日本でも離職率が高いと言われる「コールセンター」の仕事ですが、お隣の韓国では日本以上に離職率が高く、自殺者まで出る騒ぎになっているようです。これを受け、クレーマーに対する「画期的な施策」が打ち出されたそうですが…。無料メルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』の著者でクレーム対応のプロである奥村渉さんが、その想像を遥かに超える対応策を詳しく紹介しています。
離職率94.5%の韓国のコールセンターでおこなわれた施策とは?
すごいタイトルのニュースを、先日、偶然見つけてしまいました。
● 「殺してやる」韓国のクレーマーが凶悪すぎてコールセンター職員が自殺 企業がとった秘策とは
韓国は、儒教の国として知られています。儒教とは、孔子を始祖とする、思考・信仰の体系で、宗教というよりは、哲学の一種です。批判されるのを覚悟のうえで、「儒教とは何か」を、ヒトコトでいうと、「目上の言うことは絶対の教え」です。つまり、儒教の考え方が根強い韓国では、上下関係が非常に重んじられているのです。
記事によると、
韓国では「お客様は神様」という顧客第一主義の企業理念が強すぎる
とのことで、
- 顧客側が絶対的な権利をもっている
- どんなに不条理なことを言われても、反論は許されない
といった状況の中、
長時間罵られようが、どんなに誹謗中傷を受けようが、コールセンタースタッフは仕事と割り切って謝り続けなければなれない。
という凄まじい環境だそうです。上下関係もそうですが、他人よりも上になろうとする、マウンティングも激しいのでしょう。当然、離職率も高く、3年以上続けるスタッフは、たったの5.5%。客からの脅迫や、プライバシーを、聞き出されそうになるなどで、自殺者まで出る状況なんだそうです。
一方、日本においても、コールセンタースタッフは、メンタルが削られやすい環境です。少しずつ良くなりつつはありますが、顧客第一主義を掲げる企業もまだ多くあり、理不尽でも、当然のように謝らされます。もちろん怒鳴られたり、罵倒されたりします。韓国よりひどいとは言いませんが、日本でもまだまだ、「スタッフ < 客」という考え方はあります。
記事の中では、
韓国のコールセンター各社で、クレーマーに対する画期的な「対策マニュアル」が広がりつつある。
と書かれていました。わたしは、日本よりひどいクレームの韓国で、いったいどんな「画期的な対応」がおこなわれているのか、とても興味を持って読みました。
紹介されていたのは、「コールセンタースタッフから電話を切る」という方法です。その中身は、
悪質なクレームに対しては、スタッフが二度にわたって警告を行い、それでも続く場合には電話を切る
というものでした。あれ? わたしこれ、そっくりそのまま、3年前に書いてます。
● 幸せを呼ぶ!クレーム対応術 クレーマーに対する返し方のコツ(22)
しかし、この施策は劇的に効いたらしく、悪質なクレーム電話が、60%以上減少したんだそうです。さらに、企業だけでなく、地方自治体の住民苦情相談センターでも、今年4月から導入したみたいです。
悪質クレームに悩む日本の企業や、事業主のみなさま。この画期的な対応の考案者であるわたしが、格安でコンサルしますよ(笑)!
ということで、わたしにとってこの施策は、全く画期的ではありませんでした。ところが、そのあとに書かれていたのが、私の想像のはるか斜め上をいく、画期的(!?)な施策でした。記事をそのまま引用します。
利用者からコールセンタースタッフに繋がるまでの保留時に、子供の音声で「今から私が世界で一番大好きなお母さんが、対応します」や男性の声で「今からうちの誠実な娘が対応します」というアナウンスが流れ続ける。対応するスタッフにも大事な家族がいるということを、前もって意識してもらい、感情が高ぶったクレーマーにも一息ついてもらおうと試みだ。
おお…。なんというか、わたしは正直、これが流れた後に電話に出るのは、かなり「恥ずかしい」ですね。しかし、韓国のオペレーターたちは、大喜びのようなので、お国柄なんですかねぇ?
また、政治も、クレーム対応する現場に対して、バックアップを始めたようです。
このような顧客対応業務に対し、精神的ストレスなどから従業員を守るための関連法案が、今年内にも成立する見通しだ。
従業員たちのカウンセリングや健康診断を徹底しながら現場理解を深め、万が一、業務ストレスによって精神的・身体的に障害が発生した際には、業務を一時中断し、治療への専念を義務化するような内容が組み込まれている。
こういった法整備は、ぜひ日本でもやってほしいです。ただ、電話をかけた側としても、「一番大好きなお母さん」と流されたら、恥ずかしくて切ってしまいそうなので、これは、日本ではやらないでほしいなぁ。
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