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同じものを売るな。不毛な値引き合戦のドロ沼から抜け出す方法

安売りすれば一時的にお客さんは集まってきますが、確実に企業の体力も奪われていくのは自明の理。特に小売業にとって、価格競争ほど辛い戦いはありません。そんな値引き商戦に参戦せずとも売上を確保できる方法はあるのでしょうか。無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で現役コンサルタントの梅本泰則さんが、定価の付かない「技術」や「ソフト」を武器にした、「商品を定価で売ってもお客様がついてくる戦術」を紹介しています。

値引き競争を避ける方法

小売店さんに向けてセミナーをしますと、よくこんな質問をされます。

「値引きをして売りたくはないのですが、周りの店が値引きをされるのでどうしても値引きをせざるをえません。どうしたらいいでしょうか?」

切実な問題ですね。これは、スポーツ業界だけでなくスーパー、家電店、玩具店、ドラッグストアなど多くの業界における問題でしょう。私は、この質問にはこう答えることにしています。

「同じ商品を売っているのなら、お客様は値段の安い方に行くに違いありません。ですから、値引き競争をしないためには同じものを売らないようにすることです」

とはいえ、そう返事をされても、すぐに「そうだ!」と納得されるお店はいません。そりゃあ、そうです。「実際に商売をしてもいないコンサルタントに現場のことが分かるのか? あなたの言っていることは、空論だ」と思っておられるかもしれません。

では、「同じものを売らない」とは、どういうことなのでしょう。それは後ほどお話をすることにして、その前にお聞きします。

値引きをすることは、良いことでしょうか、悪いことでしょうか?

値引きは良いか悪いか

松下幸之助さんが、こう言っています。

「適正妥当な利益を得て売ってもなおかつ他より安く売れるという場合にはじめて安く売るのである」

つまり、正しい利益も出ないのに安く売ってはいけないということです。その通りだと思います。それを考えた場合、あなたのお店の商品は、値引きをしてもなお利益が出るでしょうか。そこが問題です。

もちろん、粗利益は出るでしょう。大切なことは、それがお店にとっての適正な利益かどうかということです。

ちょっと計算してみましょう。単独店におけるスポーツ用品の仕入れ原価は、およそ定価の60~65%です。それを2割引で売れば、粗利率は19~25%です。小売業としては、せめて粗利率30~35%は欲しいところです。ということは、そもそも商品を値引きできるような価格構造になっていないことが分かります。

値引き販売をすれば、お客様には喜んでもらえるでしょう。しかし、従業員の皆さんに十分な給与を払えません。ましてや、広告宣伝や売り場改装に投資できる余裕はなくなります。これでは、正しい経営とは言えません。

利益が十分ではありませんから、またさらに値引き販売をして量を売ろうとします。悪循環ですね。

それでもなお、そのお店に利益が出ているとすれば経営のどこかで無理をしています。例えば、従業員の人たちの労働時間が長くなるとか、仕入先に返品を押し付けるとか、といったようなことです。

では、そんな値引き販売をしなくてもよい方法があるのでしょうか?

値引きをしないで売る方法

値引きの質問をされたお店には、こう答えておきました。

「たとえ同じ商品を扱っていたにしても、売り方によっては違う商品になります。また、値引きをすればそれだけ利益が削られます。それならば、値引きをしなくても利益のとれる商品を多くそろえられてはいかがでしょう」

この返事を聞いたお店が納得されたかどうかは分かりません。しかし、「売り方」や「値引きをしなくてもいい商品」にピンとくればしめたものです。

前号、前々号では、卓球専門店やバドミントン専門店のお話をしました。そこで分かったことは、スポーツショップは、商品と一緒に修理や加工の技術が販売できるということでした。しかも、この技術には定価がありません

また、「○○教室」とか「○○相談会」といった、お店独自で行うことのできる「ソフト」をつけて販売することができます。そして、その「ソフト」がお客様にとって魅力的ならば商品そのものを定価で売ることもできるのです。言ってみれば、それがお店の強みになります。

確認しておきましょう。価格を安くするのは、小売店にとっては最も安易な戦法です。ですから、どのお店でも出来てしまいます。しかし、そのために利益で首をしめることにもなるのです。一方、「ソフトはどのお店も同じものではありません。そのうえ、利益が出ます。これが、値引き競争から逃れる一つの方法です。

そして、価格だけが売り物のお店では、やがて価格で他のお店にお客さまをとられます。このことだけは、十分に心しておきましょう。

さらに言えば、「商品」は、メーカーさんの多くの人の手によって精魂を込めて作られたものです。そんな大切な商品だからこそ定価で売るのだ、といった気概をもつことも正しい商人の道なのではないでしょうか。

■今日のツボ■

image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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