MAG2 NEWS MENU

年金にもかかる「税金」を、少しでも減らす裏ワザがあった

老後の収入源として大きな割合を占める「年金」。現在、高齢者世帯の半数以上が、公的年金収入のみで生活していると言います。が、そんな年金にもかかってくるのが税金。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、「扶養親族等申告書」をきちんと提出して「税金をお得にする方法」を、わかりやすく解説してくださっています。

公的年金といえど税金はかかる。でも必要な手続きをちゃんとやればそんなに税金かからない

公的年金は老後の収入源としては非常に大切なものであります。高齢者世帯の55%は公的年金収入のみで生活し、また高齢者世帯の収入に占める公的年金の比率は67%ほどになっています。

そんな公的年金ですが、一定額以上の金額を貰う人は税金がかかります。日本年金機構からの年金であれば65歳未満は108万円以上65歳以上の人は158万円以上だと税金がかかる為、毎年10月下旬に送られてくる扶養親族等申告書を12月1日(大体毎年この日)までに日本年金機構に到着するように提出しないといけません。

課税される年に65歳以上か未満かどうかは課税される年で判断します。例えば今年10月に扶養親族等申告書が送られてくる場合、源泉徴収は翌年の平成30年からの年金からですが、平成31年1月1日に誕生日が来る昭和29年1月1日生まれの人も65歳に含むため、この場合は108万円ではなく、158万円基準になります。

いつも年齢の話をする場合に言うのですが、年齢は誕生日の前日に到達するからです。昭和29年1月1日生まれの人は、平成30年12月31日に65歳を迎える(平成30年中に65歳になる)。だから、平成31年1月1日に65歳の誕生日を迎える昭和29年1月1日生まれの人も158万円基準。

この扶養親族等申告書を出す事で翌年の年金から源泉徴収される所得税が決まる。

なお、対象者にとって毎年提出が必要なこの扶養親族等申告書を出せば、年金の基礎控除等が使えるからそんなに所得税は引かれない。

扶養親族等申告書による各種控除や源泉徴収税額計算(日本年金機構)

ちなみに遺族年金や障害年金は非課税

というわけで、扶養親族等申告書を出すか出さないかでどのくらい源泉徴収税額が違うのか見てみましょう。というわけで事例。計算はザックリです(^^;;

1.昭和24年6月28日生まれの男性(今68歳)

例えば、年金は老齢厚生年金130万円。国家公務員共済組合からの退職共済年金30万円。配偶者加給年金38万9,800円。老齢基礎年金75万円。年金総額は273万9,800円。63歳の妻有り(収入は現在老齢厚生年金の40万円のみ)。

この夫は日本年金機構からの年金が158万円を超えてるから、扶養親族等申告書が毎年10月下旬に日本年金機構から届くので提出しないと翌年の2月支払いの年金から源泉徴収される所得税がめちゃくちゃ高くなる

ちなみに、共済組合からの退職共済年金は80万円以上(65歳未満は108万円以上)だと課税対象になり、共済組合からも扶養親族等申告書が送られてきますが、30万円だから送付対象外。よって以下の事例の源泉徴収は日本年金機構からの年金のみとなる。

273万9,800円-退職共済年金30万円=243万9,800円

ア.日本年金機構に扶養親族等申告書を出した場合(年金は2ヶ月分支払うから年金総額を6で割って所得税を出してます。243万9,800円÷6=40万6,633円)。

まず基礎控除→(40万6,633円×25%+6万5,000円×2ヶ月)=10万1,658円+13万円=23万1,658円年金の基礎控除)。

ただし、基礎控除は月最低13万5,000円(65歳未満は9万0,000円)使えるので、2ヶ月分に直すと27万円の基礎控除。こちらの27万円の年金の基礎控除を用いる。

配偶者控除は3万2,500円×2ヶ月=6万5,000円。

偶数月の年金から天引きされている社会保険料を仮に4万円とします。

※参考

65歳以上になると、社会保険料(介護保険料や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料)や個人住民税は原則として年金からの天引きになります(65歳になって特に何もなければ大体半年~1年くらいで天引きが開始になる)。この社会保険料の天引きを年金からの特別徴収といいます。

この事例の男性は複数の種類の年金を受給してますが、天引きされる年金には優先順位があり、この例の男性なら原則として老齢基礎年金から4万円が天引きされる(最優先順位は老齢基礎年金だから)。

天引きされてる社会保険料や個人住民税については年金事務所ではなく市役所に確認してください。年金機構は市役所から依頼されて天引きしてるだけなので、金額の詳細等は年金事務所に問い合わせてもわからない。

で、話を戻しますが、(年金40万6,633円-基礎控除27万円-配偶者控除6万5,000円-社会保険料4万円)×5.105%=1,614円(1円未満切り捨て)。この1,614円が毎回の偶数月支払いの年金から源泉徴収される。

イ.扶養親族等申告書を出してない場合。(年金40万6,633円-社会保険料4万円)の7.6575%が源泉徴収される。扶養親族等申告書を提出されない場合は基礎控除とかその他の各種控除は使えない。だから、(年金40万6,633円-社会保険料4万円)×7.6575%=2万8,074円の所得税が毎回の年金から源泉徴収される。

もし、去年の扶養親族等申告書を「未提出」だった為に今年の年金支払いからこの高い税金が源泉徴収されているなら、今からでもいいので年金機構に扶養親族等申告書を提出しましょう。よく、2月支払い日になると年金振込額がすごく減ってる! って驚かれて原因を探ると大体、扶養親族等申告書の出し忘れだったりするんですよ(^^;;

もしこの事例の男性の場合で今なら2月、4月、6月にそれぞれ2万8,074円の所得税が源泉徴収されていたならば、扶養親族等申告書を提出して各種控除を使って所得税の計算をし直して差額を次以降の年金支払い時、または奇数月に年金振込口座に還付されます。この場合だと2万8,074円×3回=8万4,222円が年金振込口座へ還付。

今の時期に扶養親族等申告書を出しても7月15日還付には間に合わないので、早ければ8月15日支払いの40万6,633円と共に8万4,222円が還付になる。だから年金振込額が49万0,855円になる。8月に間に合わなければ、9月15日に8万4,222円の還付による振込。

ちなみに、何か使える扶養控除を間違っちゃった等で扶養親族等申告書を提出した為に所得税が余分に引かれている場合は、翌年1月1日以降5年以内にいつでも還付申告する事ができます(還付申告は確定申告時期にしないといけないわけじゃない)。ただ、還付申告とか確定申告する時は年金の源泉徴収票が必要です。年金の源泉徴収票は毎年1月下旬に送られてきます。だからそれを待つ必要がありますね。

また、源泉徴収票を紛失した等の場合は年金事務所等で再発行を申請してください。税金の時効の過去5年分の源泉徴収票の再発行は可能

なお、「公的年金の総収入額が400万円以下、かつ、公的年金等以外の所得が20万円以下」なら確定申告する必要はありません。公的年金の総収入額の400万以下というのは、日本年金機構からの年金だけでなく、共済とか基金とか確定拠出年金等の公的年金の部類に入るもの全て。

とはいえ、住民税の申告が必要な場合があるので確定申告時期には必ず市役所に確認してください。まあ、この事例の男性の年金額だと住民税の申告は必要ですね~(^^;;

あと、公的年金を貰っている人が確定申告をする場合はどうなるかを見てみましょう。例えば、先ほどの扶養親族等申告書を出してない人は、毎回年金振込時に2万8,074円もの所得税が源泉徴収される事になりますが、翌年の確定申告(というか還付申告)をして税金の精算をするとします。

となると、この男性の年金総額は、老齢厚生年金130万円+老齢基礎年金75万円+配偶者加給年金38万9,800円+退職共済年金30万円=273万9,800円。この人の年金額から公的年金等控除額を見てみると120万円

国税庁(公的年金等控除)
国税庁(所得控除)

つまり、所得金額は273万9,800円-公的年金等控除120万円=153万9,800円。この所得金額153万9,800円から各種控除を引く

所得金額153万9,800円-基礎控除38万円-配偶者控除38万円-社会保険料控除24万円(4万円×6回)=53万9,800円課税所得)。

よって、納める所得税は53万9,800円×5.105%=2万7,556円。毎回の年金から2万8,074円源泉徴収されてたから、2万8,074円×6回=16万8,444円より2万7,556円低い14万0,880円還付ってこと。

住民税は(所得金額153万9,800円-基礎控除33万円-配偶者控除33万円-社会保険料控除24万円)×10%=6万3,980円所得割)。

あと、均等割5,000円程)の支払いも生じる。住民税については市役所にお問い合わせください。

なお、何か他の所得控除(他に支払った社会保険料、生命保険料控除や地震保険料控除、雑損控除、医療費控除等)は、扶養親族等申告書出しても使えない所得控除なので、確定申告の時に使うしかない。

じゃあ簡単に、次は65歳未満の人の年金でやってみましょう。

2.昭和29年5月10日生まれの女性(今63歳)

今は日本年金機構からの老齢厚生年金110万円の収入のみ(2ヶ月ごとに支払われる年金は18万3,333円)。独身。普通徴収(納付書とか)で社会保険料を毎月8,000円(年間9万6,000円)支払ってるものとします。年金収入が年間108万円以上なので扶養親族等申告書を日本年金機構に提出しないといけない。

この人が扶養親族等申告書をキチンと提出すれば、年金の各種控除が受けられるため源泉徴収税額が低くなる(年金は2ヶ月分支払うから年金総額を6で割って所得税を出してます)。

まず基礎控除→(18万3,333円×25%+6万5,000円×2ヶ月)=17万5,833円

ただし、基礎控除の最低額は月額9万円なので、9万円×2ヶ月=18万円。よって、基礎控除はこちらの最低額の18万円を使う

だから、年金収入18万3,333円-基礎控除18万円=3,333円

※注意

源泉徴収税額を計算される場合に用いる社会保険料は、年金から天引きされる分に限る。65歳未満の年金受給者は年金からは社会保険料が天引きされないので、社会保険料控除を使いたい場合は、確定申告するしかない。3,333円×5.105%=170円が毎回の年金支払いから所得税が源泉徴収される。社会保険料控除として、毎月の社会保険料8,000円×12ヶ月=9万6,000円は翌年の確定申告(還付申告)で使う。

では、扶養親族等申告書を出さなかった場合はどうなるか。この場合は18万3,333円×7.6575%=1万4,038円が毎回の年金支払い時に源泉徴収される。

扶養親族等申告書を出してなかった人の場合で、源泉徴収される年の翌年にもし還付申告をするなら公的年金等控除が用いられる。

所得税→年金収入110万円-公的年金等控除70万円-基礎控除38万円-社会保険料控除9万6,000円=0円(所得税無し)。だから源泉徴収されすぎた所得税1万4,038円×6回=8万4,228円が還付

住民税→110万円-公的年金等控除70万円-基礎控除33万円-社会保険料控除9万6,000円=0円支払う住民税の所得割無し)。

住民税の所得割は支払う額はないですが、均等割(5,000円程)の支払いは出てくるかもしれないので、住民税については市役所に確認してください。

※追記

年金受給者が年の途中で死亡した場合は相続人が相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告が必要になります(ただし上記の公的年金収入が400万円以下、かつ、公的年金以外の他の所得が20万円以下なら準確定申告する必要は無い)。

この時は、準確定申告用の源泉徴収票が必要になりますが、年金事務所に死亡届を出した遺族に自動的に送られてきます。送られてくるまで大体2~3ヶ月かかる(^^;;

ただし、死亡届を出した遺族が配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹以外だったら、年金事務所に準確定申告用の源泉徴収票を申請する必要があります。

なお、年金受給者が亡くなったのが12月16日から翌年の2月14日の間の場合は、準確定申告用の源泉徴収票は送られてきません。通常の翌年1月末に送られてくる通常の源泉徴収票を用います。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け