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台湾の「民泊」が中国人を相手に大失敗、高まる日本人への期待

日本ではマイナスイメージで語られることの多い民泊。実態に法整備が追いつかず、様々な問題が噴出しています。一方、世界一の親日国・台湾の民泊は「かなり充実している」とするのは台湾出身の評論家・黄文雄さん。とはいえここでも中国には翻弄されているとも言います。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で台湾の民泊の現状を紹介、さらに日本人に自信を持って勧められる理由を記しています。

【台湾】台湾の民泊は中国人相手で大失敗、高まる日本人への期待

楽天LIFULL STAY、台湾の民泊サイト「AsiaYo.com」と提携

オリンピックを前に日本で話題になっている民泊ですが、台湾の民泊もかなり充実していることご存知でしょうか。

台湾では、10年ほど前から民宿がブームとなり、民宿はすでに旅の一部として定着しています。法人のみならず、個人で民宿を開業しているケースも多く、ホテルとは違ったアットホームなサービスが根強い人気です。だいたい日本の民宿と同じイメージだと考えていいでしょう。

規模は小さいながら、室内は清潔であり、朝食はホストの手作りといった感じです。違う点といえば、台湾の住宅は各部屋に独立したバスルームとトイレがあるケースが多いため、日本の民宿のようにバス・トイレ共同ではないケースが多いことです。

そもそも台湾人は今でも大浴場には慣れていないため、「台湾は温泉パラダイス、日本統治時代に学んだ文化が独自に花開く」でも書いたように、温泉に入る際も好んで水着を着用します。裸の付き合いという習慣があまりないのです。バス・トイレの共用もあまり好きではないのかもしれません。

また、台湾の宿は内装にとてもこだわっている所が多くあり、個人の宿なのにテーマパークのような演出も時にはあり、利用者の充実した旅の一部を演出してくれます。

そんなわけで、台湾の民宿は海外からの観光客にも定着しています。そして今、台湾の宿は時流に乗って、民泊もかなり充実してきています。

民泊の特徴は、その需要と供給がネット上でマッチングされていることです。利用者は民泊サイトにアクセスして、自分の求める条件に合う宿を探して予約するし、ホストは提供した条件を提示して民泊サイトに登録します。ネット先進国の台湾で生まれた台湾最大の民泊サイトは「AsiaYo.com」です。

AsiaYo.com

ページの作り方も良くできていて、宿を探しやすいし、何よりも一軒の宿についても写真が多く、利用者は安心して自分の求める宿を予約することができると評判もよく、さらに、ここが扱っている宿は質が高いことでも知られているとのことです。

利用者の旅がよりいいものになるようにとのポリシーから、質の悪い宿は載せない、載せてもクレームが多い宿は削除するなどの対応をしているそうです。

さらに、AsiaYoの利用者は台湾および香港が多く中国は少ないというのも人気の秘訣です。やはり扱っているものが宿なだけに、道徳心とマナーは重要です。そうして高い品質を維持しているAsiaYoは、2013年6月にスタートした後、2014年2月から2016年3月までの過去25か月間で毎月25%の成長を遂げています。

楽天との提携が実現したことで、今後、日本人向けのサービスも拡大していくと思われます。実際、日本語の対応も進みはじめています。日本から台湾への旅行者、台湾から日本への旅行者の双方を取り込もうというわけです。

また、AsiaYoの特徴として、利用者向けの手厚いサポートも挙げられます。他の民泊サイトでは利用者への対応の大半はホストが担うことが多い一方で、AsiaYoは何か困ったことがあった際は、Lineや電話などでサポートを受けることができるとのこと。この点が、アメリカ発世界最大の民泊サイトAirbnb(エアービーアンドビー)との違いでしょう。

AsiaYoの日本側の責任者である内海玄氏のインタビュー記事があるのでそちらを少し引用しましょう。

民泊はもちろんビジネスの側面もありますが、それ以上に宿泊業だと考えておりますので、ゲストをおもてなす宿泊業としてしっかりとやっていくという方をとても応援したいと思っております。本当にいい形でインバウンドのビジネスや民泊が広がっていけばと思います。

 

【バケーションレンタルEXPO 2017】AsiaYo・内海玄氏インタビュー

この発言こそがAsiaYoの人気の秘訣です。何かと問題の多い民泊ですが、宿泊業のグレーゾーンの闇を深くしないためにも、こうした心意気こそが業界をよりクリーンにし、盛り上げていきます。

中国にも民泊サイトはいろいろとあります。楽天はそのうちのひとつである中国最大手と言われる「途家とも提携しています。

報道によれば、

主に訪日客の4分の1を占める中国人客を対象にし、楽天がもつ宿泊物件を途家を通じて中国の訪日客が利用できるようにする見込みだ。途家は中国に約50万件の物件を持つが、日本では約5,000件にとどまる。一方、エアビーは日本で約5万件をもつ。途家は2年後に日本の物件数を2万件以上にする方針で、楽天と組むことで規模を一気に拡大する。

とのことです。

楽天、中国民泊最大手との途家と提携 エアビー対抗へ運営も支援

日本語の「途家」サイトはこちらです)

このように一気に需要とニーズが高まっている民泊ですが、日本においては、民泊をめぐる諸問題はまだまだ山積しています。ゴミ問題、騒音問題、衛生問題、テロ対策問題などのほか、以前、テレビで民泊のホストとなった法人が、毎回シーツに血がついていて困っていると発言している番組も見たことがあります。

日本では、まだまだ法的環境的な整備が整わないまま急発進しているイメージは拭えません。しかし、日本政府は民泊を急激に増やしていきたいと思っています。なぜなら、オリンピックを目指して宿泊施設を確保したいとの政府の思惑があるからです。

一方、台湾は日本と逆で、民泊過剰に陥っています。そもそも台湾人は商売が好きです。誰もが社長になりたがるのが台湾人です。そんな台湾人にとって、民泊の経営は気軽に手を出せる商売として魅力的に映ったのではないでしょうか。

しかし、同じ民泊でも、中国人観光客を相手にしたものと、日本を含むその他の外国人を相手にしたものとでは明暗がくっきりと別れました。

中国人観光客は、政治的要素によってすぐに変更があります。蔡英文が総統になってからは、中国政府による台湾観光を規制したために、中国人観光客が激減しました。

いくら中国人が「爆買」するほど金払いがよくても、マナーや態度が悪い上に政府の風向きによって需要が増減するような観光客が相手では、まともな商売はできません。おかげで、現在の台湾では、中国人を相手に商売していた民泊は、閑古鳥が鳴いています。

民泊のホストたちは、その原因は蔡英文総統にあるとして、政府を相手に抗議し、賠償金を要求しています。この問題をめぐっては、台湾の世論は二分しています。

民泊業者だけではありません。中国人観光客をあてにしていた免税店、ホテル、観光バス会社なども、口を揃えて商売がうまくいかないのは蔡英文が「92共識」を認めないからだと、台湾政府のせいにしています。

ちなみに「92共識」とは、1992年に中国政府と国民党時代の中華民国政府が「一つの中国」を互いに認めたとされる合意です。

しかし、仮に蔡英文が「92共識」を認めたとしても、中国人観光客が安定供給されるとの保障はありません。中国政府の一存で観光客はどうにでもされてしまうからです。

本当に中国とつきあうのは難しいのです。それはTHAAD配備で中国からいろいろな嫌がらせを受けている韓国をみれば、一目瞭然でしょう。

ただ、少なくとも日台間における民泊のマッチングにはそれほど問題はないように思えます。なぜなら、日台における衛生観念や道徳観、マナーなど、公共心には共通するものが多くあるからです。台湾人は、日本統治時代に日本人から道徳心や公共心を学んでいるからです。

なによりも民泊は安く泊まれるので、利用しない手はありません。民泊は民宿と違って、ホストとの直接的な関わりはありませんが、希望すればホストとの会話も楽しめるでしょう。ホテルとはちょっと違った台湾旅行を味わうためにも、民泊という選択肢、一度は試してみる価値はあるでしょう。

image by: asiastock / Shutterstock.com

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