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絢爛豪華な北山か、わび・さびの東山か。京都が見せるふたつの顔

京都で人気を二分する、金閣寺と銀閣寺。よく似た名前ながら対照的な特徴を持つ秘密は、建造時の文化の違いにありました。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では著者の英学(はなぶさ がく)さんが、室町時代の京都に栄えた北山文化と東山文化を詳しく紹介しています。

北山文化と東山文化

京都が誇る金閣寺と銀閣寺に代表される室町文化。その二つの建物を象徴する文化をそれぞれ北山文化と東山文化といいます。多くの方が訪れたこともあるであろう金閣寺と銀閣寺が建てられた当時の時代に栄えた文化に着目しようと思います。時代背景などを知ることによって、次に訪れた時に興味深い印象を受けることでしょう。

鎌倉幕府を倒した足利尊氏は、1336(建武3/延元元)年、京都に室町幕府を開きました。幕府は16世紀半ばまで約200年続きました。室町時代は大きく分けて二つの文化が栄えました。ひとつは北山文化でもう一つが東山文化です。どちらも公家文化と武家文化の融合が特徴です。この時代に能、狂言、茶の湯、水墨画など、今に伝わる多くの伝統芸能や芸術が育まれました。

室町時代は地方から多くの武士が上洛し住むようになったことから、都と地方の文化が混じり合います。優美で華やかな公家文化と禅宗の影響を強く受けた質素で力強い武家文化が融合していきます。これこそが今に伝わる日本の美の原点と言われる室町時代に発展した文化なのです。

室町時代の文化は、初期の北山文化と中期の東山文化に大きく分けられます。この2つの文化をそれぞれ象徴する建物が、足利義満の別荘であった金閣寺鹿苑寺)と足利義政が築いた山荘・銀閣寺慈照寺)です。また、新しい住宅様式である書院造りをはじめ、枯山水庭園、能・狂言、茶の湯、生け花、水墨画などが発展しました。今日日本を代表する様々な文化はまさにこの時代に発展したのです。日本人の美意識に多大な影響を与えた室町文化は、時を超えて今に受け継がれているのです。

北山文化

image by: 京都フリー写真素材

北山文化が栄えた時代は室町時代の中で最も華やかな時期でした。北山文化の「北山」は三代将軍足利義満が建てた邸宅・北山殿に由来します。特徴としては、平安時代以来の華麗な貴族様式と中国から伝来した禅宗様式が融合した華やかな文化です。

北山文化を象徴するのはやはり金閣寺でしょう。義満の北山殿の跡地を寺院にしたものが金閣寺です。金閣寺という名前が一般的に知られていますが、正式名所は鹿苑寺金閣で、相国寺の境外寺院という位置づけです。ちなみに相国寺は京都五山の第2位で銀閣寺も境外寺院としています。相国寺は臨済宗のお寺として相当格式の高い寺院ということが伺われます。当時の貴族と庶民の生活にはかなりの隔たりがありました。そのような時代にあれだけ派手な建物を建てたことに人々はどれほど驚いたことでしょう。金閣寺はまさに足利義満の権力の象徴を表しているといっていいかと思います。

北山文化の時代は絵画のジャンルでは水墨画が流行しました。水墨画は禅宗の僧侶が禅の精神を描いたもので、明兆、如拙、周文などが有名です。如拙は相国寺の僧でしたが、退蔵院所蔵の国宝「瓢鮎図(ひょうねんず)」が有名です。芸能に関しては義満の保護を受けて能が流行します。

能楽は別名、猿楽能と呼ばれ観阿弥・世阿弥父子が完成させました。世阿弥はこの時代、能の真髄を書きあわらしたものとして「風姿花伝」を著しています。現在では世界ユネスコ無形文化遺産に登録されています。

東山文化

image by: 京都フリー写真素材

東山文化は三代将軍義満の時代から80年近く経った後に栄えます。この時代は八代将軍義政の時代です。この頃になると義満が描いていた公家中心の文化から武家中心の文化へと変貌を遂げていました。武家様式は庶民の間でも広く受け入れられるようになり、地方にも新しい文化として受け入れられた時代でした。地方に広まった理由としては、応仁の乱によって京都に住んでいた公家や権力者が都から地方に避難し移住したことがあげられます。

東山文化の特徴は、禅宗様式が深まったことで北山文化とは対照的で「わび・さび」を基調とする簡素で幽玄な美が尊重されました。東山文化の名前の由来は、義政が京都市左京区の東山に東山山荘を造営したためです。義政は政治的にはあまり有名ではありませんが、芸術に関する見識は非常に高かったようです。多くの芸術家のパトロンとなり、銀閣寺をはじめ東山文化の形成に大きく貢献しています。

義政が建てた銀閣寺の前身である東山山荘はとても質素で静かなものでした。そこは奥深さに美を見出すといった「わび・さび」の文化の集大成でした。これが銀閣寺の起源となる建物となりました。正式名所は慈照寺観音殿銀閣です。応仁の乱の後造営を始めたので庶民の不満が募り義政のイメージはかなり悪くなりました。全国を巻き込んだ戦乱で人々が疲弊していたにも関わらず思い税や労役を課したので当然ですよね。

義満の時代に発展した水墨画は義政の時代に大成しました。禅僧の雪舟は中国から渡来した水墨画の技法を使って日本風の山水画を大成させています。代表作の有名なものに「四季山水図」や「天橋立図」などがあります。

そして何といっても禅の「わび・さび」の精神を茶に融合させたわび茶が流行しました。四畳半以下の茶室を用いた簡素な茶の湯の形式で、村田珠光によって創始されました。その後安土桃山時代には千利休により大成されています。

室町幕府は臨済宗を保護し、臨済宗の寺院に格をつけるために「五山・十刹の制」を設けました。中国の官寺を参考にしたもので、最上位の五山を中心に様々な文化が流行し、漢詩文学も栄えました。その影響が北山・東山文化に大きく影響していることが伺えます。

※ 過去の参考記事
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いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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