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京都らしさのすべてがある。五感で古都に触れられる花見小路の旅

先日掲載の記事「春めく古都をぶらりと散策。京都通が案内する八坂通りの歩き方」で、古都ならではの風情が感じられる観光スポット・八坂通りの魅力を余すところなく伝えてくださった、京都ツウの英  学(はなぶさ がく)さん。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、そのすぐ側を通る「花見小路」が紹介されています。地元の方からも愛される「建仁寺」をはじめ、伝統芸能から近代芸術まで京都らしさのすべてが感じられるこの通り、これからの季節の散策にぴったりですよ。

花見小路とその周辺

花見小路は、北は三条通りから南は建仁寺まで続く約1キロの小路です。祇園など東山区の歓楽街を貫いていて、周辺には寺社仏閣やお茶屋さんなどが立ち並ぶ京都らしい風情のある通りです。また、オシャレなバーやレストランなど雰囲気のいいお店も数多く立ち並んでいます。これといった用事もなく、通りを散策するだけでも楽しいエリアなのでこの辺りは観光客も多く、人通りが絶えることはありません。今回はこの花見小路の見どころや周辺の観光名所などをご紹介しその魅力をお伝え出来ればと思います。

花見小路は、明治時代の初期に整備された小路です。当時、すぐ近くに建つ建仁寺の寺領の一部が政府の宗教政策に伴って区画整理され、それを機に通りを良くするために敷設されました。今は京都らしい風情を感じる石畳が敷かれた趣のある通りになっていますが、15年ぐらい前まではアスファルト敷きでした。より古き良き京都らしい景観を取り戻した花見小路は、今では観光客に一番人気の通りとなりました。

花見小路周辺には、寺社仏閣や、伝統芸能を親しむことが出来る施設などが立ち並んでいます。いくつかを詳しくご案内しましょう。

東西を走る祇園商店街(四条通り)から赤壁のお茶屋さん・有名な「一力亭」の角を南に曲がります。花見小路を真っすぐ5分ぐらい進むと、どん突き(京都の言葉で「突き当り」)に京都最古の禅寺・建仁寺があります。まずこの格式ある禅寺をご紹介しましょう。

建仁寺

建仁寺は、1202年、鎌倉時代に臨済宗の開祖・栄西(ようさい)によって創建されました。開基は鎌倉幕府2代将軍源頼家(よりいえ)です。栄西は、宋(中国)に渡り帰国後、臨済宗の教えを日本に伝えた宗祖です。帰国してすぐ、栄西は京都に禅寺を作ろうと試みました。しかし、当時の京都は比叡山延暦寺の勢力が強く、禅寺を開くことは出来ませんでした。鎌倉時代に栄えた新仏教(臨済宗、浄土宗、浄土真宗、時宗、日蓮宗、曹洞宗)などはこの頃はまだ新興宗教という位置づけでした。そのため、真言宗と天台宗以外は肩身の狭い思いをした時代だったのでしょう。なので、栄西はまず九州博多に聖福寺を、鎌倉に寿福寺を建立しました。京都に建仁寺を建てることが出来たのはその後でした。

創建当時、建仁寺には真言宗と天台宗の他に禅宗の三つの宗派を置いて開かれたと伝えられています。当時新興宗教であった臨済宗はまだ肩身が狭いので単独で禅宗のお寺を京都に開くことは難しかったのです。当時大きな力を持っていた真言宗と天台宗にかなり配慮していたことが伺えます。建仁寺が創建されてから50年以上経った1259年に11世住職として宋僧の蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が入山します。この時にようやく建仁寺は本格的な禅寺になったと伝わります。あの威風堂々とした建仁寺でさえも最初は新参者として50年以上も小さくなって時期を過ごしたしていたことは注目に値します。

京都の寺社仏閣の例外にもれず、応仁の乱やその後の戦乱で伽藍(がらん)=(寺院の主要建物群)が焼失し一時荒廃しまします。しかし、その後1586年安土桃山時代に安国寺恵瓊(あんこくじえけい)によって再興されます。寺格も整えられ現在も京都五山第3位の格式を誇っています。地元祇園界隈では、「けんにんさん」と呼ばれ親しまれています。

建仁寺の境内は広く、伽藍は壮大です。伽藍を全て見て周るだけでかなり時間がかかります。建仁寺は何度も戦火に見舞われたため、残念ながら創建当時の建物はありません。だからと言って見るべきものは沢山あります。戦国時代末期から明治時代にかけて、再建や他の寺院からの移築によって伽藍が整えられているからです。

建仁寺 紅葉見所情報はココ!

主な見どころ

方丈は1487年に広島の安国寺に建立され、1599年に安国寺恵瓊によって移築されたものです。現在の建物は昭和9年の室戸台風で倒壊し、昭和15年に再建されたものです。勅使門は平清盛の嫡男・重盛の六波羅邸の門を移築したものと伝えられています。この勅使門には戦乱の矢の痕があり、矢根門(やのねもん)、矢立門とも言われています。

法堂(はっとう)の鏡天井に描かれる双龍図(そうりゅうず)は2002年、創建800年を記念して日本画家・小泉淳作が描いたものです。そして現在は京都国立博物館に寄託されてしまいましたが、俵屋宗達が描いた「風神雷神図屏風」のレプリカを見ることが出来ます。

● 「琳派 風神雷神図屏風」(メルマガ「おもしろい京都案内」第8号)

建仁寺ホームページ

アクセス

建仁寺の周囲には塔頭(たっちゅう)寺院と呼ばれる子院が点在しています。両足院(りょうそくいん)は庭の美しさで有名なので機会がある時に是非訪れて見て下さい。両足院は通常非公開寺院ですが、半夏生が咲く夏の時期には特別公開されます。

両足院のホームページ

伝統芸能を楽しめる施設

花見小路沿いには祇園甲部歌舞練場や、弥栄会館ギオンコーナーがあります。特にギオンコーナーは伝統芸能を気軽に楽しめる施設です。舞妓さんの花かんざしなどの展示や五花街を紹介する「舞妓ギャラリー」は一見の価値があります。

祇園甲部歌舞練場では、毎年4月になると芸舞妓さんによる踊りを観賞することが出来る「都をどり」が行われています。現在は2016年(昨年)の会をもって耐震補強工事のため一時休館となってしまいました(再開時期未定、今年は春秋座で開催)。外観は唐破風(からはふ)の屋根を持つ玄関などがとても趣があり、風情が感じられます。

弥栄会館ギオンコーナーは、京舞・華道・茶道・琴・雅楽・狂言・文楽の公演を見学できる施設です。華道や茶道は目の前で花を活けてくれたりお茶をたてたりしてくれます。毎日午後6時と午後7時に公演が行われており、個人の場合は予約もいりません。なお、12月から3月までは金・土・日の3日間のみの公演となりますので注意してください。京都観光を終えて、夕飯までの一時を伝統芸能の観賞をして過ごすのもおすすめです。

祇園甲部「都をどり」(4月1日~30日)

芸術を楽しめる施設

花見小路沿いには、何必館(かしつかん)・京都現代美術館という近代芸術を楽しめる美術館があります。「何必館」は「何ぞ必ずしも」と定説を常に疑う自由な精神を持ち続けたいという意味があるそうです。展示される作品もそのような考えに基づいて収集されているものが多いようです。主に近現代中心の美術品を展示していて、北大路魯山人・村上華岳・山口薫の作品を数多く収蔵しています。散策がてらぶらりと立ち寄ってみると新しい発見があるかもしれません。

今回は桜の時期が近くなってきたので、祇園白川丸山公園といった中心地の桜の名所にも近い花見小路をご紹介しました。京都へお花見にお出かけの際は是非立ち寄ってみて下さいね!

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Shutterstock.com

 

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毎年5,000万人以上の観光客が訪れる京都の魅力を紹介。特にガイドブックには載っていない京都の意外な素顔、魅力を発信しています。京都検定合格を目指している方、京都ファン必見! 京都人も知らない京都の魅力を沢山お伝えしていきます。

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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