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北朝鮮「有事」よりも恐ろしい、南北統一後の面倒くさい朝鮮半島

はっきりとした結末が依然として見えない北朝鮮問題。なかなか解決の糸口が見えないため、「さっさと米中が動いて南北統一してしまえばいいのに」と思われる方も多いかもしれません。アメリカ在住の作家・ジャーナリストで北朝鮮問題にも詳しい冷泉彰彦さんは、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の中で、日本にとっては「南北統一」を急がない方が良く、万が一実現してしまうと「日本の国家存立の危機」の可能性もあると警告しています。

繰り返される北朝鮮のミサイル発射誇示

体制崩壊へのクロックが少しずつ進んでいるのを感じます。日本やアメリカ、あるいは中国の「出方」を伺って手を変え品を変え撃って来ているという見方が一般的ですが、そのような「ゲームを続けなくてはならない国内事情があるとしたら恐ろしいことです。

例えばですが、北朝鮮はサイバー戦争を遂行するために「ハッカー兵士」なるものを養成しているという噂があります。優秀な若者は豪華な暮らしを保証して囲い込んでいるようですが、そうした連中にしても、ネットの世界で暮らしていれば、この体制は「持たない」ということに気づくのに時間はかからないでしょう。

いずれにしても、中の見えないブラックボックスのような体制が、実は紙のように薄い板でできていた箱であり、簡単に潰れてしまうということを考えておかねばならないと思います。そして、万が一混乱のままに統一韓国ができてしまうとしたら、朝鮮半島の状況は深刻なものとなるでしょう。

朝鮮「有事」は恐ろしいですが、その「和平後はもっと恐ろしいのです。

仮に韓国が破綻国家を合併してしまうと、国民は極端な生活水準の低下に直面します。北の住民は多少自由になるでしょうが、自由競争の社会で揺さぶられつつ、差別を受けたり反動化したりするかもしれません。そんな中では、新国家として求心力維持のために日本への挑戦を行う可能性が否定できません。

その場合は日本の国家存立の危機となります。仮にロシアが、そこに介入するようでは、120年前の危機の再現ともなり得ます。何度も申し上げていますが、緩衝国家としての北の存続というのは、日本だけでなく、中国もまたアメリカも、そして韓国自体にも当面は必要なことなのです。

その場合に代替体制としてどのような可能性があるのか、真剣な議論が必要と思います。代替というと、金正恩の除去ということを考えるわけですが、もしかしたら問題は周囲にあって、仮に問題が特定されて除去できるのであれば、ポスト金正恩は金正恩という可能性も排除できません。いずれにしても、この際、米中、日米だけでなく、日中も首脳間での緊密な調整が必要ではないでしょうか。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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