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【書評】米中が激突なら「戦場」の日本に、いま必要なこと

北朝鮮問題や南シナ海等を巡り、互いに牽制し合う米中。両国の軍事衝突は果たしてあり得ることなのでしょうか。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが今回紹介しているのは、元自衛隊陸将が米中の激突を冷静に分析し、日本が今後進むべき道を提示した1冊です。

米中は朝鮮半島で激突する
福山隆・著 ビジネス社

福山隆『米中は朝鮮半島で激突する』を読んだ。朝鮮半島がいよいよ危なくなってきた。日本国民の生命が脅威にさらされている。この本では米中衝突が高まるリスクを分析し、日本国民の生命と財産の損害を局限するための方策を、旧弊に囚われず真剣に考える。著者は元陸将である。

福山は二段階で自主防衛体制を強化すべきだという。第一段階は、米国が日本を見捨てるというシナリオを念頭に、米軍を日本防衛のために引きとどめる観点で論じる。日米安保の「片務的」状態をできる限り解消し、努めて「双務的」な状態に近づける。第二段階は、日本の自主防衛体制の強化。日本のみで最小限、自主防衛が国防対策を構築することを目指す。核武装も想定している。

これにより、米中激突に際して、日本が望まない場合には米軍と間合いをとる(中立宣言など)ための余裕が生まれる。平時には中国に対する抑止力として日米同盟・安保条約を堅持する必要があるが、有事には米中衝突に巻き込まれないよう、米国と一定の距離を維持する必要がある。著者はこのことを「ジャパン・ディフェンス・パラドックス」と呼ぶ。けっこう狡猾かも。いいね!

リアルに考えよう。米中が激突する場合は、核戦争にエスカレートしないようお互いが「手加減」を加えて戦い、双方の領土・市民を直接攻撃することには慎重になるだろう。その代わり、在日米軍のある日本という「戦場」においては、両国は遠慮会釈なく振る舞うだろう。米軍は家族や軍属を含め、激突以前に日本から逃げ出す。米中が朝鮮半島で激突すると、日本が戦場になる。

中国を相手の本土決戦は絶対に避けなければならない。著者は海空自衛隊を重視し、壱岐・対馬・五島列島ライン、南西諸島ラインの「水際以遠の国防戦略」を採用せよという。これは中国が実施している「接近阻止・領域拒否戦略の日本版である。もちろん開戦となれば、中国の領海・領空はもとより、今後は敵基地に対する攻撃も実施できるようにすべきである。

従来のように「海上に引き続き陸上(内陸部)でも戦う」というやり方から、「海上(それに連動する空中を含む)で敵を撃破して、敵を水際以遠で阻止することを目標として、内陸部で行う戦闘国土戦は原則として止める」というものだ。この構想・戦略を実行する上で南西諸島の価値は絶大である。

この戦略により南西諸島を確保し続けることができれば、中国の「接近阻止・領域拒否戦略」が成立しない。さらに南西諸島を活用し、自衛隊の戦力を集中すれば、中国による東シナ海の内海化を阻止する米海軍の戦略に貢献できる。南西諸島は中国の第一列島線突破を阻止するうえで重要な防柵になる。

日本は戦後70年近くも安全保障の大部分を米国に委ねてきた。そのせいで、まるで「茹でガエル」が加熱されるのを感じないよう危機意識が鈍くなってしまった。だがトランプ登場で、わが国を取り巻く安保環境が怪しくなってきた。「そのためには『米国に国防を依存する体制から脱却し、『自らの国は自ら守る』という強い意志をもって、日本の国防体制を『回天』する必要がある」。

「日本は究極的には憲法改正を行ない、自衛隊を国際法で定める軍事組織にし、集団的自衛権を列国並みに保持して自主防衛体制構築を目指すべきである」。戦略家ルトワックの「平和を欲すれば戦争に備えよ」という逆説的論理に従え。今の日本は、現実を見ずに「平和を欲すればただ平和を唱えよ」の愚か者ばかりだが。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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