アメリカで話題のファッション・オンライン・ショップ、「shopjeen.com」。サイトを立ち上げたのは若干23歳の女子大生なのですが、「ニューヨーク・マガジン」に掲載された彼女のインタビュー記事がすごいことになっていると『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住のりばてぃさんが報告、なんでもアメリカの最先端トレンドブランド・アイテムは「ハロー・キティ」「セーラームーン」なんだそうです。
「ニューヨーク」、「IT」、「女性」に加えて「日本」がキーワードに?
8月、雑誌「ニューヨーク・マガジン」に、「Shop Jeen Is So Scene」と題された、ニューヨークのマンハッタン、アッパーイースト育ちの、23歳の女子大生で起業家の、Erin Yogasundramさんについて、めちゃめちゃ興味深い特集が掲載された。
〔ご参考〕 ●Shop Jeen Is So Scene
まだ小学生だった11歳の頃から、マンハッタン内にあるテレビ番組の収録スタジオに出向き、有名芸能人の出待ちをして、もらったサインをインターネット上で販売して、お小遣い稼ぎをしていたというErinさん。
サインをもらった後は、高級ファッション・ブランドのトリー・バーチ(Tory Burch、ちょうど先週号のメルマガの「ブログ作りの舞台裏」でも取り上げましたね)で、特別セールになっていた人気のフラット・シューズを一足40ドルで袋いっぱい買ってきて、一足100ドルの値段でeBayで転売もしてたそうだ。
すごい小学生。
でも、マンハッタン内にはいっぱいいそう。
そんな感じで、いわゆる「Eコマース」に、かなり親しんで育った彼女は、3年前、インターネット上で、独自のファッション・アイテム販売サイト、shopjeen.com を立ち上げた。
〔ご参考〕 ●shopjeen
(注:開くとトップページに埋め込まれているYouTubeの音楽ビデオが流れます)
彼女と同年代の10代後半から20代前半くらいのお洒落なファッションが大好きな女性向けで、センス抜群のセレクトショップ的なオンライン・ショップである。
他の普通のファッション業界の商業的な発想しかない小売店では、とうてい想像もつかないような、奇抜なデザインで、めちゃめちゃ可愛いアイテムがいっぱい、ということで、これが大ブレイク。
アメリカでは、プレゼント向け消費の爆発的な高まりにより、1年分の売り上げをほんの数週間の短期間で売ってしまうケースもよくあることで知られるホリデーシーズンに、対応できなくなるほどの売上げを記録するようになって、一時、15名もの従業員を雇っていた!? のだとか。
ちなみに、最初の従業員のAmeliaは、インターネット上のSNS(Snapchat)で、ファッションのカリスマとして有名だった人物。
インターネット上で、ファッションのお店を出すのだから、SNS上でファッションのカリスマとして有名だった人物をまず雇う、というのも、実に興味深い。
まだ、若いっていうか、大学生(George Washington大学)だし、経営の経験もなかったため、順風満帆とはいかず、高級ブランドのシャネル(Chanel)の有名な香水Chanel No. 5のトレードマークのデザインを、勝手に使って作ったiPhoneケースが、シャネルからデザイン盗用と訴えられ(優秀な弁護士の協力により和解済み。前回メルマガで指摘したとおり、米国内ではデザイン盗用問題は日本より頻繁にあり、訴訟での対応も一般化してるっぽい)たり、ホリデーシーズンの売上げを維持できず、いったん社員の大半をクビにして、西海岸へ移転するなど、早くも波乱万丈な状況になってはいるものの、センスの高さからか、ジワジワと認知度は高まっている様子だ。
米国最大手の音楽専門ケーブルTV局であるMTVも、Erinさんのことを取り上げたことがあるそうで、その際、MTVが彼女につけたニックネームは、なんと、
「Queen Bee of the Internet」(インターネット界の女王蜂)。
まだ23歳の女子大生なのに、驚くほど高く評価されているのである。
そして、おそらく多くの日本人にとって、さらに大きな驚きなのは、このErinさんのshopjeen.comが、様々な面で、結構、日本文化の影響を受けているということだ。
上述の「ニューヨーク・マガジン」の特集記事でも、shopjeen.comに見られる日本文化や日本のポップカルチャーの影響について詳しく書いている。
むしろ、だからこそ「ニューヨーク・マガジン」が取り上げたのかも?
例えば、最も重要なshopjeen.comを紹介する冒頭パートに、
shopjeen.comのサイトを開くとLadybabyというバンドのための日本の音楽ビデオが自動的に流れるだろう…
<原文>
Type in shopjeen.com, and a Japanese music video for a band called Ladybaby might automatically start blasting, …
という感じ。
さらには、なぜErinさんのshopjeen.comが成功してるかについて、彼女自身が語る以下のインタビュー・パートとか、すごいことになってる。
エリンは、自身を「ハイプ・ビート・ヒップスター」と呼び、誰よりも早く最新トレンドを把握していることが、彼女の成功の秘訣の一部と語っている。
「子どもの頃からいろんなブランド品や、最新トレンドを追いかけてきたので、(特に変わったことをやってるのではなく)Shop Jeenはその延長よ。」
※訳者注:
記事中、この箇所に書かれていないけど、別の箇所で詳しく取り上げたErinさんの経歴、つまり、11歳の頃から、インターネット上で転売しやすい、より売れそうな、最先端トレンドの人気のブランド・アイテムをずっと観察し続けてきた…という意味も含む。
「今ならそれ(転売しやすい、より売れそうな、最先端トレンドの人気ブランド・アイテム)は、ハロー・キティ、セーラームーンなど等。そういうものを見つけると、『超カワイイ』(「kawaii af」)とか『とてもエステティック(美しい)』(「That’s so aesthetic」)なんて言うの。」
※訳者注:
「kawaii af」の「af」は「as fuck」の略語で「cute as fuck」と同意だが、日本語の可愛いから英語化した「kawaii」を使いたがるみたい。「That’s so aesthetic」の「aesthetic」は直訳すると「美的」という意味。若い女の子の間で使われるようになった新語らしい。なお、英語では、「That has a nice vibe」と同意とのこと。
<原文>
Erin calls herself a “hype-beast hipster” and says that part of the site’s success has been getting on the latest thing before anyone else: “Growing up, I went from wearing Hot Topic to Abercrombie to Tory Burch; I was really just following the trends, which is what Shop Jeen is doing, too.”
Right now that means: Hello Kitty, Sailor Moon, Rugrats, SpongeBob SquarePants, Destiny’s Child-era Beyonce,
“Sometimes”-era Britney Spears, pink-fur-coat-era Cam’ron. It also means throwing around phrases like “kawaii af” (which means “cute as fuck” in half-Japanese) and “That’s so aesthetic” (meaning “That has a nice vibe”).
幼少期からの経験を通じて育んだ、誰よりも早くトレンドを察知する目利きぶりやセンスが成功のカギだと語り、ハロー・キティ、セーラームーンなどの名前を挙げ、
「超カワイイ」(「kawaii af」)
と言うErinさん。
この他にも、最初の従業員になったSNS上のファッション・カリスマでもあるAmeliaへのインタビュー箇所に、最新トレンドを、例えば、タンブラー(Tumblr)でキーワード検索して調べるのが得意で、例えば、
「原宿(Harajuku)ってタイプして調べるの」
<原文>
Amelia says she’s “really good at key words.” For instance: “I’ll type in Harajuku [into Tumblr]
などと詳しく紹介している。
この特集は、記事全体を通じ、現在のアメリカで、日本の文化やポップカルチャーが、どれほどお洒落なものと認識され、特に、最先端トレンドを追いかけている若い女の子たちに憧れられているかを分かっていないと、書いてある内容の意味が分からない人も出てくるんじゃない? って感じに仕上がっている。
そう言えば、記事のサブタイトルにも「絵文字」が入ってるし。
今や、絵文字は世界に広まり、英語でEmojiで通じる時代になっているというのは、以前、お伝えしたとおり。
〔ご参考〕 ●絵文字はEmojiへ。世界各国で一番使われる絵文字ランキング発表
実に、興味深い。
こういう記事が、別に日本文化の話題じゃなくて、最先端トレンドの1つでもある注目の女性IT起業家の特集として、「ニューヨーク・マガジン」のような伝統のある、おかたい雑誌に普通にこんな感じで掲載されるようになってくるとますます、米国内での日本文化や日本のポップカルチャーに対する考え方にも、好意的な影響が出てくるだろう。
あと、もしかすると、
「ニューヨーク」
「IT」
「女性」
に加えて、「日本」(日本の文化やポップカルチャー)を主要キーワードに加えられるようなことを、何かしら上手く仕掛けられると、今後、アメリカでは、より多くの人々の興味や関心をひきつけることもできるようになってくる…気もする。
image by: shopjeen.com
『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』 より一部抜粋
著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。
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