというのもその一つの理由かも知れません)。
そうならないためにも退職時に必ずもらうようにしましょう。もちろん労働契約の変更などの場合も同様です(「本人が納得しているから大丈夫」は、非常に危険です)。
トラブルになる前にまずはその「予防」が重要なのです。