富山と聞いて、何を思い浮かべますか? あまりピンとこないのが正直なところかもしれません。しかし、実はいざ富山へ訪ねてみると、水やご飯は美味しいし、黒部峡谷を中心とした手付かずの大自然に囲まれている、観光地としても見所がたくさんある場所なんです。今回、「大人の知的好奇心を満たす」をコンセプトに富山県と13市町が開発した、体験型観光プログラム「大人の遊び、33の富山旅。」~Beautiful Life 絶景~にジモココ編集部が参加してきました。体験プログラムを通じてわかった富山の魅力をお伝えします。富山のイメージが180度変わってしまうかも?
※本記事はジモトのココロに掲載された記事です。(2017年10月11日)
富山と聞いて、何を思い浮かべる?
地方の東側に位置する、人口約100万人ほどの県、富山県。富山県は、県中央の標高80m程度の呉羽山(くれはやま)を境に、東側を呉東、西側を呉西と呼びます。
(呉東)富山市、上市町、滑川市、魚津市、黒部市、入善町、朝日町、立山町・舟橋村
(呉西)高岡市、射水市、氷見市、砺波市、南砺市、小矢部市
どのエリアもそれぞれ特色があり、見所満載です。
ところで、まず富山と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
今回はじめて富山を訪れて知ったのが、「湾クラブ」という言葉です。最初これを聞いたときになんのことかピンとこなかったのですが、正式名称は「世界で最も美しい湾クラブ」と言います。通称「湾クラブ」は、1997年以降、湾を活用した観光振興と資源の保全を目的に活動している団体で、世界遺産のフランス・モンサンミッシェル湾、ベトナム・ハロン湾など、世界有数の美しい湾が加盟していますが、2014年に富山湾も湾クラブに加盟を果たしました。海の先にそびえ立つ3,000m級の立山連峰が織り成す景観が高く評価されたと言われています。富山県の湾が世界的にも評価されているとは、はじめて知った方もいるのではないでしょうか?
富山県・魚津市の三大奇観の一つと言われるのが、「蜃気楼」。(他の2つは「ほたるいか」、「埋没林」)
魚津市は江戸時代から蜃気楼の名所として知られます。ご存知の通り、蜃気楼とは大気中で光が屈折し虚像が見える自然現象のこと。この現象は気温や風などの条件が整わないと発生しないのですが、魚津はよく蜃気楼がみられます。
4月〜5月に多く見られるのが、「春の蜃気楼」。実際の風景の上側に、伸びたり反転した虚像が出現します。一方、11月〜3月に多く見られるのが「冬の蜃気楼」で、春とは逆で、実際の風景の下側に反転した虚像が見えるのです。春は10〜15回ほどですが、冬は視界が良ければ毎日のように観察できるそうです。春の蜃気楼は富山湾以外では発生するところはあまりありません。
富山がどんなところか、少しだけ見えてきましたよね?
さて、今回、体験型観光プログラム「大人の遊び、33の富山旅。」~Beautiful Life 絶景~を通じて、富山県東部(魚津市、黒部市、朝日町、入善町)
今回記事で紹介するのは、この4つのプログラムです。
黒部峡谷「猿飛峡」トロッコ電車の旅
富山ネイチャーツアー「立山山麓 深森の絶景トレッキング」
ヒスイ海岸で探す、自分だけの宝物
意外な顔を持っている富山。もっと知りたくなりましたよね? 早速ご紹介しましょう。
【富山県の魅力 その1】黒部峡谷トロッコがすごい
富山県へ旅行に来たなら、絶対体験して欲しいのが、黒部峡谷鉄道、通称「トロッコ電車」として知られる観光列車です。日本有数のV字峡谷をゆったりとしたスピードで駆け抜けます。
宇奈月(うなづき)駅を出発し、終点の欅平(けやきだいら)駅までの距離が約20km。なんと片道1時間20分もかかります。往復で2時間40分というから、意外と長旅です。しかし、V字渓谷奥深くをゆく絶景を眺めていると、乗車時間はあっという間にすぎます。今回乗ったのは、窓のない「普通客車」タイプです。ここでトロッコをより楽しむためのアドバイスを2つ。
1つ目は、行きは進行方向の右側に、帰りは左側に座るのがオススメです。ほとんどの見所が片方に集中しているので、反対側に座ってしまうと後悔します。帰りはともかく、行きだけは右側を確保しましょう。そうすれば、フォトジェニックな富山の風景を堪能できます!
2つ目はジャケットを持参すること。夏場は暑い富山ですが、いくつものトンネルを通るので、窓なしの列車に乗車すると想像以上に冷えこみます。なので、気温がどんなに暑くても薄めのジャケットは必須です!
数々の絶景ポイントが!
トロッコ乗車中は息を飲むほどの数々の絶景を目にします。
まず、嘘みたいな透明度の高い青い水面と緑色に茂った山々が連なるの風景はただ美しく、思わずため息が漏れてしまいます。キレイな水と山々がある、富山ならではの自然がそこにあります。それは、例えば、大自然に恵まれた北海道やエキゾチックな南国沖縄とは全然違う自然なのです。
乗車中の音声ガイドは富山出身の女優・室井滋さんが担当。乗車中に見られるスポットを詳しく紹介してくれます。
80分間の乗車中、富山らしい美しい風景が目白押しでした。でも到着してからも見所がたくさんです。
【富山県の魅力 その2】手付かずの自然がすごい
トロッコから眺めた絶景でお腹がいっぱい? いえいえ、終点の欅平に降りてから、さらに見所がいっぱいです。
欅平にはボランティアで見所を紹介してくださるガイドさんがいます。詳しい情報が知りたい、案内してもらいたいという方はガイドさんを頼りにするのも手です。
まずは欅平から歩いてすぐのところにある奥鐘橋へ。この朱色の橋は、黒部川本流に架かる橋で長さは86m。高さ34mのところにあるので、下を見下ろすと、足がすくんでしまいます。
橋を渡った先には人喰岩というなんとも恐ろしい名前のスポットがあります。
ここは岩壁をえぐり取って作られた歩道です。大きな口を開けて人を飲み込むような形からその名がついたといわれています。そう言われるとそう見える気もします。
来た道を戻り、今度は黒部渓谷の目玉スポットであり、特別名勝・特別天然記念物に指定されている「猿飛峡」へ。
変わった名前の由来は、川の幅が狭いため、野生の猿たちが軽々と川を飛び越えたという逸話から。標高1543mの奥鐘山を背景にごおおおっと音を立てながら流れるその光景はまさに壮観。川は透明度が高く鮮やかで、森林は謎めいていて、空を見上げれば青空に飛行機雲が。五感をフルに使って、自然と一体になって体感できるスポットなんです。
猿飛峡の眺めを楽しんだなら、その次は足の疲れを癒せる無料の「足湯」スポットへ。
黒部峡谷に湧く祖母谷(ばばだに)温泉からの引き湯で旅の疲れを癒しましょう。
日本三大渓谷のひとつ「黒部峡谷」こそ、富山ならではの全身で感じられる場所。もしチャンスがあるなら、一生に一度は訪れることをおすすめします。
次は樹齢千年の洞杉が眠るパワースポットへ。
【富山県の魅力 その3】パワースポット、樹齢千年の「洞杉」がすごい!
3000m級の山々が連なる北アルプスの大自然は都市部からやってきた者たちを圧倒するほどに生命力に溢れています。そして、この大自然を生かした「富山ネイチャーツアー」は体験してみる価値アリ。今回参加したのは三大トレッキングスポットのひとつである「巨木をめぐる洞杉トレッキング」です。魚津市にある「洞杉及び岩上植物群落」です。
ボランティアのガイドさんに案内されながら、手つかずの深い森の奥地に入っていきます。深緑の中を歩き始めると、途端にちょっとした冒険をしている気分になります。
散策を楽しませてくれるのは数々のワイルドな景観と森にまつわるトリビア。まずはじめに出会ったのが、水の神様が宿るといわれる「龍石(蛇石)」です。片貝川上流の南又谷の河原にある大きな石。
黒い輝緑岩の模様が、まるで石に蛇が巻き付いているように見えることから、そう呼ばれているそうです。遠い昔、川で暴れていた蛇を狩人が金と銀の弾を撃ちこむと、その大蛇は石に巻きついて息絶えたという伝承が言い伝えられています。干ばつのときにこの石を叩けば雨が降ると信じられています。
またこの石のすぐ近くには片貝川上流がすごい勢いで流れていきます。青みがかったその透明度の水を見ていると、心の中も洗われている気持ちになります。
片貝川南又谷一帯には、スギ巨木群が群生していますが、ここに植生している洞杉は樹齢数100年から1000年。氷河期時代を乗り越えた杉たちが森のあちらこちらで息をしています。
巨大な岩の転石上に生えた杉は、何百年もの時を経て、分岐し曲がりくねった特異な生育形態が特徴的です。洞杉は標高500m〜700m付近に広く自生していますが、明治時代以降は建築材として伐採され、激減したと言われています。
杉ノ尾の岩屋は、片貝川南又谷の新土倉橋右岸上部にある巨岩。河床から数十メートルも高い位置にありますが、土石流等で堆積したものと言われています。岩の上に生えている杉。なんとも迫力がありますね。
そして、この森の1番の見所は「洞杉(どうすぎ)」です。洞杉とは、天然生のスギの古木で、幹の内部が空洞になっているものが多いことからそう言われるようになりました。
最大洞杉と呼ばれるものは、主幹の幹周が1,560cmもあり、新潟県の将軍杉や鹿児島県の縄文杉に次ぐ大きさです。何千年ものあいだ生き抜いてきた洞杉は見るものを圧倒させてます。手付かずの自然がそのまま残されたこの場所はまさにパワースポット。目に見えぬ不思議なパワーを感じることができるでしょう。
住所:富山県魚津市三ケ杉ノ尾
ほかにも杉スポット。「沢スギ自然館」へ
洞杉のほかにも、スギ林を体験できる場所があります。
黒部川扇状地の地下水が湧出する海岸のほど近くにスギの多い林が
ガイドさんと一緒に、神秘の森を探索することができるので、自然をまるごと体感できる場所です。
時代とともに変化し続けた、森の生命力を肌で感じることができますよ。
沢スギ自然館
住所:富山県下新川郡入善町吉原950番地
開館時間:9:00~17:00
Tel:0765-72-1710
入館料:無料
次は翡翠がとれるという「ヒスイ海岸」へ。
【富山県の魅力 その4】翡翠が転がっている「ヒスイ海岸」がすごい!
実は知る人ぞ知る「翡翠(ひすい)」の原石がひろえる海岸が富山県朝日町の最東にあります。その名も「ヒスイ海岸」。東西約4kmの砂利浜は「日本の渚百選」にも選定された場所です。
ヒスイの原石が海岸に打ち上げられることから「ヒスイ海岸」と呼ばたそうですが、現地に訪れてはじめて知る人の方が多いのではないでしょうか。実はこの海岸、ヒスイの原石が拾える場所としては世界的にも珍しいんです。
こちらには、ヒスイ探し達人もいるので、ぜひヒスイ探しに参加してみましょう。今回、このヒスイ探しに参加してみました。
海岸に行ってみると、すでにヒスイ探しをする人の姿がありました。一攫千金(?)を狙い、みなさん真剣な様子。
砂利の海岸を歩きながら、この幾千もの中から宝石の原石を探すのは少々気が遠くなります。しかし、達人の背中についていって、ヒスイっぽいものを探します。
「白っぽい石を探してくださいね!」と達人。緑のイメージがあったのだけど、白っぽいのが原石なんだそう。直径4〜5cmのもので、透明感のある、角ばった、重たい、なめらかな石を探すのがコツ。ちなみに白が1番ピュアなヒスイの色なんだそうですよ。
ヒスイといっても色も緑、黒、青、白などがあり、さらにヒスイの一種のネフライトなんかもあります。ヒスイ海岸には他にも泥岩、メノウ、石英、コランダムなどの石がゴロゴロあります。質が高ければルビーやサファイアになる石なんかもあるそうで、モチベーションは一気に高まります。ただ、やっぱり自分で見分けるのはかなり難しいので、これ「ヒスイかも!」と思っても、たいてい違います。だからこそ、達人に確認しながら、石を拾うのがベター。
ヒスイが見つからなかったとしても、ご心配なく。作家による「ヒスイのブレスレット」を作るワークショップもあります。
【富山県の魅力 その5】ごはんが美味しい!
「湾クラブ」に加盟している富山県の名物のひとつが「富山湾鮨(とやまわんずし)」。その名の通り、富山湾で獲れた新鮮な魚介類がうり。富山湾でとれた旬の魚介類を使った富山湾鮨は新鮮で美味しいと評判です。1セット10貫ほどで、値段は定価で2000円〜3500円ほど。もちろん、ネタのすべてが、富山湾の新鮮な海の幸です。また、シャリは米どころの富山県が誇る県産米。
提携店は富山市内だけでも15店舗以上あります。富山県に行ったらぜひ抑えておきたいですね。
また先ほど紹介した「ヒスイ海岸」の帰りには、朝日町の名物「たら汁」を。
たらの味がじわっと染みていて、ホッとする味です。
ちなみに、富山県は水の名産地としても有名です。料理も美味しい、水も美味しいとなれば、言うことなし!
以上、知られざる富山の魅力を紹介しました。北陸の観光スポットと聞けば「金沢」のイメージが強いためか、ついつい素通りしてしまいがちな富山。しかし、一歩足を踏み入れてみると、そこには富山県らしい魅力に溢れていました。中でも、黒部峡谷は一度言ってみてください。手付かずの大自然を目の前に心も頭もキトキト(※富山弁で新鮮の意味)になるはず!
観光プログラムの詳細はこちらから。
「大人の遊び、33の富山旅。」~Beautiful Life 絶景~
取材協力/富山県