隠蔽工作?いじめ解決前に「第三者委員会」が立ち上がる意味不明

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学校でいじめが起こり、大きな被害を受けた疑いのある生徒がいた場合、第三者委員会なるものが設置されて事実を検証していきます。しかし昨今、その第三者委員会が学校側の立場に寄って立ち、いじめの隠蔽工作に使われる傾向があることが問題になっているようです。今回の無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、そうした第三者委員会の問題点と、解決に向けた取り組みについて解説しています。

第三者委員会を隠蔽工作に使う学校が出始めた

9月で、いじめ防止対策推進法(いじめ防止法)が施行されてから4年になります。学校現場にいじめ防止法はかなり浸透しています。しかしながら、学校の先生方でいじめ防止法を読んでいる方は、まだ多くはないようです。

いじめ防止法によって初めて定められた、「重大事態」への対応については、文科省が「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を作成し、学校現場への啓発をしています。これは、いじめで生命、心身、財産に重大な被害を被った疑いがある場合、あるいは、いじめで相当期間の不登校になったという疑いがある場合には、「重大事態」として、第三者委員会などを設置して事実の検証をするというものです。

この「重大事態」の調査ですが、いじめでお子さんが亡くなったような場合には、学校自らが調査するだけでは不充分ですので、第三者委員会で真相を調査することが重要です。しかし、報道を見る限りでは、第三者委員会が様々な問題を含んでいることがわかります。

仙台市や茨城県取手市のいじめ自殺事件では、被害者遺族が、「教育委員会の付属機関だ」「中立ではない」などとして、第三者委員会の委員の交代や委員会の解散を求めました。横浜市の原発いじめ事件では、第三者委員会が「加害生徒からの事情聴取をしないで結論をだした」ことが判明しています。また、第三者委員会は、月に1回程度しか開かれないので、結論が出るまでに何年もかかるということも問題となっています。

このように第三者委員会が、「学校側」の立場で判断し、被害者に寄り添わない事例が相次いでいます。第三者委員会には、「被害者側が推薦する識者も委員に組み入れることが当然である」としていくべきであると考えます。そういう委員がいれば、第三者委員会が被害者側からの聴き取りもしないというような問題もなくなるはずです。

加えて、第三者委員会が乱立される傾向があるので注意が必要です。近ごろ、私たちのところには、いじめが収まっていないのに第三者委員会が立ち上げられてしまったという相談が相次いでいます。第三者委員会が立ち上げられると、

1 学校は「第三者委員会の判断に従いますので、こちらではなく第三者委員会に話してください」といじめ対処をしなくなる
2 しかも、委員会は1カ月に1回しか開かれないので、結論が出るまで1年も2年もかかり、その間に加害者が卒業してしまうこともある。
3 さらに、学校側が選んだ委員なので、被害者ではなく加害者側の主張を全面的に認めるなどの傾向がある。

など、被害者側にとっては、かえって不利になることが多いのです。

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