嫌いな牛乳をこっそり流しに捨てて「全部飲んだよ!」と得意顔。幼い子どもの嘘は微笑ましくもあり、見逃していいのか、厳しく叱るべきなのか悩ましいところです。そんな悩める親たちの疑問に、メルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』の著者で家庭教育アドバイザーの柳川由紀さんが明快に答えています。
本当に嘘つきは泥棒の始まりなのか?
Q:まだ、3歳と5歳だというのに、娘たちはもう嘘をつきます。
他愛のない嘘なのでかわいいのですが、このまま嘘つきになってしまわないかと心配です。
嘘はダメ!正直に謝りなさいと叱りますが、変わらず嘘をつきます、どう対処すればいいでしょう?
(3歳、5歳女児のお母様より)
柳川さんの回答
A:子どもの発達過程からみると、嘘をつけるほどに心が成長した!と喜ぶべきことです!
でも親としては心配になりますね。嘘には、親の気を引くための嘘、保身のための嘘、期待に応えるための嘘など様々です。
嘘をつくには、その奥に理由が隠れています。いきなり叱らずまずは子どもの話を聞きましょう。
1. 嘘は子どもたちなりの本当のこと
5歳くらいまでの子どもの場合、「嘘」と「子どもたち独自の本当のこと」との境界線が曖昧です。
この時期の子どもたちは、サンタクロースなど空想上の人物の存在を信じています。
だからこそ自分が嫌いなピーマンを妖精が食べたことが真実で、自分がこっそりゴミ箱へ捨てたのではないのです。
また6、7歳になると相手の気持ちを慮る嘘もつくようになります。
例えば、祖母がプレゼントしてくれた要らないお人形でも「ありがとう、気に入った」と言って祖母ががっかりしないように気を使うので子どもにとっては「祖母向けの本当の気持ち」なのです。
2. とがめず、質問する
とがめる口調で「本当に歯磨きしたの?」と聞くのではなく、「だいぶ早く終わったね?磨き残しない?」「早かったね、磨き直ししなくて大丈夫?」などと穏やかに質問しましょう。
そうすると子どもから「磨こうと思ったけど急いでいたから水で口をぶくぶくしただけ」と、本当のことを話してくれるかも知れません。
3. 「嘘は悪い」ではなく「正直はすばらしい」
「嘘はいけない」と教えるよりも、「正直はすばらしい」と教える方が効果的です。
心理学の実験結果(誘惑に耐えるテスト:カナダ心理学者Talwar博士の実験)からも出ています。
子どもに正直に話して欲しければ、親がとがめずに、穏やかに「本当のことを話してくれると嬉しい」と伝え、子どもの話に最後まで口を挟まずキチンと聞くことです。
家庭教育アドバイス・・・「幼児期の子どもの嘘には、付き合うことも大切」
幼い頃の嘘は、空想と現実が曖昧で、子ども自身、嘘と真実の区別が付きません。
例えば、お友達が木登りをして虫を捕まえたのに「自分が捕まえた」といった場合、子どもの心の中では、お友達の勇姿が自分の姿になっているのです。
「どうしてそんな嘘をつくの!お友達が捕まえたんでしょう?」とわざわざ言わずに、「そう、自分で捕まえたの」と話を聞いてあげるようにしましょう。それだけで子どもは満足します。
想像と現実がはっきり区別できるようになると、こうした嘘も減っていきます。
また、問い詰めるのは逆効果です。例え明らかな嘘とわかっても、子どもの嘘の裏側の気持ちをくみ取るため、穏やかに質問をしましょう。
子どもが嘘をついた理由を正直に話したら、例えそれが悪いことでも「正直に話したことについて」叱らずに認めてあげましょう。
「嘘はダメ」ではありません。なぜなら「相手を慮る嘘」もあるからです。
だからこそ、嘘をついてはいけない、というよりも「正直な人間は素晴らしい」と言うことを伝えましょう。
子どもは成長するに従って嘘も上手になり、そのうちに、空気を読んだ社会を生き抜くための嘘をつくようになります。
こうした社会的なコミュニケーションスキルとしての嘘は、相手を思いやる気持ちの表れでもあります。
嘘は子どもにとって成長の一段階に過ぎません。
大切なのは、嘘に隠れた心の声に耳を傾けること、気持ちにより添うことです。
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