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韓国に10年遅れ。低レベルすぎる日本のサイバー・セキュリティ

先日行われたハッカーの世界大会で、15歳の日本人少年が3位入賞を果たしました。が、実はこれ、「オープン戦」の結果で、日本は本戦に1チームも出られないという体たらく。軍事アナリストの小川和久さんはメルマガ『NEWSを疑え!』の中で、「少年の3位入賞は喜びたい」としながらも、日本のサイバー・セキュリティ水準の低さを指摘しています。

15歳天才ハッカーの上位入賞を喜びたいが

ちょっと嬉しいニュースが8月28日の読売新聞の「顔」に載りました。

● 清水郁実(いくみ)さん 15 ハッカーの世界大会で3位入賞を果たした中学3年生

 

毎夏、米ラスベガスで開かれる世界最大のハッカーの祭典「DEFCONデフコン」。その目玉イベントのハッカー大会(オープン戦)で3位入賞を果たした。プログラミングや暗号解読などの腕と知識を150人以上の大人たちと競って勝ち上がったが、「そのつもりで来ていたのでほっとした」。笑顔には余裕さえ漂う。

 

日本では「天才ハッカー少年」と呼ばれることも。3歳で携帯メールに興じた。今は、大学生や社会人も入るハッカーチームのリーダーを務め、年10回ほど各地の大会に遠征する日々。東京の有名進学校に通うが「学校の勉強は得意じゃない」とか。それでも、父親の誠さん(43)は「好きなことを思いっきりさせたい」とエールを送る。

 

セキュリティ人材が8万人足りないとされる日本。かたや隣の韓国では国を挙げてハッカーの英才教育制度を導入している。今年、デフコンの中でもさらに難易度の高い本戦で優勝したのは、その制度のOBたちの韓国チームだ。日本は本戦には1チームも出られなかった。「いつか本戦で上位を目指す」。ちょっとたくましい表情を見せた。(若江雅子)

これまでメルマガでも取り上げてきましたが、日本のサイバー・セキュリティのレベルは「技術大国」「技術立国」の看板とは裏腹に、驚くほど低く、2003年に政府の委託で調査したときは「米国に20年、韓国に10年ほど遅れている」と結論せざるを得ませんでした。

技術的には米国に2~3年の遅れなのですが、いったん水準を上げると安住してしまう日本に対して、世界の先進国は常に最高水準を目指しています。ドッグイヤーのように1年の遅れが7年の遅れを意味する、つまり3年の遅れは20年の遅れにつながりかねず、日本の低迷ぶりは目を覆わんばかりのものがあった訳です。

2003年の調査を通じて、米国などのハッカー出身のサイバー・セキュリティの専門家たちと知り合ったのですが、彼らが自分たちの水準に達していると認める日本人は2人しかいませんでした。

原因は明らかです。世界の先端を行く人材は例外なく3歳くらいからパソコンに触れ、12歳くらいで最高のスキルを身につけるに至っている訳ですが、日本の子どもは「日本でしか通用しない受験競争」で勝つための塾通いに明け暮れる結果、パソコンに慣れ親しむことなどなかったからです。

ここで紹介した清水郁実さんの場合は、「好きなことを思いっきりさせたい」(父親の誠さん)という家庭的な理解に恵まれ、「3歳で携帯メールに興じ」ることから今回の快挙が生まれています。

清水さんが、今回の3位入賞を大きなステップとして、ますますスキルを磨いていくことは間違いないと思いますが、問題は清水さんのようなケースが日本では例外であり、稀有とも言えるということです。

記事にもあるように、「セキュリティ人材が8万人足りないとされる日本」です。国を挙げてのハッカーの英才教育制度を導入した韓国が、世界最高レベルの専門家が競う本戦(清水さんはオープン戦)で優勝したのに対して、日本は「本戦には1チームも出られなかった」という現実を肝に銘じて、官民を挙げてセキュリティ水準の向上に取り組んでもらいたいものです。

日本にも、「好きこそものの上手なれ」という言葉があるのですが、それを忘れないようにしたいものです。

image by: Shutterstock

 

『NEWSを疑え!』第426号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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