今、SNS上で「困ったクレーマー」についての投稿が多くの方の共感を得ています。今回の無料メルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』では、著者でクレーム対応のプロである奥村渉さんが実際にTwitterで注目を集めているエントリーを2つ取り上げ、「悪質クレーム」の見極め方と対処方法についてわかりやすく解説しています。
ネットの記事を参考にする方法
最近ネットには、多くの、「困った人から受けたクレーム」の記事が増えているように思います。なかでも、とくに面白かったのが、Twitterユーザー、魚屋さん@祝!!ガタガール復活!!さん(@Love_marinelife)の投稿です。
客「解凍のマグロからアニサキス這い出て来たじゃないのどうしてくれるのよ食べられないじゃない(# ゜Д゜)」
魚屋「えっ!?-60℃の冷凍状態からアニサキスが復活したんですか研究機関に持ち込みたいので買わせてくださいお願いします」
これ以降電話はかかってきませんでした
— 魚屋さん@祝!!ガタガール復活!! (@Love_marinelife) 2017年5月15日
投稿者は魚屋さんです。
客「解凍のマグロからアニサキス這い出て来たじゃないのどうしてくれるのよ食べられないじゃない(# ゜Д゜)」
魚屋「えっ!? -60℃の冷凍状態からアニサキスが復活したんですか研究機関に持ち込みたいので買わせてくださいお願いします」
これ以降電話はかかってきませんでした
という、まるで落語のような内容です。
本日現在、なんと2万を超えるリツイート、1万7千以上のいいねがつく人気記事になっています。
もう一つ、同じくTwitterユーザーの、狸谷さん(@akatsuki405)の投稿も、表現はマンガなのでコミカルですが、やはりクレーマーに関するものです。
個人情報丸出しの汚客様ってわりといます。 pic.twitter.com/tJnZ1KnGCj
— 狸谷 (@akatsuki405) 2017年5月3日
こちらはさらにすごくて、本日現在、31,350超のリツイート、24,370以上のいいねがついてます。
舞台は、「レジが3台しか開いてない」という描写から、おそらくスーパーでしょう。レジ係に向かって、「メシなんか行くなよレジ開けて打てよ」というスーツを着た客。「お前らは客優先を考えろ」という、理不尽な苦情を聞き流しながら、レジ係はレジを開けて、数分後に同僚と話します。なんと、このクレーマーは、会社のネームプレートを下げたままで、会社から名前から、すべて素性がバレていた、というオチです。
どちらの話も、Twitterの投稿なので、事実かどうかの信ぴょう性はわかりません。ご存知の方も多いかもしれませんが、Twitterの投稿には、いいねやリツイート欲しさに、さも本当のようにウソを書く人がいます。「嘘松」ということばがあるくらい、ウソが当たり前なんですね。
ですが、それを踏まえても、多くの人が関心をもって、このような記事を読んでいます。そして、仮にウソであったとしても、本当に「ありそう」な話は勉強になります。その視点で、この二つの投稿を見てみます。
一つ目の話は、おそらくワイドショーか何かで、「アニサキス」を見た暇な主婦が、「困らせてやろう」か「あわよくば一品もらおう」と、電話をかけてきたケースでしょう。
2015年には、「『パンに髪の毛が入っていた』などと電話でうそのクレームをつけ、パン店などから現金や代替品をだまし取った」という女の事件がありましたので、かなり似ていますね。わたしもこの内容の記事を書きました。
第148号 ● 詐欺クレーマー対策を考える
第164号には続報も載せました。
今回は、アニサキスに詳しい魚屋さんだったので、たまたまぐうの音も出ないほど、クレーマーをやり込めることができました。でも、鮮魚担当が帰った後の、スーパーの店長さんだったら、どうだったのか。おそらくこんな対応はできず、買ってもいない商品を返金、そのうえ、下手したらお詫びの品をもって、頭を下げに行かされたかもしれません。
しかし、悪意をもって接してくる相手には、以下の3つを頭に入れて対応すれば、いくら特殊なことを言われても怖くありません。
初期段階での悪質クレームの見極め方3つ
- 製品・サービスに問題や落ち度があるか
- 損害が発生しているのか
- 損害と要求には関連性があるか
製品に落ち度はあるか
→ない:冷凍すれば、アニサキスは死ぬから
もし、これを知らなくても、
損害が発生しているか
→ない:加熱すれば食べられます
アニサキスが這い出してきて「食べられない」というのは、
- キャベツに虫がついている
- 枝豆に虫がいた
から「食べられない」と同じで、単なる「気持ち悪い」という主観です。
損害と要求には関連性があるか
→ない:「どうしてくれるのよ」は要求ではない
「どうしてくれる?」については、「加熱して食べてください」と言えば良いのです。それでも、どうしてもいやだと言うなら、「弊社の返品交換ポリシーに従って、しかるべき手続きの上で返品交換します」と言えば良いですね。現物、レシート、住所氏名、さらに来店を必要にすれば、嘘なら来られません。
なお、「悪質クレームの見極め方」は、詳しくまとめた無料教材を配布中です。まだお持ちでない方は、以下のURLからDLできます。
二つ目の話は、理不尽なクレームをつける側、つまり、クレーマーは、感情的に動く人が多いという、良い実例です。そして、感情的に動く人は、理性的な判断ができず、「これをしたらどうなるだろう」という想像力が欠如しているのです。目の前の相手が、「もしかすると自分の客になるかもしれない」ということがわからないんですね。
ここで、わたしたちが、「あー、ネームプレートには気をつけよう」と考えて、外出時にネームプレートを外したり、会社名がわからないようにする、といったことを実践しても、残念ながら本質には近づけません。ここでわたしたちが教訓にしたいのは、
- 部下や同僚に対して、自分の態度はどうか
- 出入りの業者さんに対してはどうか
というところです。良くない態度をとっているほうは、言われるまで気づかないことが多いですが、やられたほうはいつまでも覚えています。
そしてさらに、人事や管理職の方は、「就活中の学生」や、「中途採用に応募してきた人」に対して、理不尽な態度をとっていないか、よく考えてみてください。面接で、明らかに採用する気がない態度や質問をされたり、中途採用なのに、仕事以外のスキルのことでつつかれて不採用になったら、面接をしに来た人は、その会社のことをどう思うでしょうか。
間違いなく、その会社の製品やサービスは、よほどでなければ使わなくなりますし、人事がクソだったわー、部長がクソで採用されなくてよかったわーなど、友達くらいまでには言いふらすでしょう。
少なくとも、応募してきた時点では、好意を持っているはずの人です。それを、わざわざ敵に回して、さらに憎まれるのは、極めて愚かな行為です。
最近はTwitterやSNSだけでなく、就職者向けの口コミサイトも多くあり、しかも売り手市場です。口コミで「採用がクソ」=「会社がクソ」という評判が広がれば、ほしい人材は集まりません。
「この人が取引先になったらどうなるだろう」
「この人の友達が取引先だったらどうしよう」
これすら想像できない人事や管理職がいる会社は、緩慢な自殺をしていることに気づいていいないので、こちらから断るのが正解なのかもしれませんね。
相手が誰であれ、感謝と礼儀をもって接することが、サービスの本質に近づける、唯一の方法なのではないでしょうか。
ネットの面白い記事を読むときには、自分に置き換えたり、背景を考えたりすることで、「これをしたらどうなるだろう」という想像力を養う機会にできます。すると、スマホポチポチの時間が、単なる「時間の無駄遣い」ではなくなりますよ。
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