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【書評】男版ビリギャル。バカヤンキーが米名門大に入れたワケ

大ベストセラーとなり映画化もされた『ビリギャル』の男性版とでも言いましょうか。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介するのは、ヤンキーだった男性が世界ナンバーワンの公立大学へ入学してしまう話。今回も柴田さんの「切れ味」が光ります。

バカヤンキーでも死ぬ気でやれば世界の名門大学で戦える。
鈴木琢也・著 ポプラ社

鈴木琢也『バカヤンキーでも死ぬ気でやれば世界の名門大学で戦える。』を読んだ。27文字使ったトンデモ・タイトルで、332ページの部厚い本だが、会話や改行が多く、行間スカスカの組版だから完読までたいして時間を要しない。文章は版元が標的としたであろう中高生とその親向けだから、相当イージーだ。

帯にこうある。「『いつでも人は変われる!』中学・高校時代、偏差値30台の不良が24歳で一念発起して、世界No.1の公立カリフォルニア大学バークレー校に合格! 世界のインテリたちと闘い人生を変えた話。」ぜんぜん違うだろう。「自分と戦い自分の人生を変えた話だよ。ポプラ社よ、タイトルも怪しいぞ。

だいたい経歴でも「カリフォルニア大学バークレー校に合格」とさらっと書いているが、日本の高校を卒業してストレートで合格した日本人はいないというではないか(伝聞)。筆者はコミュティカレッジ(2年制短大)からの編入である。それでも凄まじい成功ではある。でも、ビミョーにひっかかるんですが。

筆者はいま日本最大のビジネススクールであるグロービスに勤務している。在学中にネットで発表した留学日誌が大変なページビューを稼ぎ、それが版元の目にとまり、スカイプで打ち合わせを続け、一年がかりで完成した。表紙とタイトルは版元が決めたが、内容はすべて本人が取り仕切って仕上げたという。

この本には色んなメッセージを込めたが、そのひとつが「あとがき」にある、と個人サイトで公開している。「これから先も、ぼくは己の道を突き進むつもりです。そして誰とも違う、ユニークな存在になりたい。そうすれば、まわりと協力しながら上手くいくでしょう」って、日本ではかなりビミョーだよ

留学一週間前、父親に「somethingってどーゆー意味だっけ?」と訊く英語力だった。形容詞って何だ? という頭である。コミカレでの壮絶ともいえる日々は非常に興味深い。一日10~14時間の猛勉強。起きている時間のほとんどは授業を受けているか、一人黙々とパソコンか本に向かっている元ヤンキー。

読み所はUCバークレーに提出する願書の課題、パーソナルステイトメントだ。素質や才能など自分をアピールする文章で、最後に「願書では説明しきれなかった、わたしたちに知ってもらいたいことがもしあれば」という問いかけだ。なぜUCバークレーで学びたいのか、偽りなく書く。この文章は見事である。

コミカレで、UCバークレーで、ものすごい猛勉強をしないとついて行けない中での努力は凄絶だ。勉強は積み重ねが必要な長距離走だ。本質的な人の能力はさほど変わらない。努力すれば追いつける。彼は声を大にして言う。「地頭なんて錯覚だ!」。彼が得た最高のものは永遠のモチベーション情熱だった。

UCバークレーに関心のある人には、おすすめしたい本だ。それにしても、この本の作りは残念である。金髪のチャラい男子のビジュアルを、筆者だと思うのが普通だろう。7枚の写真は鈴木琢也ではなくてモデル・俳優の横浜流星である。どうしてこんなバカなことやるんだろう。鈴木琢也もよくOK出したな。

この表紙や章の頭に使われているポートレートを見て、UCバークレーの有効な案内となる、かなりリアリティのある内容を想像するのは不可能だ。知り合いの女子高生に見せたら、わっキモー、やだこれ、と言う。わたしは言いたい。「地頭って本当だ!」。身も蓋もないが「遺伝お金」を抜きに語れない。

「バカヤンキーでもお金がたくさんあって死ぬ気でやれば世界の名門大学に入れるかもしれない。」というのが正しいタイトルです。

編集長 柴田忠男

image by: David Litman / Shutterstock.com

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