ガラパゴスの悪夢再び。日本車メーカーがテスラに負ける構造上の理由

 

テスラがそれを出来るのは彼らはディーラーを持っておらず全部自前でやっているからなんです。これならどこからも苦情は来ませんから。

それがラストワンマイルの壁がテスラによって壊されたということで、フレームワークとしては既に負けつつあるという理由です。

なんでそこに結びつくのかというと、市価300万円の車があったとします。その金額の内訳がどうなっているのかというと、ザクッと言ってディーラーの粗利が90万、宣伝費が100万、残り110万がマテリアルコストとメーカーの利益なんです。つまり300万の車はトヨタの工場を出た時には210万でディーラーに売られていて、それでもメーカーは利益が出ているということです。それに300万という値札が付いて、そこから20万くらいの値引き(これは直接値引くこともあれば、下取り車の価格で調整することもあります)があって消費者が買っているのです。

ということは、テスラが全く同じ性能、製造原価の自動車を作れるようになったら、それはいくらで売るんでしょうか?繰り返しますが、トヨタや日産は210万円で利益が出ているんですよ。それならテスラが作っても210万円で利益が出るということですよね。ところがその車がディーラーの店頭に並ぶと300万の値札になるわけです。全く同じ製造原価の自動車が、片や300万片や210万ならどちらを買いますか?という話になるんです。

テスラが値段を300万にするのなら、その分もっと原価を上げられるわけですから、魅力が高まるわけですよね。そんな場合はどちらを買いますか?

そして問題は、トヨタや日産はこの車を210万円で売ることが出来ないということなんです。なぜならば、ディーラーが存在するからです。この構図を壊すには、ディーラに売らず、メーカーが自分で消費者に売るしかないんですが、それはディーラーにケンカを売ることに他なりません。もう君たちは用無しだから、後は我々が直接消費者の相手をするから、と言えるメーカーは何社あるんでしょうか。でもそれが言えないのであれば、テスラとの競争には勝てないのです。

そんなことが出来るくらいなら、とっくの昔にカーナビの地図更新をメーカーがおカネを取ってやっていますって。件の役員が言うように、今すぐにでも出来る技術的基盤はあるんですから。そんなことすら、ディーラーの顔色を窺って出来ないメーカーが、消費者に直販なんて出来るワケがないんです。

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