先日行われたフランス大統領選挙の結果、5月7日の決選投票に進むことが決まった極右政党「国民戦線」の女性党首マリーヌ・ルペン氏と、グローバリストでEU支持の若きエリート、エマニュエル・マクロン氏。正反対の主張をする二人ですが、果たしてフランス国民はどちらを新しいリーダーとして選ぶのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者の北野幸伯さんが、候補者二人の人物像に迫っています。
フランス大統領選 ロスチャイルド銀行、略奪婚、トップ当選 マクロンさんてどんな人?
皆さんご存知と思いますが、フランス大統領選挙が4月23日、行われました。結果は、
1位 エマニュエル・マクロン前経済相 23.9%
2位 マリーヌ・ルペン国民戦線党首 21.4%
この二人が、5月7日の決戦投票に進みます。
この選挙、「時流的」には、非常に大事です。なぜ? 2016年は、「反グローバリズム」の強い流れが形成された年でした。それで、16年6月、イギリスの国民投票で「ブレグジット」が決まった。11月のアメリカ大統領選挙で「アメリカ第1主義」(=反グローバリズム)を掲げるトランプが勝利した。
この「反グローバリズム」の流れに乗っているのが、極右と呼ばれる「国民戦線」のルペンさんです。彼女は、「大統領になれば、イギリス同様EU離脱の是非を問う国民投票を実施する」と宣言しています。
- ルペンさんが勝つ
- EU離脱の是非を問う国民投票が実施される
- EU離脱派が勝利する
- フランスがEUを離脱し、EUは事実上崩壊
そもそもEUは、ドイツ、フランス、イギリス3大国が引っ張ってきた。イギリスが抜け、フランスが抜ければ、まさしく「EU崩壊」です。こういう「悪夢」が現実になるかもしれない。
EU離脱を目指すマリーヌ・ルペンさんとは?
マリーヌ・ルペンさんは、1968年生まれの48歳。お父さんは、極右政党「国民戦線」創始者のジャン‐マリ・ルペンさんです。彼女は、3女。お父さんのジャン‐マリさん、2002年の大統領選挙では、決選投票まで進んでいます。
マリヌさんは、パリ第2大学を卒業。03年、35歳で「国民戦線」の副党首に選出されました。04年、欧州議会選挙に立候補し、当選(09年、14年再選)。2011年、お父さんの後を継いで、「国民戦線」党首に就任。2012年、大統領選挙で第3位。
2015~16年、強い追い風が彼女に吹いてきました。シリア、イラク、アフガニスタン、リビアなどから大量の難民が欧州に押し寄せてきた。2015年は、100万人をはるかに超える難民がやってきた。
欧州では、「難民を受け入れるにも限度がある!」と反対の声が大きくなってきた。同時に、加盟国に「難民受け入れ」を強制するEUに対する不満も高まってきた。イスラム国(IS)によるテロが多発するようになってきた。
これらは、ブレグジット、トランプ当選の大きな要因でしたが、ルペンさんの支持率を高めることにもなりました。
EUを守る若きエリート・マクロンさん
「移民受入れ反対」
「EU離脱」
を掲げるマリーヌ・ルペンさん。彼女と決選投票で戦うのが、エマニュエル・マクロン前経済相です。この方、なんと39歳(!)という若さ。勝利すれば、「フランス最年少大統領」になるそうです。どういう人なのでしょうか?
マクロンさんは、1977年生まれ。パリ第10大学、パリ政治学院、国立行政学院を卒業。どんだけ勉強してるんだ!? ってことですね。
04年から、フランス財務省財政監察官として勤務。06年、社会党に入党。08年から、Rothschild&Cie銀行に勤務(Rothschild&Cieは、パリ家5代目当主ダヴィッド・ロスチャイルドが1983年に創業した銀行)。
この事実から、ロシアでは、「マクロンは、ロスチャイルド家のお気に入り」といった報道もありました。「ロスチャイルド」という名前が出ると、すぐ「北野はやっぱり陰謀論者だ」などと批判する人が出てきます。一応、AFP=時事4月24日から引用しておきましょう。
アウトサイダーに位置づけられるマクロン氏だが、リーダーを多数輩出しているフランス国立行政学院(ENA)をはじめ複数の高等教育機関で秀才として学び、同国でお決まりのエリートコースを歩んだ経歴も持つ。
マクロン氏は投資銀行の世界に入り、ロスチャイルド(Rothschild)系の銀行で数百万ユーロを稼いだ。
2012年、オランド政権で、大統領府副事務総長。2014年、経済・産業・デジタル大臣に就任。2016年4月、新政党「前進!(En Marche!)」立ち上げ。同8月、経済相辞任。同11月、大統領選への立候補を宣言。そして、今回の第1回投票で、1位を獲得し、決選投票に駒を進めました。
この経歴を見てもわかりますが、マクロンさんは、「バリバリのグローバリストで、国際金融資本のお気に入り」と言えるでしょう。決選投票は、まさに、ナショナリスト・ルペンとグローバリスト・マクロンの対決ですね。
「略奪婚」が、マクロン人気の理由!?
少し、「フランスらしいよな~~~~」と驚いたエピソードに触れておきます。
政治と同様に私生活でもマクロン氏は伝統を破っている。中流家庭出身の演劇愛好家のマクロン氏が、リセ(高校)時代に演劇教員のブリジット・トロニュー(Brigitte Trogneux)さんとの恋に落ちた物語は、仏メディアを虜にした。
高校生のマクロン君は、演劇教師のブリジット先生と恋に落ちた。「マセガキ」ですね。しかも、ブリジットさんは、「大学を卒業したばかりの、初々しい先生」ではありませんでした。
トロニューさんはマクロン氏より25歳年上で、当時すでに3人の子どもを持つ既婚者だった。しかし、その後夫と離婚して2007年にマクロン氏と再婚している。
高校生のマクロン君は、自分の母親でもおかしくない年齢の先生(しかも3人の子持ち)と恋に落ち、「略奪婚」に至った。フランスでは、「これでマクロンの人気が上がった」というのです。お国柄ですね~~。
世界の今後の時流を左右するフランス大統領選挙。結果が楽しみです。
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