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渡る世間はクレーマーばかり。企業のSNS炎上を回避する秘策とは?

国内外を問わず、企業に執拗に絡みつくクレーマー。近年はSNSなどを利用して主張を押し通そうとするなど、その「暴挙」はとどまることを知りません。今回の無料メルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』では著者でクレーム対応のプロである奥村渉さんが、海外のとある小売チェーンのSNS炎上騒動を紹介しつつ、炎上自体が好ましくない国内において「事態を沈静化させる模範解答例」を記しています。

すべてのお客さまが満足する応対は存在しない

ターゲット・コーポレーション」(以下ターゲット)というアメリカの小売りチェーンが、おもちゃコーナーを性別で区別することをやめたそうです。すると、この「暴挙」に激怒した、多くの消費者が、ターゲットのFacebookに、苦情コメントを書き込みました。

ところが、ターゲットの担当者は、これらの苦情に対し、「毒たっぷりに回答した」というのです。

米大手スーパー、性に関するクレームに毒舌すぎる対応(フロントロウ)

詳細はリンク先でご確認いただくとして、やり取りの概要は、以下のとおりです。

消費者「おもちゃの性別を排除するなんて、バイブルの誓いに反します」

ターゲット「お客様、バイブルの何章に『男の子はバービー人形で遊んではいけない』と書いてあるのでしょうか?」

消費者「性別で区別しないおもちゃコーナーを設置するなんて、80%の客は去っていきます」

ターゲット「お客様は、甘いものが足りていないようですね」

消費者「(…長文の苦情…)」

ターゲット「大変申し訳ありませんが、もう少し文章を短くしていただけますでしょうか? 文句にしては長すぎて読み切れません」

まるで、煽っているかのような、かなり辛辣な返信ですね。

わたしはターゲットについてまったく知らなかったので、少し調べてみました。Wikipediaによると、ターゲットは、アメリカで、売上高第5位の小売業者です。かなり大きいですね。

ターゲット・コーポレーション(Wikipedia)

念のためソースを確認しようと、ターゲットのFacebookページを1年前まで遡ってみたのですが、該当する投稿は見当たりません。色々探してみたところ、どうや2年前のCNNに、それらしきニュースを見つけました。

米ターゲット、売り場の性別表示撤廃へ 子ども用玩具など(CNN)

このニュースの日付を頼りに、あらためてFacebookを遡り、ようやく見つけた該当ページです。

● Facebook @target

賛成派、反対派それぞれが、かなり激しく自論を展開し、争っているようですね。

ターゲットは、回答によって、「自社の方針に合わない人に対しては、合わせたり謝ったりしない」という方向性を、はっきりと示しています。むしろ、自分の考えを押し付ける人は、切り捨てても構わないという、強い決意まで見えてきます。

でも、もし、日本のスーパーが同じようなことをして消費者からの強い反対にあったら、ターゲットのような対応が果たしてできるのでしょうか。

わたしは、自分の主義主張と異なるものを、無理やり「直させよう」とする意見は、「悪質クレーム」だと考えます。

悪質クレームの見極め方

これらに関係なく、わたしの考え方と違うから、直せ(元に戻せ)という意見には、じつは、耳を貸す必要はありません。さらに、もし耳を貸してしまうと、妥協点はありませんので、

必ずこのどちらかになります。とんでもなく大切な相手で、利益の大半を依存しているなら、直してもいいかもしれません。しかし、単なる一消費者であれば、「クレーマー」として扱い、できるだけ関わる時間を短くしたほうがいいでしょう。なぜなら、言うなりに直しても、ずっと使ってもらえるとは限りません。しかも、こういった人たちは、一度言うなりになった相手には、氣に入らなことがあると、何度でも同じことを繰り返すからです。

このような常套句を使ってくるかもしれませんが、この程度の人の意見を聞くのは同じような考え方の人たちなので、気にする必要はまったくありません。

ところで、わたしがこの話を聞いて、思い出したのが、明治の「ザ・チョコレート」です。

明治ザ・チョコレート

シンプルなカラーとカカオのイラストで、洗練されたデザインになっています。2017年3月のニュースでは、予定していた販売計画の2倍以上のペースで、なんと7カ月で2,000万個超(!)を売り上げました。

「このパッケージでは中身がわからない。売れるはずがない」という、上からの厳しい意見に対して、「あなたの年代がターゲットではない」などと反論して、販売にこぎつけたんだそうです。

明治ザ・チョコレート開発裏話がネットで話題――画期的な商品の開発には社内の風通しのよさが欠かせない(BLOGOS)

ダジャレではないですが、方針を理解できないターゲットには売るつもりがないという明治と、方針に文句を言うくらいなら買わなくていいというターゲットに、考え方の違いはありません。客を選ぶのが売る前なのか後なのかの違いだけです。

クレームが絶対になくならないように、すべてのお客さまが満足することも、ぜったいにあり得ません。つまり、売る側は、大切にしたいお客さまを、精一杯大切にすることだけを考え、合わない客に労力を割く必要はまったくないのです。

ただ、日本では、ターゲットのような対応は、マスコミの格好の餌食になります。そこで、炎上しないための、模範解答例です。

わたくしどもは、お客さまの信仰、思想の自由を、最大限尊重いたしております。また、正しい方法で頂戴したご意見は、すべて担当者が拝読いたします。しかしながら、すべてのご意見に対して、必ずしも対応することを、お約束するものではございません。ご意見をくださったことに感謝いたします。

かっこを除けば、137文字なので、Twitterでも使えますね。これらを送った後も、なおしつこければ、対応すると、却って喜びますので、無視すればいいだけです。

すべてのお客さまが満足する応対は存在しない。

いちばん大切にすべきものは何なのか、考えるきっかけにしてくだされば幸甚です。

image by: Shutterstock.com

『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』

『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』

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有名企業、10数社のカスタマーセンターで身に着けた、クレーム対応のノウハウを、無料で、惜しみなく教えます。クレームのケーススタディ、クレームで自分を削らない方法、役に立つフレーズ、使ってはいけないことば、などなど、対応で役に立つことはもちろん、時事ネタや知っているようで知らなかった話を、詳しく、できるだけ面白くお伝えします。

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