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牛丼の吉野家が60年続けてきた、インターネットに真似できないこと

業績好調の「吉野家」ですが、なぜ他の牛丼チェーン店のように券売機を設置しないのでしょうか?そこには同社の創業当時から変わらぬ、あるポリシーがありました。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では、メルマガ著者でMBAホルダーの理央周さんが、ITや機械には決して真似できない「真のサービス」について持論を展開しています。

業績好調の吉野家は、なぜ店頭に券売機がないのか?

先月、2016年3-11月期の決算を発表した吉野家ホールディングス

主力の牛丼チェーン「吉野家既存店売上高が1.0%増と好調だった。

円安傾向にあるため、米国から輸入牛肉を使っている吉野家にとっては、決して追い風とは言えない状況にあるが、お一人様消費の傾向が強まったりと、吉野家にとって、向かい風ばかりでもない。

吉野家のポリシー

なぜ吉野家の収益は好転したのか?を考えていきたい。

吉野家が打つ手を振り返ってみると、昨年ソフトバンクと組んだ、牛丼並盛り1杯が無料になるキャンペーンや、現在やっている、「地域限定ご当地鍋メニュー」、そして、「牛すき鍋膳」が、どれも、目新しく好調だった。

私が、会社員として最後に勤めた通販の会社で、マーケティングをしている時に、通販で冷凍パックの吉野家の牛丼セットを、売っていたことがある。

個人的な感想ではあるが、際立って美味しいし、買ってくださるお客様の多くも、「固定のファン」が多かった。

自分で買って自宅で出しても、当時10代だった息子も娘も、喜んでお代わりしていたことを覚えている。

吉野家の牛丼は、もちろん店頭で食べても、昔からの味は変わらなく美味しい。500円前後でのこのボリュームは、「早い、安い。うまい」の、キャッチフレーズ通りだと再認識できる。

吉野家は他の牛丼チェーン店と違い券売機が無い

これは創業以来らしく、「お客様にあい対して接客するというポリシーからだとのこと。

「お金を払う時にも、注文を聞く時にも、機械に任せない」ということであろう。

一時期、牛丼チェーン店同士が、価格競争を行っていたことがあった。

いいものを安く提供することは、決して悪いことではないが、吉野家のこの「人が接客する」という、ポリシーが、ファンに伝わっているのであろう。

通販で吉野家の冷凍牛丼を売っていた時に、販売促進のキャンペーンで、吉野家の人気抜群の「丼」が抽選で当たります、というキャンペーンを企画したことがあった。

しかし、当時の吉野家は、「この丼を決してプロモーションには使わない」とのことで、実現が叶わなかったことを記憶している。

こういったこだわりにも吉野家に愛着を持つ人が多い理由なのだろう。

ブランドを構築する、ということの目的は、顧客との良好な関係を創ること。いわゆる忠誠心(=Loyalty)を持ってもらい、他者に浮気されないことを目指すことだ。

そのために、「顧客に有益なことを継続する」ということが、顧客との距離感を縮め、重リピート購入につながる。

吉野家で言えば、値引きでひきつけるのではなく、「お客様に店員が直接注文を聞き、牛丼を運ぶ」というポリシーを貫いていることが、これにあたる。

中小企業が学ぶべきこと

中小企業が、吉野家に学ぶべきことは、券売機を置かないこと、ではない。

来てくれるお客様に、相対することが、機械を置くことによる経費削減よりも重要だ、という事業に対する姿勢であろう。

ITの導入や、機械による自動化の流れは、もはや無視できないほど進んでいる。

しかし、人による接客は逆に機械やITには真似をすることができない

準レギュラーで出演しているラジオ番組に出た時に、Fintechの話になった。

「技術の進化は取り入れなければならないが、同時に中小企業はネットにできないことをすべき」と私が言った時に、貴金属の販売チェーンを経営しているナビゲーターは、「私の店では、店長が毎日ピン札をおつり用に用意します」と言っていたが、まさにこういう姿勢が必要だろう。

インターネットに真似できないことで顧客満足を超える顧客歓喜を提供するのだ。

これにより、不毛な値引き合戦からも脱却できる。

そのためには、顧客の行動を観察し、何を喜ぶかを、全従業員で考えていくことが、最初の一歩になるであろう。

image by: Tupungato / Shutterstock, Inc.

 

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