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イメージとかなり違う。日本人はまだオランダ人を知らない

オランダと聞いて、多くの人は上の写真のようなイメージを思い浮かべるのではないでしょうか? ところが、メルマガ『蟹瀬誠一の「ニュースを笑え」』の著者で国際ジャーナリストの蟹瀬誠一さんの知る「オランダ人像」は、私たちの想像とはだいぶ異なるようです。オランダ人の長所・短所、さらに日本人がオランダ人から学ぶべき点とは?

オランダってどんな国? オランダ人ってどんな人?

とにかくケチである。成人男子の平均身長が180センチを超えるのに燃費を考えて窮屈な小型車を選び、近場の用事には自転車を使う。グルメもお洒落もしない。旅行にはもっぱらキャンピングカーを使い、目的地ではゴミは落としてもお金は一銭も落とさない。

ここまで読んで「ああ、オランダ人のことだな」とお分かりの方は相当な海外通である。オランダというと日本では風車とチューリップの国というイメージが一般的だが、欧米ではまず倹約家ダッチ・アカウント(和製英語で割り勘の意味)やダッチワイフ(恋人や妻より安上がりな人形で済ます)という言葉もこうした倹約気質が由来である。「オランダ男から名誉や妻を奪うことができても、カネを奪うことは出来ない」なんてことを言う輩さえいるそうだ。

しかしその一方で、被災地・貧困救済などの対外援助活動や環境保護には熱心で、郊外の森にはゴミひとつ落ちていない。言い換えれば、「私」の部分はいたってマイペースだが、公徳心をきちんと持ち合わせているのである。
金が大切だという価値観では共通しているが、ひたすら私利私欲のための奔走し贅沢三昧の六本木ヒルズ族に代表される日本の成金とは一味も二味も違うのだ。

なにしろお金の使い方に明確な優先順位がついている。家や家具など、長持ちし価値が上がるものには資金を費やすが、ファッションや食べ物のようにすぐ消えてしまうものには一切無駄遣いをしない。自分の自由と権利を強く主張するが利己主義ではなく、他人の自由と権利も尊重する。極端な例になるかもしれないが、隣の家に飾り窓の女性やアル中、薬中で生活保護を受けている人が引っ越してきても、彼らには住みたいところで生活する権利があると認めて受け入れるのである。

職場も労働者が快適に働けるように配慮され、残業は罪とみなされる。だが、オランダ企業の競争力が日本企業より劣っているという話は聞かない。労働者保護が行き過ぎているのではと思われるところもあるが、滅私奉公ではなく個人と企業が共栄共存できるシステムを実現していることは間違いない。

教育現場でも子供たちの自主性が尊重されている。先生は生徒にそれは間違っているとは言わない。そうして子供たちの独自性と目的意識を育むのだ。だからオランダ人は身勝手だと英国人は嘆くが、幼い頃から無理やり勉強させられ大学生になった途端に目標を失って遊び呆ける日本の若者よりマシではないか。

オランダでいち早く安楽死が容認されるようになった背景にもこうした自己決定能力重視があるのだ。

しかしオランダがまったく自由放任の国かというとそうではない。

国民は16歳になると課税管理番号制度下に置かれ、北欧顔負けの高税率の納税を義務付けられている。

徹底した社会保障とともに厳しい法規制によって管理が国中に行き届いているのだ。そしてそれを担っているのが汚職政治家不在の“清潔な政治”である。かつて日本は西洋の学術・文化を蘭学として学んだ。「博多どんたく(ゾンダーハ)」や「カッパライ(カーペライ)」「オテンバ(オンテンバール)」などすっかり日本語になってしまったオランダ語もある。今の日本がオランダから学ぶべきは、誰のための企業、国家、政治家なのかという民主主義の原点だろう。それに加えて、超高齢社会で安楽死をどう受け入れるかも重い課題だ。

image by: Shutterstock

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【著者】 蟹瀬誠一 【月額】 ¥1,100/月(税込) 【発行周期】

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