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北朝鮮に無慈悲な報復。米中「合意」というウルトラCは実現するか?

米国などの一部メディアが、「アメリカは北朝鮮への軍事行動を検討し始めた」と報じていますが、トランプ大統領自身は、開戦の決断を下すまでには至っていないようです。戦争に慣れているはずのアメリカが躊躇しているのは、北朝鮮の背後に「中国の影」があるためだとするのは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さん。しかし北野さんは、その中国とアメリカが手を組むという「ウルトラC」もあり得る、と記しています。

米軍、朝鮮戦争開始の条件

米メディアも報じ始めた『朝鮮戦争』の不気味なリアリティ」でも触れましたが、アメリカは朝鮮戦争の準備を開始しました。とはいえ、トランプ自身も、開戦の決断をしているわけではない。

K・T・マクファーランド大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は約2週間前、安全保障に関わる政府関係者を集めて北朝鮮への対策を提案するように指示した。従来の考え方からかけ離れた発想でも構わないと言われたと、ある関係者は明かす。北朝鮮を核保有国として認めることから軍事行動まであらゆる選択肢を検討するよう指示された。マクファーランド氏の狙いは、政権の対北朝鮮政策を根本的に考え直すことだったという。会議に出席した政府関係者らは2月28日、マクファーランド氏に提案を提出した。これらの選択肢は精査されてから大統領に届けられる。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 3月2日)

北朝鮮を核保有国として認めることから軍事行動まであらゆる選択肢を検討するよう指示された」そうです。それで、アメリカのエリートたちは、どんな風に思考しているのでしょうか? シミュレーションしてみましょう。

アメリカの目標

そもそも、アメリカは、なぜ困っているのでしょうか? アメリカの目標は何なのでしょうか?

北朝鮮は、「大陸間弾道ミサイルの発射実験をする」と宣言している。つまり、北朝鮮は、

ということで、「もうすぐアメリカ本土を核攻撃できるようになりますよ!」と宣言している。金正恩のようなクレイジーな指導者が、「アメリカ本土を核攻撃できるようになる!??」。これは、「本当の脅威」なので、「何とかしないといけないよな」と。つまり、アメリカの目標は、北朝鮮の持つ

破壊すること。

話し合いは?

こういう場合、まず出てくるのが、「話し合いましょう」です。しかし、うまくいく可能性は非常に低い。なぜ? 金正恩は、「アメリカが核をもたない独裁者にどう接してきたか知っている」からです。

イラクのフセインやリビアのカダフィは、殺されました。シリアのアサドは、徹底抗戦してなんとか生き残っている。しかし、アメリカが、「隙あらば殺してしまえ」と思っているのは明らかです。というわけで、金正恩が「核兵器破棄」に応じるとは思えない。

そして、アメリカサイドも、金正恩と「交渉できない」ムードになっています。「VXガスを使って、自分の兄を殺すような狂人と交渉できるか!」と。というわけで、「話し合いでの解決望み薄です。

クーデターは?

再びWSJ3月2日を見てみましょう。

米政権、北朝鮮への武力行使も選択肢に

ウォール・ストリート・ジャーナル 3/2(木)8:42配信

 

北朝鮮による核兵器の脅威に対応するため、トランプ米政権が武力行使や政権転覆などの選択肢を検討していることが分かった。

「政権転覆」。これは、「クーデターを起こして金正恩政権を打倒する」という意味。アメリカの得意技」と言われています。

たとえば、03年のグルジア革命。04年のウクライナ革命。05年のキルギス革命。14年のウクライナ革命。これらは、「アメリカのサポートで実現した」といわれている。実際、革命で失脚した、シェワルナゼ元グルジア大統領、アカエフ元キルギス大統領、ヤヌコビッチ前ウクライナ大統領は、「アメリカにやられた!」と断言しています。

とはいえ、北朝鮮のような「ほぼ完全鎖国国家」に、アメリカが「クーデター基盤」を築けているとは思えません。これも、難しそうです。

国連安保理は?

話し合いもダメ。クーデターもダメ。そこで、いよいよ「戦争」の話が出てきます。

アメリカが「合法的」に戦争しようとすれば、一番いいのは「国連安保理から武力行使のお墨つき」を得ること。ところが、これが「得られない」のです。なぜ? 中国とロシアが必ず拒否権を行使するから。

自衛権行使は?

今の国際法では、「合法的な戦争」が二つあります。一つは、「国連安保理が承認した場合」。もう一つは、「自衛権の行使」。ここには、「個別的自衛権」「集団的自衛権」の両方が含まれます。「自衛権」というのは、「先に攻撃されたから反撃する」というのが一般的。たとえば、「日本が真珠湾を先に攻撃したから、アメリカは戦争を開始した」(ルーズベルトが云々という話、今回は省略します)。ちなみに「9.11」後の「アフガン攻撃」も、「自衛権行使」と説明されました。

ところが、今回の場合、「北朝鮮が、『将来』核を搭載した大陸間弾道ミサイルでアメリカを、『攻撃する可能性がある』」というのが、攻撃理由。「まだ攻撃されてないのに、自衛の権利がある」というのを、「先制的自衛権」といいます。これについては、「ある」「ない」で解釈がわかれている。ですから、アメリカが今北朝鮮を攻めたら、「絶対的な正義の味方」にはなれないでしょう。

中国ファクターを無力化させる「リメンバー●●!」

アメリカは、中東や北アフリカの国々を、あまり躊躇することなく攻撃してきました。

しかし、アメリカは、好き放題やる北朝鮮を攻撃しませんでした。その最大の理由は、「北朝鮮の後ろに中国がいるから」です。アメリカは1950年からの朝鮮戦争で、中国+北朝鮮に「引き分け」ました。いまや軍事費世界2位の中国と戦争になった日にゃあ。

どうすれば、「中国が出て来られない状況」をつくることができるのでしょうか? 国際社会が、「アメリカの北朝鮮攻撃は絶対的に仕方ないと思える状況になればいい

たとえば、「真珠湾攻撃」の後、ルーズベルトは、「リメンバー・パールハーバー!」と叫び、日本との戦争に突入した。アメリカ国民は反対しませんでした。「9.11」の後、ブッシュは、「リメンバー9.11!」と叫び、アフガン攻撃を開始しました。ほとんど誰も反対しませんでした。国際世論を圧倒的に味方にできれば、「悪者になりたくない」中国は動けなくなるかもしれない。

「リメンバー●●!」とは、具体的に何でしょうか?

などなど。金正恩は、これまでも数多くの挑発行為を繰り返している。それで、一つの挑発行為を大々的に取り上げて「リメンバー●●!」にすることができるかもしれません。

米中「合意」というウルトラC

金正恩、核兵器、ミサイルを排除したいが、中国と戦いたくない。そんなアメリカが中国と合意する可能性もあります。何でしょうか?

なぜ、中国は、反抗的な金正恩を守るのでしょうか? 韓国を中心に朝鮮半島が統一されれば? 朝鮮半島はアメリカの支配下に入る。すると、北朝鮮と中国の国境に「米軍基地」ができるかもしれない。「北京を火の海にできる」ミサイルが配備されるかもしれない。これを阻止したい。

アメリカは、北朝鮮の「核兵器」「ミサイル」を破壊したい。中国は、北朝鮮がアメリカの支配下に入るのを阻止したい。ここに「ディールの余地」があります。

つまり、米中共同で金正恩政権を倒す。そして、核兵器とミサイルを破壊する。これでアメリカの目標は達成します。その後、北朝鮮には、中国の傀儡政権を樹立させる。これで北朝鮮は、中国の影響下に入り、中国の目標も達成される。これだと、米中双方の目標が達成され、日本や韓国の犠牲者は、ほとんどでないでしょう。

いずれにしてもトランプ政権は、「金正恩をどうするか?検討中。トランプさんの動きを注意深く見ていきましょう。

 

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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