騒ぐは日本ばかり。北朝鮮情勢に関する政治家や有識者の雑な議論

 

同じような曖昧さということでは、橋下徹氏もそうです。橋下氏は現在訪韓中で、例えば

ソウルはほんとに普通に一日が動いている。ワシントンや永田町の政治家のメンツのためだけに、この日常を壊してはならない。ワシントンと永田町の政治家はチキンレースからいったん退いて、次を考えるべきだ。言いつけを守らなかった北朝鮮を懲らしめるなんていうのが一番最悪だ。

などという発言には、大いに賛同するのですが、一方で、

今日もソウルの普通の一日が終了。こんな日常を、少数の威勢のイイ奴らによって破壊されることなんてあってはならない。今、朝鮮半島は絶妙な勢力均衡になっていることを実体験している。核0という理想よりも、まず実現すべきは勢力均衡だ。そもそもNPTが時代に合っていない。

とか、

北緯38度線まであともう少しの郊外地域。皆、普通に暮らしている。これが理屈じゃない勢力均衡の現実。一部の犠牲があっても仕方がないという思考をするバカは放っておこう。いかに均衡を作るかに集中しよう。日本も核ヘッジング議論から逃げてはいけない。

などと、非常に曖昧なレトリックを展開しているのは困ります。動揺している日本の一部と比較して、ソウルも38度線に近い郊外も平静だというのは、良い指摘ですし、その背景にあるのは「均衡による抑止」だというのも事実だと思います。ですが、その均衡というのはあくまで通常兵器で達成されているものです。

NPTが時代遅れで、日本も核ヘッジングなどという話になれば、本当にNTP体制は崩壊します。そのことによる、世界の安全保障、文字通りの「安全の保障の悪化は計り知れないものがあると思います。GDP世界第3位、機械工学と原子力工学の技術はトップレベル、そしてプルトニウムを山ほど保有している日本が核武装に舵を切るようなら、安保理5カ国共同の国連軍がすぐに攻めてくるでしょう。

似たような議論ですが、三浦瑠麗さんも「現状維持以外に解はない」という冷静な判断をしつつも、

私は、現状の「対話と圧力」を、「国交回復交渉と軍拡」へとバージョンアップさせるべきと申し上げてきました。もっと言えば、日本も核抑止への当事者となるために非核三原則のうちの「持ち込ませず」を撤回して、米国との核共有を進めるべきと思っています。

などとかなり危なっかしいことを言っています。三浦さんの主張は、徴兵制施行論などもそうですが、表面は威勢が良くても、中身はかなり複雑な中道リアリズムに根ざしているので、面白いといえば面白いのですが、ポリティクスというのは、結局はもっと悪質な単純化を進めるような力学が働くものですから、結局は消費され利用されるような可能性があるわけです。危なっかしいというのはそういうことです。もっとも、「米国との核共有論」の詳細説明は、この後に発表するそうですから、とりあえず、そちらを待つことにしましょう。

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