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高橋ヨシキ・インタビュー「僕がスター・ウォーズと決別した理由」

アート・ディレクターや映画ライター、そしてサタニストと多くの顔を持つ高橋ヨシキさんが知られざるB級映画や音楽などのカルチャー全般について語るメルマガ『高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド!』。その高橋さんに昨今の映画事情から悪魔主義までを語っていただくインタビューを敢行。自身のメルマガで取り上げ、大きな反響を呼んだ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』との決別宣言を中心に、なぜ今サタニズムなのか?まで、いろいろとぶった斬ってくれました。

「安パイ」頼みが跋扈する映画業界

——舌鋒鋭い映画評論で熱狂的な支持を集める高橋ヨシキさんですが、2016年末にご自身のメルマガでも取り上げられて、大きな反響を呼んだのが……。

高橋ヨシキ(以下、高橋:):出た(笑)。『ローグ・ワン』の話ですね。

——はい。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』をご覧になられたのを受けて、第一作からのファンだった『スター・ウォーズとの決別を宣言されましたが、この話題について、まずお話をお聞きしたいのですが……。

高橋:ある意味『ローグ・ワンファンと作り手の意識が一致しちゃったんですよね、この場合。「同じものに耽溺し続けていたい」というファンの欲望に『ローグ・ワン』は、ほぼ完全な形で応えているわけで、そこで利害は一致しているわけですが、本当にそれでいいのか? という。

僕は作り手が先に進むのをやめて同じようなものを際限なく供給することを良しとするのはまずいと思うし、それを消費者と化した観客が「もっと、もっと」と要求するようになるという、そういうサイクルが生まれてしまうことに対する危惧もあります。これは『スター・ウォーズ』に限った話ではありませんが、そういう傾向が強まってきているという実感はあります。

——『スター・ウォーズ』といえば、世界中の誰もが注目している作品ですし、そんな重要な作品がそういうジレンマに陥ったというのは、今後の映画業界にもよくない影響を与えそうな気がしますね

高橋:もちろん、そこまで単純な話でもなくて、たとえば現在『スター・ウォーズはディズニーの商品なわけですが、ディズニーは一方で非常に実験的な試みや、先進的なチャレンジも行っているわけです。革新的なことを尊重する気概はちゃんとあるんです。

また、マーベルもディズニーの傘下ですが、そっちでもメインどころの『アヴェンジャーズ』などとは別に、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とか『ドクター・ストレンジ』には「新しい、面白いことをやるぞ」という気概をとても感じます。

これは憶測になってしまいますが、『スター・ウォーズ』の場合はもしかしたら「ファンの気持ちを最大限忖度しておけば間違いないという感覚があったのかもしれません。もちろん『ローグ・ワン』がたまたまそういう作品だったという可能性はありますが、しかしルーカスであれば絶対にやらなかったであろう、一種の「ファン・フィクション」としての『ローグ・ワン』がヒットしたので、その影響は今後のシリーズにも確実に及ぶと思っています。

——ただ、今後出る『スター・ウォーズ』の新作が一転して、映画作品としてのあるべき姿である「前へと進む作品」になっている可能性も、なきにしもあらずっていうことでしょうか?

高橋:どうでしょうか。本家のシリーズとスピンオフ的な作品で使い分けるという可能性はあると思っていますが、どうなることやら……ただ、僕は『007シリーズも大好きなんですが、「『007こそ毎回同じじゃないのと言われたら返す言葉もみつからないです(笑)。ただ『007』は、少なくとも以前は一話完結型だったので、ちょっと状況が違うということはいえます。

というか、リメイクやリブートばっかりになってしまった今の映画界の状況にも当然問題はあるわけです。21世紀になって『スター・ウォーズ』と『ゴーストバスターズ』と『ゴジラ』と『ジュラシック・パーク』の新作が次々と公開されるなんて、まったく予想していませんでした。

——そういう風にリメークやリブートばかり出てくるというのは、映画業界全体が新しいものを作り出すことに及び腰になっているということなんでしょうか?

高橋:そうですね。リメイクやリブートだと映画にお金を出す人や会社を説得しやすいんです。過去作があれば「こういうことをやります」ということがすぐに伝わるので。でもオリジナルの脚本を持っていって「こういう新しい世界観を示す映画をやりたいんです」といっても、それはなかなか伝わらない。

有名な話ですが、『マトリックスも製作に至るまでには内容が理解してもらえなくてとても苦労したそうです。だからコミックのアーティストに詳細な、ほとんどマンガのようなストーリーボード(絵コンテ)を描いてもらって、それを見せながら説明するということを丁寧にやって、ようやく分かってもらえたという。

当たるか当たらないかわからない映画を大金かけて作るということは一種のギャンブルです。ただ、ギャンブルであっても、お金を出す方はなるべくリスクを軽減したいわけです。それをどんどん推し進めていくとリメイクやリブートが安全パイに思えてくるのも仕方のないことかもしれませんが、リスクはあっても新しいものにチャレンジしてほしいなとは強く思います。

——すごく乱暴に言えば、「今後はもう新しいものが出てこないぞ」っていう話になりますし……。

高橋:戦隊ものとか、『仮面ライダーみたいなことになっている気もします。いや、戦隊ものや『仮面ライダー』の内容がどうの、ということではなくて、構造的なことです。つまり、毎年新しいライダーでシリーズを作り、それに付随するオモチャを作って1年間で売り切って、翌年はまた新しいライダーに移行するというような。『スター・ウォーズはマーチャンダイジングも巨大なので、もはや「作品が売れているからオモチャも売れる」のか「オモチャが売れるから作品を作る」のか、その境目すら見えにくくなっている気もするほどです。

とはいえ今後も『スター・ウォーズ』の新作が出たら、結局絶対観に行くわけです(笑)。ただ、『ローグ・ワン』でいったん『スター・ウォーズとの付き合い方に踏ん切りをつけたので、今後は今までより気楽に楽しめるんじゃないかという気もしています。

——決別すると言っても、見るのを一切やめるわけじゃなくて、フラットな状態に戻して、また見に行くというか……。

高橋:うーん、本当にフラットな状態にはなかなか戻せそうもないのが、また辛いところなんですけどね。でもまあそれは個人的な折り合いの付け方の問題なので。

——『ローグ・ワン』の話も尽きないんですが、他の作品のことについても……。2016年の日本国内では、『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』といった作品が注目されて、高橋さんも『シン・ゴジラに関してはメルマガでも大いに取り上げられていらっしゃいましたよね。「あまりにも設定に頼りすぎているといった趣旨で……。

高橋:「設定に頼りすぎている」というと、ちょっと違います。そうではなくて「物語」や「人物」というものは「設定」や「属性」で置き換えられるものではないんじゃないか、という話をしているんですが、メルマガで詳しく書いたのでバックナンバーで読んでいただけると嬉しいです。ただ、「設定属性があればオッケーというような作品は世界的に増えてきているので、時代の空気なのかなあという気もしますが。

(次回に続く)

※このインタビューの全文は、まぐまぐ発行者スペシャルインタビュー(まぐスペ)でもお楽しみいただけます。

Photo by: Kotaro Minamiyama

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