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9月から厚生年金が値上がり。支給額がカットされる場合も

9月は、厚生年金に加入して就業している年金受給者の「年金額」が変動するかもしれない月であることをご存知でしょうか。「支給額が変わるってどういうこと?」という方のために、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、事例を出しながらわかりやすく解説してくださっています。

9月から厚生年金保険料率が上限18.3%に上がり、勤労している年金受給者は年金額が変わる場合もある

9月というのは厚生年金保険料率がアップする時期でもあります。そして人によっては、4月、5月、6月の賃金の昇給や降給によって厚生年金保険料率を掛ける賃金(標準報酬月額)が変わる時が9月でもあります。

平成29年9月で厚生年金保険料率は18.182%から18.3%の上限に達します。この保険料率の上限は平成16年改正の時に決められたもので、この上限の範囲で年金給付を行う事に決められました。

なお、平成27年10月に決まった被用者年金一元化により国家公務員共済組合や地方公務員共済組合の厚生年金保険料率は平成30年4月に、私立学校教職員共済組合の厚生年金保険料率は平成39年4月に民間と同じく18.3%上限になります。

また、厚生年金保険料というのは会社と本人で半分ずつ支払う(折半)ので、実際の負担は9.15%という事になります。会社が半分支払ってくれてるんです^_^。

あ、それとついでに健康保険料も半分、雇用保険料は半分より多めに、労災保険料は全額会社が負担してます。

で、厚生年金保険料率は一律ではありますが、個々人の賃金(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)の違いで納める保険料は皆違ってきます

標準報酬月額というのは、今まで何度も話してきた内容ですが…、軽く復習すると、例えば4月に支払われた賃金が42万円、5月は46万円、6月は43万円であれば平均は436,666円になるから、これを下の標準報酬月額表に当てはめると440,000円になるので、翌年8月まで特別大きく賃金が上げ下げにならないなら440,000円×9.15%=40,260円が毎月支払う厚生年金保険料。

標準報酬月額表(日本年金機構)

ちなみにここでいう賃金(厳密には報酬という)に該当するものは、基本給だけでなく残業手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、扶養手当、役付手当、賞与(年4回以上のもの)等々、労働の対象として受けるもの全てをいいます。食事とか社宅、寮みたいな現物給付も報酬に入ったりします。だから実際に支払われた給与だけを見てみると、あれ? ってなるかもしれないですね^^;。標準賞与額というのは支払われた賞与から1,000円未満切り捨てた額

さてさて、9月からはこのように厚生年金保険料率が変わったり、保険料率を掛ける標準報酬月額が変化して給与から天引きされる保険料が変わってくる時期ではあります。しかし、実際には9月分の保険料は10月支払いの給与から徴収するので保険料額や給与の手取りに変化が出てくるのは10月支払いの給与からです。だから10月にあーだこーだ話題になるわけです(笑)。原則としてその月の保険料は翌月の給与から天引きする。また、9月の標準報酬月額の変化により年金受給者で在職中の方にとっても年金額が変化してくる時期であります。

というわけで事例。

1.昭和29年10月10日生まれの男性(来月63歳)

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

厚生年金支給開始年齢である61歳から840,000円(月額70,000円)の老齢厚生年金(報酬比例部分)と、国家公務員共済組合からの老齢厚生年金(報酬比例部分)420,000円(月額35,000円)と、国家公務員共済組合からの上乗せ給付である職域加算42,000円(月額3,500円)をもらいながら、標準報酬月額126,000円で民間企業で働いていた。60歳定年後は賞与は7月だけに500,000円。

普通は在職中(単に働いてるという意味ではなく厚生年金加入中って事)にもかかわらず、厚生年金をもらうと年金がカットされる場合があります。

まず標準報酬月額126,000円と直近1年間に貰った賞与500,000円を12で割って月換算した額41,666円の総額167,666円を総報酬月額相当額といいます。

この男性の場合は日本年金機構からの老齢厚生年金月額70,000円+国家公務員共済組合からの老齢厚生年金月額35,000円+総報酬月額相当額167,666円=272,666円<28万円なので年金はカットされていない。

※ 参考

28万円というのは支給停止調整開始額という。毎年度物価や賃金の変動で変わる場合がある。今年度は引き続き28万円。

ところが、今年9月に標準報酬月額が220,000円に上がってしまった! ちなみに支払う厚生年金保険料は220,000円×9.15%=20,130円。という事は年金額が停止されてくる。つまり、{(日本年金機構と国家公務員共済組合からの老齢厚生年金合わせた年金月額105,000円+総報酬月額相当額261,666円)-28万円}÷2=43,333円が年金停止額。なお、職域加算月額3,500円は年金停止の計算に含まないし、また、全額支給される。

で、ここで考える事が出てくるんですが、この男性は日本年金機構と国家公務員共済組合からの2ヶ所の支払い機関から老齢厚生年金をもらっています。つまり、43,333円の月年金停止額を両方の支払い機関で按分して、老齢厚生年金を停止しなければならない。

日本年金機構からは老齢厚生年金70,000円で、国家公務員共済組合からは老齢厚生年金35,000円貰っています。月総額は105,000円。

ア.まず、日本年金機構からの老齢厚生年金停止額を算出。

停止月額→43,333円÷105,000円×70,000円=28,889円(1円未満四捨五入)。何を意味しているかというと、全体の年金額105,000円に対して日本年金機構からの老齢厚生年金は70,000円だから、その割合分の停止額を算出するって事。よって、日本年金機構から支払われる老齢厚生年金支給月額は70,000円-28,889円=41,111円

イ.次に国家公務員共済組合からの老齢厚生年金停止額を算出。

停止月額→43,333円÷105,000円×35,000円=14,444円。よって国家公務員共済組合からの老齢厚生年金支給月額は35,000円-14,444円=20,556円

というわけで、日本年金機構から支給される老齢厚生年金は今までは偶数月に70,000円×前2ヶ月分=140,000円が支給されていましたが、9月分から標準報酬月額が220,000円に増額した事で、年金停止額28,889円の発生により10月13日(普通は15日支払いですが来月は13日支払い。15日が日曜だから)支払いの老齢厚生年金は8月分70,000円+9月分41,111円=111,111円となり、12月15日支払い以降は41,111円×前2ヶ月分=82,222円

同じように、国家公務員共済組合からの老齢厚生年金は8月分35,000円+9月分20,556円=55,556円。12月15日支払い以降は20,556円×前2ヶ月分=41,112円

なお、停止額は標準報酬月額や賞与額により在職中は変動してくる。ただし、途中で退職したりして厚生年金加入から外れると停止額は無くなる。

※追記

国家公務員共済組合から支給される職域加算42,000円(月額3,500円)は在職による停止はかかりませんが、仮に同じ共済組合である国家公務員共済組合または地方公務員共済組合に在職中は職域加算は全額停止になってしまう。なお、遺族年金や障害年金は在職中でも停止額が適用されることは無いです。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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