風邪を引いて病院に行くと、よく処方されるのが抗生物質です。「風邪によく効く」「抗生物質は飲みきらないといけない」と言われた経験がある方もいらっしゃるのでは?果たして、そこに医学的に根拠はあるのでしょうか?メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者でNY在住の医学博士・しんコロさんの元に、メルマガ読者の方から「日本と海外の抗生物質の扱いは違うの?」という質問が寄せられています。米国の医療事情を知るしんコロさんが、わかりやすく解説してくれています。
日本と海外の抗生物質の扱いは違う?
Question
お尋ねしたいのですが、抗生物質についてです。
風邪で病院に行っても抗生物質と咳止め、鼻水の薬などたくさんでてきます。日本と海外での抗生物質の扱いってやっぱり違うのでしょうか。そして出された抗生物質は全てきちんと飲み切らないといけないのよ、と知人に昔から?言われてるので、もうなんともないのに飲んだりします。
とにかく泌尿器科でもなんでもひたすら抗生物質です。海外も同じですか? そしてちょっとどこか痛いかな、くらいでも湿布もでてくるし病院から帰るときは薬袋がすごい量になってしまってます。
話がまとまらなくすみません、抗生物質の存在とそれに対する海外と日本の意識はどうなんでしょう?
しんコロさんの回答
日本では病院に行くと必ず薬が沢山出てきますね。患者としても薬を色々もらうと安心するし、病院側も薬を出した方が儲かるからかもしれませんね。
一般的に抗生物質は細菌(バクテリア)を殺す薬で、特定の感染症では非常に有益である一方、有益な細菌も殺してしまうという副作用があります。また、抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌などが生まれてしまうこともあります。そういった意味で抗生物質は諸刃の剣のような側面があります。
病院で抗生物質が処方される時には、検査の上で特定の感染症に対する抗生物質が出される場合と、「まぁ、この抗生物質でいいだろう」というように「当て勘」で処方される場合があります。風邪で抗生物質が出される場合は、当て勘で出されていることも少なくないと思います。
しかし、症状がバクテリアではなくてウイルス性の場合、バクテリアの二次感染を防ぐという意味以外では抗生物質を処方する意味があまりありません。近年では抗生物質による耐性菌の発生などから、抗生物質をやたらと処方する傾向は少なくなったとは思いますが、小中規模の日本の病院ではもしかしたらそういった傾向もあるかもしれませんね。
アメリカで抗生物質が処方される時は特定の感染症があるか外科処置をした後などが多いですが、風邪程度では抗生物質は出てきません。「タイレノール(アセトアミノフェン)とビタミンC と水を飲んで寝てなさい」と言われることがほとんどです。
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