そうしたなかで物議を醸しているのが、2010年にWHO(国際保険機関)総会で採択された「アルコールの有害な使用を減らすための世界戦略」です。このなかで、国が取りうる介入策として「価格規制」など10項目を示しています。価格規制における1つの介入策として「酒の安売り規制」や「均一料金による飲み放題」を挙げているのです。
「飲み放題」は基本的に儲かります。よほどの大酒飲みの利用がなければ原価割れすることはありません。消費者にしてみれば飲み放題はお得感を感じることができるサービスです。日本では習慣的なサービスとして育っています。もし政府がWHOの採択に従って飲み放題を規制することになれば、居酒屋は大打撃を受けることになるでしょう。
ただ、WHOの採択は法的拘束力がないため、必ず実現しなければならないものではありません。日本の実情に鑑みた場合、飲み放題をなくすことはかなり高いハードルがあるといえます。飲み放題がなくなることは考えにくいといえるでしょう。
しかし、飲酒の強要や過度のアルコールの摂取に対する厳しい視線が強まっていくことは間違いありません。居酒屋業界にとって追い風にならないことだけは確かです。
居酒屋は苦境に立たされています。酒の安売り規制で救われる形になりそうですが、アルコール規制や消費者のライフスタイルの変化などによる需要の低迷の波に抗うことが難しい状況です。近年では飲食店の「ちょい飲み」という新たな脅威も現れています。日本の居酒屋文化に危機が訪れているといえそうです。
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「企業経営戦略史 飛躍の軌跡(クリエイションコンサルティング)」