セブン、ローソン、ファミマのいわゆる3強の寡占化が進む中、昨年度の国内全店売上高が7年ぶりの低水準となったコンビニ業界。もちろん各社ともその現状に手をこまねいているわけもなく、次々と新戦略を打ち出してきています。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では著者でMBAホルダーの理央さんが、そんな各社の「固定観念にとらわれずに立て続けられる戦略」を紹介するとともに、すべての業種がコンビニ3社から学ぶべきことについて考察しています。
コンビニ3強に学ぶ市場攻略戦略と水平思考
コンビニエンスストア業界が、新たな局面に向かっている。7月26日付の日経MJのトップ記事に載っていた2016年度のコンビニ調査によると、国内全店売上高は、対前年比3.1%の増と、7年ぶりの低水準。
【明日のMJ】セブンを追え! 日経MJの2016年度のコンビニ調査では、セブンイレブンの売上高シェアが初めて4割を超えました。追う2社の戦略を連載します。明日はまずファミリーマート。ファミチキなどの主力商品を徹底して売り込みます。沢田社長の思いはいかに。コンビニ・フード面です。 pic.twitter.com/esjYcVwezE
— 日経MJ (@nikkeimj) 2017年7月27日
【明日のMJ】お店の真ん中の自動ドアを開くと、真正面から「いらっしゃいませ!」。セブンイレブンは最新型店でレイアウトを大胆に変え、店内を巡る楽しさを演出しました。コンビニ市場に踊り場感も出るなか、各社が見せる「便利の先の進化」は? 2016年度のコンビニ調査を1面で特集します。 pic.twitter.com/E5koM0mWZs
— 日経MJ (@nikkeimj) 2017年7月25日
そんな中で、セブンイレブン、ローソン、ファミマの3強時代になり、この3店舗で9割近いシェアを占め、なかでもセブンイレブンは40%を超えた、とのことだ。ファミリーマートもサークルKを統合し、業界を取り巻く環境も変化している。
業界が変化しているということは、事業のコンセプトも進化させなければ、将来の競争に勝てなくなる。「うちの会社はコンビニエンスストアだから」という固定観念にとらわれず、広く、フレキシブルな発想と、スピードもった対応が必要となる。
コンビニ各社は何をもって変化に対応しているのか?
当該市場の伸びが鈍化し、飽和に近づいていく場合、新規市場に既存商品を当てていく開拓戦略をとるか、既存市場に新規商品を当てる開発戦略をとることが、セオリーになる。
記事にもあるように、シニアの新規顧客層を取り込むために、個食を充実させ、コミュニケーションをとるのが前者で、ローソンがゴディバのスイーツを導入し、既存顧客にアピールするのが後者になる。
各社とも、この攻略戦略を明確に実践している。中でも、食品に限らず、セブンイレブンがシックの使い捨てカミソリ「エクストリーム」を開発し「すぐに使いたい」という自社顧客の需要に対応したり、ファミマがカネボウと開発したセルフ化粧品も、女性の需要に見事に対応している。
ここで特筆したいのが、伸びている女性やシニア市場に対応している点と、「コンビニなのだからシニアの人は来ない」という固定観念にとらわれず、戦略を立てている点にある。
このような視点を踏まえて、ファミマがLINEと組んでのCRMの一環で、「顧客別クーポン」を発行することで、きめ細かく各個のニーズに対応している点など、IT活用での顧客志向が目につく。
こういった新しい一手を打つ際に、大企業においては、意思決定の複雑さからスピードが落ちることも多々あるが、コンビニ3社に関しては、スピード感持って実践していることが見受けられる。
中小企業はコンビニ3社に何を学ぶべきか?
堅調に売り上げを推移させ、企業努力を続けるコンビニ3社に、中小企業は何を学ぶべきか?
まずは、市場の状況を把握し、顧客層と自社製品を整理整頓し、攻略戦略を立案することにある。
コンビニ業界も、数年前までの好調さを持続することが困難になり、ファミマとサークルKの統合により、メガ・コンビニの時代になった。その中で、通常の施策だけでは、当然競争に勝つことができないため、常に市場の先手を打つために、上記のように、新製品を新規市場に向けて出している。
しかし、やたらめったら出せばいいか、というわけではなく、セブンイレブンのように、消費者の目的買いを超える何かを開発するために製品開発をしたり、伸びているシニア層に向けて何ができるのかを試行錯誤して、実践しているのだ。
もう1点は、柔軟な発想での顧客目線を持つこと。
市場が細分化し、ITの進化により、メディアやハードウエアも細分化すると、消費者の志向が多様化し、ロジカルに市場を定義するだけでは、不十分になる。
論理的に、フレームワークを駆使して、考えをまとめる垂直志向に、感覚的、帰納的に、アイディアを出し、企画にしていく水平的アプローチで、垂直志向で除外された、周辺の需要を取り込むことが必須になる。
水平思考の出発点は常に、「顧客ならどうするか」を考え、そのさらに半歩先くらいを提案すること。
顧客満足を超える、顧客歓喜を創出するには、常に顧客視点での観察が必要になるのだ。