一時の絶不調から見事に復活した日本マクドナルドですが、その後も次々と新しい戦略を打ち続けています。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者でMBAホルダーの理央周(りおう・めぐる)さんは、自身の現場観察も交えてマック市場戦略の「鍵」を分析し、そこから中小企業が厳しい競争に打ち勝つためのヒントをあぶり出しています。
好調マクドナルドに見る市場攻略戦略
マクドナルドが元気だ。
業績の回復に関しては、以前このメルマガでも紹介したとおりだが、あれ以降も次々と新しい一手を打っている。
マックデリバリー
私のオフィスがある名古屋市の御器所という駅の近くに、マクドナルドの店舗がある。24時間営業だし便利なのだが、近くにありすぎることもあって意外と立ち寄ることがなかった。
先日、その店舗の「マックデリバリー」の案内チラシがポスティングされていた。
読んで字のごとく、自宅までデリバリーするというチラシだ。これまで、ピザや寿司のデリバリーやケータリングのチラシがポストに入っていることはよくあったのだが、マクドナルドのチラシは初めて。
弊社が入居しているオフィスビルはこじんまりした4階建で10社前後が入っている。しかし、周りには飲食店が少ないし、会議などの需要なども見込める。
リアル店舗があるマクドナルドが、デリバリーをやるというのも意外な盲点だと感じる。
マクドナルドのアプリ
これはと思い、久しぶりにマクドナルドのランチに行ってみた。平日のランチタイムを少し過ぎている時間帯で、意外、と言っては失礼だが、満席に近い人気ぶりだった。
ランチタイムに限って、バリューセットが100円引きくらいになっていた。
レジで購入すると、小さいカードを渡され「今、アンケートに答えていただくとクーポンを発行させていただきます」と言われる。
このアンケートに答えるには、マクドナルドのKODOというアプリをダウンロードし、そこからアンケートに回答するという手順になる。
こうすると、翌日から使えるクーポンがダウンロードできるようになるのだ。
マクドナルドの市場攻略法
企業が、市場を攻略する際の戦略の1つに、アンゾフの成長マトリックス、という考え方がある。
横軸を市場の種類とし、左に既存市場と右に新規市場、縦軸を製品の種類とし、上に既存製品と下に新規製品、というマトリックスで考える。
左上の第1象限は、既存市場において既存商品をどう売るか、ここはシェアを獲得するための「浸透戦略」をとる。
マクドナルドのケースでいえば、ランチタイムのお値打ちマックなどが、これにあたる。
右上の第2象限は、新規市場において既存商品をどう売るか、ということで市場開拓をする。新しくマックデリバリーのチラシを私のオフィス近くにポスティングしているのが、こちらに当たる。
左下の第3象限は、既存市場に向けて新規商品をどう売るか、ということで、今マクドナルドが押している、ちょっと高級なプレミアムバーガーのグランシリーズなどがこちらになる。シェイクシャックなどの高級バーガーの、日本市場開拓に対抗しての措置なのであろう。
右下の第4象限は、新市場に向けて、新規市場をどう売るのか、という考え方になる。ここのエリアは「多角化」ということになり、マクドナルドのケースは次回以降で詳しく説明していきたい。
成長マトリックスの考えに即して、マクドナルドの戦略を考えてみたが、状況に応じてこのように、それぞれ異なった戦略をとるべきだ、ということを具現化しているように見える。
中小企業は何をすべきか?
マクドナルドの実施している策と、背景にある戦略思考について言い方を変えると、とても基本に忠実な戦略をとっていると見受けられる。
生活者の思考が多様化し、メディアも細分化してくることにより、企業が打つことができる戦術も種類が増えている。
IoTが世の中に浸透すれば、顧客の要望はどんどん強くなり、企業への期待は深まる。
AIに取って代わられるビジネスも、多く出てくるのが近い将来の姿だろう。
ソーシャルメディアの進化も進み、それにともなって、デバイスも進化する。
企業にとって設備投資の必要性も要求されるし、世界を席巻している、アップル、アマゾン、グーグルのような、メガ企業の寡占に巻き込まれないようにするには、何をすべきか?
このような状況下だからこそ、逆に、マクドナルドのように、原点に戻り、基本的な戦略をベースに、市場に対し何ができるかを考え、素早く実践することが重要なのだ。
ITが進化するに伴って、IoTなどを取り入れることも重要だが、逆にITにできないことを工夫し、実践することは必要なことであろう。
厳しい市場に立ち向かい、常に顧客満足を超える、顧客歓喜を提供できる企業を目指すべきなのだ。
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