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なぜ自転車の「危険運転」に、警察は無力なのか?

好評だった前回の「増える暴走自転車。現役警官に聞いた「自転車取り締まり」のウラ話」に続き、メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役警察官へ「自転車の取り締まり」に関する裏話を聞く当シリーズ。今回は、自転車の危険運転などで2回違反すると強制的に受けさせられるという自転車運転者講習について。その受講料や受講時間数など、「地獄の講習」の実態を明かしています。

軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その3

Tさん:自転車に対して道路交通法が改正された時に署内の面々から、本当に自転車へ違反キップを切るつもりなんですか?との意見は沢山挙がりました。正直私は疑心暗鬼だったのも事実です。上からは、法改正後っていうのは暫く民間人からの監視もあるので、厳重注意だけは怠るなとは言われました。私の在籍している警察署だけかもしれないですが、違反キップを切るような行動は率先されていませんでしたね。ただ世間の目もあるので違反している自転車がいたら見過ごすのだけはダメだと強く言われてましたから、法改正から3, 4ヶ月ぐらいは細かく口頭で厳重注意だけしかしてませんでした。

吉田:なんか納得いかないですねぇ。クルマやバイクが例えば一方通行を逆走しても厳重注意で終わることなんか、なかなかないですし、歩行者からしたら警察官は自転車の違反には甘いって思われかねないですよ!

Tさん:私の昔いた警察署は厳しく自転車を罰しているって聞きましたけど、結局は警察署長次第にもなったりしますから難しいところです。しかし、違反キップは切りませんが、危険運転している自転車に対しては厳しく対応していますよ。

吉田:例えばどんな感じでですか?

Tさん:自転車指導警告カードですね。サッカーで言うところのイエローカードみたいな感じで厳重注意に値するべく私たちの署内で作ったチラシと一緒に渡してました。チラシには自転車で運転している時には何が違反なのかとしっかり分かりやすく手ほどきできるよう書き込んでまして、この自分らで作ったチラシは基本14歳未満の少年少女らが違反している際に渡してました。自転車指導警告カードは対象年齢が14歳以上になりますので、絵で説明すれば小学生でも違反が分かりやすく判断してくれるかなぁっていうのが目的です。そんな目的でチラシを作ったんですが、14歳以上の自転車運転する方々にも渡さなければいけないほど細かい違反が多かったのであっという間にチラシはなくなりました(苦笑)。

吉田:そこまで一生懸命注意勧告しているのにも関わらず、自転車へ違反キップを切らない警察署もあったんですね!

Tさん:そのチラシも地元の自治体関係者の方々がボランティアで作ってくれたものでしたので、自転車の交通事故抑止を目的に街の交通安全祈願があったかと思います。法改正直後というのは勢いがありますからねぇ。

吉田:僕は自転車に乗らないので、勉強不足でわかりかねるのですが、自転車指導警告カードをもらった場合処分はどうなるのですか?

Tさん:違反現場でまず警察官から警告を受けます。そしてどのような違反行為をしたのかチェックが入った警告カードを受け取らなければなりません逃亡の気配を感じなければ、特に何もないということでその場で処理は終了になります。

吉田:うーん、甘いですね(笑)。反則金がないというのは反省度合が希薄になるので、きっと自転車での交通違反を繰り返しますよ。自転車運転者講習を受けさせるぐらいしないと絶対反省しないはずです。

Tさん:そうなんですよね。この警告カードを受け取っただけでは自転車運転者講習を絶対に受けなければならないわけじゃないんです。3年以内に2回以上の違反や交通事故を起こした場合じゃないと自転車運転者講習の対象にならないのです。これは私も甘いと思います。この警告カードが通常での取り締まりで使われていますので、ペナルティーは2回まで大丈夫という執行猶予みたいなものがどうにも解せないんです。当然、前科も付くわけではないですが、警察署の記録にはしっかり残りますのでそれだけは自転車乗りの方々は理解しておいたほうがいいです。

吉田:ちなみにその講習っていうのは当然無料ではないですよ……ね(笑)?

Tさん:はい、もちろん(笑)。3時間という長時間に渡る講習を5700円もわざわざ支払って受けなければなりません。しかも、手紙が届いてから3ヶ月以内に受けなければなりません。

吉田:へー、高いっすね。5700円って(苦笑)。その講習を無視した場合にも当然ペナルティーもあるんですよね?

Tさん:はい。受講命令に従わなかった場合は……5万円以下の罰金になります。

吉田:もう講習受けるのは強制じゃないですか!

Tさん:そりゃそうですよぉ。これぐらいのペナルティーを与えないと、反省してくれないじゃないですか。

吉田:まぁそうですけどね。それだったら道路交通法違反として違反キップ切られて反則金支払ったほうが時間の無駄遣いにならないし、講習受けるほうが苦痛極まりないと思いますね。軽車両は点数制度ないから反則金払うほうが全然いい!

Tさん:それ……講習受けた方々がみんな吉田さんと同じことおっしゃいます(苦笑)。その軽車両は点数制度がないからこそ、このような講習受講制度を積極的に展開させることで、何度も自転車で違反していた人を反省させられるわけです。”つい、うっかりして”というのは1回までです。2回違反したら5700円を支払ってまで受けなければならない3時間の苦痛……いや、苦行というほうが正しいでしょうか。長時間の講習を受けなければならないペナルティーが待っているってことなんですね。

吉田:実際に違反キップ切られた場合はどうなるんですか?

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image by: Shutterstock

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私を知る方の多くは「ビデオゲーム関係に強い映画人」なるマスメディア人的イメージが定着してますが、パーキングメーターが59分までならば厳密的に路上駐車が未納状態で可能という事実を2015年に公表したことで環境が一変。以降多くの相談事や取材申請等話を伺いたいとのリクエストが多数来まして、少しでも人助けができるならばと思い、自称・交通ジャーナリストの肩書で有料メルマガへこの度参戦させて頂くことになりました。運転者への有益情報や会員の方々から募った質問を代表して警察へ聞きに行ったり等、お得なネタ盛り沢山!

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