「野良ねこに餌やり禁止」問題、米国はどう対応している?

 

しんコロさんの回答

まず質問のお答えからお話しますと、NYやシアトルには野良ねこがほとんどいません。なぜなら、シェルター等の活動によって野良ねこは保護されて里親に出されるなどしているからです。

「野良ねこには餌をやってはいけないというのは見殺しにするようなもの」という意見は、確かに間違ってはいません。餌を与える側としては可愛くてやっている訳ですが、可愛がったその後にどういったことが起きるかはあまり優先せず、個々のねこに対する慈悲や愛情を優先した考え方です(それが良い悪いという話ではありません)。

一方、近隣の住民からは衛生上問題があり、迷惑になる」という意見もあり、この意見も確かに間違っていません。世の中誰もがねこ好きなわけではないし、自分の敷地や自動車などに糞尿をされたら不快に思うのは当然でしょう。

では、ねこ側からしたらどうでしょう? 短期的に餌をもらって餓えをしのげるのは非常にそのねこたちにとっては幸せでしょう。しかし、そのことで繁殖するのに適した環境になると、また話は変わってきます。

ねこは年に2~3回出産でき、4~6匹の子ねこを産むので、最初は両親の2頭だけだったのに、子ねこを合わせて最大14頭まで1年で増えるポテンシャルを持っています。それらの子ねこが1年足らずで繁殖能力を獲得するので、理論上では親も含めて8対のオス・メスとなり、14×8で112頭になります。これが2~3年もしたらすぐに1,000頭を超えてしまう繁殖力があるのです。

こういった急激な増え方をしてしまったら、もはや餌を与えることは不可能ですし、地域の衛生状況にもかなりの影響が出てきます。そしてなにより、まともに食べられずに飢餓に苦しむ子ねこたちも出てくることでしょう。

結局、どちらの意見もそれぞれの視点があって間違いではないのですが、総合的に判断した場合は、やはり野良ねこを減らすことが重要だということがお分かりいただけると思います。そして「野良ねこを減らす」ということは単に餓死させるという意味ではなくて、アメリカのシェルターシステムを見本としたような保護政策を整えることが何よりです。その為に、まずは私達ねこ好きが「何が最も良い解決策になるのか」を感情的にならずに理解し、伝えていくことができるようになることが重要だと思います。

image by:Shutterstock

 

shinkoro

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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