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高級感なら明朝体、手ごろ感ならゴシック体。ウソのようなフォントの法則

私たちが普段目にしている道路標識や広告に使われているフォント(書体)は、ある法則に則って選ばれているって知ってましたか? 無料メルマガ『プロが教える「美大いらずのデザイン講座」』ではビールのフォントを例にその「決まり」が解説されています。

ゴシック体と明朝体について

どうもkeloです。如何お過ごしでしょうか。

今回は日本語フォントについて書かせていただきます。

フォントについて詳しく書いてほしい、というご要望は結構頂いてます。

フォントは、誰でも日々生活する中で空気のように触れているものなんで、普段は意識することなく使ってます。

でも、いざ自分がデザインする側になって、「さて何のフォントを使おうか?」と考えたりすると、フォントについて自分が何も理解していないことに気がついたりします。

フォントの世界は簡単そうで相当に奥深く、メルマガ1回で、全て説明など出来るわけがありません(もちろん僕も日々勉強中です)。

色々なフォントをご紹介しながらそれぞれの特性を皆さんに覚えてもらうことも大切なんですが、今回は、日本語フォントの基本とも言える、「ゴシック体と明朝体」に絞って書かせてもらいます。

もちろん、ゴシック体の中には数えきれないくらいのゴシック体がありますし、明朝体もしかりです。

ゴシック体とひとくくりにするのが乱暴なことはわかってますが、1つ1つの書体の特徴を知る前に、大きなくくりである「ゴシック体・明朝体」をまず「ど基本」として掴んでから学んだほうが、書体全般についての整理もついて結果的に、フォントに対する理解が深まるはずです。

これから書かせてもらうことは、デザインする中で、こういう時にはゴシック体を使って、こういう時には明朝体を選ぶよね、という基本的なセオリーです。まあ原則・型のようなものです。

この原則自体、どこかの教科書で学んだ記憶はありませんが、長年デザインの世界で行きている中で、「こうなってるはずでしょう」「こうとしか考えられない」とたどり着いた結論のようなものです。

この原則を意識しているか? していないかと言えば、意識していない人のほうが多いようにも思いますが、実は皆、この原則(型)にそったデザインを受け入れてますし、自分でも無意識に原則にそってゴシック体や明朝体を使い分けているんです。

このメルマガでは、そういう原則(型)を明快にしていちからご説明していきたいです。プロであるなら、こういう「デザインの原則」は知っておいたほうがいいでしょうから。

さて、読者の皆さんはゴシック体と明朝体をご存知だと思いますが、一応簡単にそれぞれの書体についてご説明しますと

ゴシック体の特徴:縦横の太さが均等なのがゴシック体の特徴

もちろん、中央の方が細くなっている(ゴナ)等、ゴシック体の中にも色々と種類がありますが、基本は線の幅が等幅ならゴシック体と考えて良いでしょう。

では明朝体は一言で特徴を言うとどんな書体か?

毛筆で書いたような書体で、縦横の大きさは均等ではなく、筆を動かすときの強弱で線幅は太くなったり細くなったりします。

ココらへんは百聞は一件にしかずで、「ゴシック体」「明朝体」と言われて頭に浮かばない方はググってみて下さい。

画像検索で見るとあ、ゴシック体が等幅のフォント全般で、明朝体がいわゆる毛筆描きをベースにしているある意味、装飾的な書体だとわかってもらえるはずです。

さて、ではそれぞれの書体の特徴を意識しながら、ゴシック体がどんな場合に使われているか? 明朝体がどんな場合に使われているか? 考えてみましょう。

何度も言いますが、皆さんはその答えを既に知っているはずです。

しかし多分、ゴシック体はどういう時に使う傾向があるか? 明朝体はどういう時に使う傾向があるか? 聞かれてすらすらと答えられる人はいないでしょう。

是非それを答えられるように、つまり言葉にして説明できるよう意識してもらいたいです。

意識して使うことでデザインに説得力も生まれ完成度が高まることは確かですから。

では、どんな時にゴシック体を使うか? どんな時に明朝体を使うか? その原則を書いてみますね。

【ゴシック体】

【明朝体】

こんな風に分けられます。もちろんこれは僕が勝手に分類したものですし、個々のケースで違ってくるでしょう。

キャンペーンのキャッチコピーで明朝体を使用することもあるでしょう。しかし多分そういう時でも、「三越創業50週年記念キャンペーン」とか、何かかしこまったテーマでのプレミアム感あふれる企画だったり^^何かそれなりの理由があるはずです。

また、キャンペーンポスターのデザインでどうしても明朝体のほうがこのデザインにしっくりくる、美しくまとまる、ということもないとはいえません。

最後は感性が決める! という側面もデザインにはありますから。

それでもこの原則はきちんと意識して知っておくと良いです。「あまり原則(型)に絞られると自由なデザインが出来ない」という人もいますが、型を知らなければ型を壊すこともできないというのも真実です。

感性の赴くままだけでデザインをして、たまたま良い物が出来たとしても再現出来ないのであれば、プロとは言えません(再現性ってとっても大事です)。

話をゴシック体・明朝体に戻しますね。もう一度、ゴシック体・明朝体を使うときの、原則を振り返ってみましょう。

【ゴシック体】

【明朝体】

これらを実際のデザインを見ながら理解してもらいたいと思い幾つかの例を書かせてもらいます。

ビールや発泡酒の広告を元に説明させてもらいますね。例えば、プレミアム系のビールがそれぞれビール会社から発売されていますが、各会社のサイトを見てもらえばわかる通り、全て明朝体がメインの書体で使われています。

高級感を出そうとする時には、まず明朝体が使われるケースが多いです。

プレミアム・モルツ(サントリービール)

ドライ・プレミアム(アサヒビール)

一番搾りプレミアム(キリンビール)

ほとんど全て明朝体を使い、プレミアム感・高級感を表しています。

これに対し、発泡酒は基本お安いわけなんでゴシック体が主流で下記のようなってます。

キリン淡麗生(キリンビール)

のどごし生(キリンビール)

アサヒオフ(アサヒビール)

ほとんどゴシック体が使われています。こうして見比べてみれば、大衆的なお値段=ゴシック体高級感=明朝体という原則を表す図式が見えてくるはずです。

ただ、最近ビール・発泡酒の業界事情では、発泡酒がそれぞれ出揃って、発泡酒の中でプレミアム感・高級感を出したものが多く出てきたことで、発泡酒=ゴシック体と必ずしもなっていない広告も増えてきています。

「発泡酒が安い」という事が完全に世間に認知されて当然の事実になってるので、数年前のように、「発泡酒」が「ビール」に比べこんなに安いですよ! とあまり訴えなくてもよくなってきて、その発泡酒の中で「リッチな泡」とか「プレミアムなコク」だとか強調するために明朝体が使われるケースも出てきたりします。

例えば発泡酒の中で「クリアアサヒ」という商品がありますが、この商品郡の中で、よりリッチである「プライムリッチ」という商品も発売されています。

クリアアサヒ プライムリッチ(アサヒビール)

そちらのサイトを見ていくと、発泡酒だけど「大麦20%アップ「アルコール6%」と共に最高級ということを「明朝体」で書いていてやはり「高級感」や「プレミアム感(特別感)」を出そうとするときは「明朝体」がほぼ使われているな? と理解してもらえるかと思います。

まあどちらにしろ、「高級感・プレミアム感」を出したいときに明朝体のフォントが選ばれ、「安さ・お得感」を出したいとき、ゴシック体のフォントが選ばれている、ココらへんは上に上げた広告デザインのビジュアルをざーっと並べて見てもらうだけでもよく分かるかと思います。

もう一度、ゴシック体をどんな時に使うか? 明朝体をどんな時に使うか?の原則について書かせてもらいます。

【ゴシック体】

【明朝体】

こういう視点で、街にあふれるデザインを見ていってください。基本的にはこの原則にそってフォントを選んでいることに気がつくはずです。

是非、巷のデザインのテーマをゴシック体・明朝体との使い方から考えて解読してみてください。

長くなりました。最後まで読んでいただいて有難うございました。

kelo

image by: Shutterstock

 

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