疲弊するニッポンの宅配業界で、なぜ新規参入が急増してるのか?

 

近年、共働き世帯や単身世帯、高齢者の増加に伴い、食事を簡単に済ませたいというニーズが高まっています。そうしたなか、調理済みの弁当や惣菜といった「中食」が広がりを見せていますが、さらに買い物する手間を省きたいというニーズも高まりを見せているため、「宅配」に注目が集まっています。

ローソンはネット宅配サービス「ローソンフレッシュ」において、下ごしらえ済みの食材をパッケージにした商品を販売しています。レシピに沿って調理するだけで料理が作れるというものです。忙しい人には「時短メニュー」として、高齢者には「簡単に作れる1品」として人気を博しています。管理栄養士が監修したメニューを取り揃えるなど、高まりを見せる消費者の健康志向にも対応しています。

セブン&アイ・ホールディングスアスクルは11月から、セブン傘下のイトーヨーカドーの食品などを宅配するサービス「IYフレッシュ」を開始します。サイト掲載のレシピで気に入ったものがあれば、食材を丸ごと注文することもできます。サイト上の動画でイメージや作り方を確認できるようにするとみられます。

食材だけの宅配サービスが広がり始めましたが、もちろん、調理済みの料理を宅配するサービスも広がりを見せています。セブン-イレブンは弁当などを届ける宅配サービス「セブンミール」を強化しています。吉野家は宅配サイト「出前館」を通して牛丼などを宅配するサービスを6月から始めています。大手の小売業や飲食店が続々と宅配サービスを強化している状況です。

ニーズの高まりを受け、宅配サービスが活況を呈していますが、一方で新たな問題も生まれてきています。流通コストの負担増と企業の人手不足による人件費などのコストの増加が、広がりを見せている宅配サービスに影を落としています。

宅配を物流会社に委託する場合は物流コストがかさみます。ヤマト運輸など運送会社が運賃の値上げに動くなどで、企業は物流コストの上昇圧力にさらされています。また、出前館などの宅配サイトを利用する場合は手数料などのコストがかかります。こういった流通コストの負担感が増してきています。

宅配を自社で行う場合は企業の人手不足が問題です。人手不足により宅配に人員を割くことが困難になってきています。宅配の人手を確保するための採用コストや追加で発生する人件費などが経営の重荷となっています。また、人手が確保できない場合は、サービス品質が落ちてしまう危険性をはらんでいます。

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