近年、実店舗で実物を確認したり試着してから値段の安いネットショップで購入するという「ショールーミング化」が進み、多くの小売店が苦戦を強いられています。この現状を打破すべく、スポーツショップのみならず、すべての業種に当てはまる的確なアドバイスが好評の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者で現役コンサルタントの梅本泰則さんが、小さな店が生き残るための「ネット活用術」を的確にわかりやすく解説してくれました。
スポーツショップにとってネット販売は脅威か?
スポーツショップでも「ショールーミング化」の現象が広まっているようです。地方のお店がなげいておられました。「うちの店でシューズの試し履きをして、別のネットショップで買うお客さんが増えている」。お店にとっては切実な問題です。何か対策はあるのでしょうか。
ネットを活用するお客様が増えているのなら、まずはネットで対応する方法を考えてみましょう。そこで、日本ではどれくらいの人達がネットで商品を買っているか、調べてみました。経産省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、2016年のBtoCの物販市場は約8兆円です。これをEC化率(市場全体に対するネット市場率)で見ると5.34%となっています。ネットショップで売れていると言っても、まだ全体の1割にも達していません。
では、これを商品別に見ると、EC化率はどうでしょう。EC化率が一番高いのは「事務用品・文房具」で、33.6%、二番目は「家電、AV機器、PC・周辺機器」で、29.9%、三番目は「書籍、映像・音楽ソフト」で、24.5%となっています。さすがに高いEC化率です。
そして、スポーツ用品が含まれる「衣類・服装雑貨」はというと、そのEC化率は10.9%となっています。BtoC全体のEC化率5.43%に比べると高いです。とはいえ、それでも9割近くのお客様は、ネット以外で買っていることが分かります。お店には、まだ十分にチャンスがあるのです。
このことを分かったうえで、ネット活用を考えられるといいのではないでしょうか。そして、ネット活用の基本は、なんといってもホームページです。
スポーツショップのネット活用実態
このホームページのことを調べていくと、スポーツショップの取り組みが遅れていることが分かります。たとえば、ある地区の大手チェーン以外の主力スポーツショップ64店を見てみました。そのうち、ホームページがあるお店は13店です。ブログを書いているお店は2店、フェイスブックページを持っているお店は5店、メルマガを出しているお店にいたっては、たったの1店という状況です。
皆さん店売りに力を入れておられるからなのでしょうか。しかし、だからといって、ネットの活用をしないで良いという理由にはなりません。総務省の調査によれば、日本では83%の人達がインターネットを使っています。そして、スポーツショップの中心顧客である中高生は98%がスマホを使っています。そうした時代にホームページさえ持っていないのは、いかにもネットの力を軽くみている証拠です。
いえ、私は楽天やヤフーなどの出店サイトに店を出して、ネット販売に力を入れろと言っているのではありません。ネットショップはそれなりにリスクもありますし、店売りとは違った運営力も求められます。価格競争に巻き込まれて、立ち行かなくなってしまうことだってあるでしょう。私が言いたいのは、ネットショップはともかく、せめてホームページくらいは持ってほしいということです。
そして、さきほどの地区のお店のホームページを見てみました。ホームページを持っておられる13店のうち、ちゃんとしたホームページだと思えたのはたったの5店です。あとの8店は、ページを作りっぱなしでほとんど更新されていないとか、まるで素人が作ったようなデザインだとか、とても残念なホームページになっています。これでは、お店をショールームにされてもお客様に文句は言えません。では、どうしたら良いのでしょう。
ホームページでお客を増やす
まずはホームページをしっかりとしたデザインや内容にすることです。繰り返しますが、ネットショップではありませんよ。
しっかりとしたホームページを作るには、やはりプロの手を借りることです。ホームページ制作会社の知り合いがいなければ、良いホームページを出している商店街の仲間でも探してみて下さい。その仲間に、制作会社を紹介してもらいましょう。また、近くの商工会議所や中小企業支援センターに相談すれば、良い制作会社を紹介してくれると思います。
そして、今回はホームページの構成や中身について詳しくはお伝えしませんが、お客様になるべく長い時間滞在してもらったり何度も訪問してもらえるようなページを心がけましょう。例えば、「試合に勝つための方法」とか、「スポーツ用品の素材や作り方」とか、「上達のための練習法」とか、お客様の役に立つ情報を、たくさん載せます。
また、お店が創業するときや、現在までのドラマをストーリーにして紹介してはどうでしょう。お店のこだわりを、丁寧にお伝えすることも大切です。スタッフの紹介記事も親近感がある内容にしてください。いずれにしても、商品ばかりが紹介してあるホームページにしてはいけません。
それから、フェイスブックページを作ってホームページで見られるようにしたり、フェイスブックページからホームページに誘導することも必要です。
そして、威力を発揮するのはブログです。アメブロなど外部のブログとリンクさせてもいいでしょう。これも「新製品入荷」などという情報よりは「メーカーさんの製品開発秘話」や「実際の使用感」のような記事の方が読んでもらえると思います。毎日でも書き続ければ、きっとお店のファンが増えることでしょう。
これが、私の提案するスポーツショップのネット活用法です。まずは、しっかりとしたホームページを作って他店との差別化を図り、お客様を増やしていってください。
■今日のツボ■
- スポーツショップはネット活用に後れをとっている。
- まずはしっかりとしたホームページを作ることである。
- お客様に必要な情報やブログを発信してファンにする。
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