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現役医師が警告する、「エナジードリンク」大量摂取の危険性

学生からビジネスマンまで、ここぞというときパワーをチャージしたい方に人気の「エナジードリンク」。カフェインが多く含まれていることから、「眠気覚まし」や「だるい身体をシャキッとさせたい」などの目的で購入されることが多いようですが、実際のところはどうなのでしょうか。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生は「カフェイン依存症」の可能性について言及し、「注意が必要」と警告しています。

エナジードリンクに注意

ビタミンB1不足になるとどうなるか

私は医学生時代に同期の仲間と一緒にグループでよく勉強会をやっていました。普段の学校での試験前や国家試験前でしたね。グループで学習するとお互い刺激になって効果があったようです。勉強会メンバーの中の1人はよくカフェイン入りのドリンクを薬局から購入して飲んでいました。カフェイン入りドリンクを飲んでいたその同級生は確かに夜遅くまで勉強をしていましたが、試験の点数が良かったかどうかは私にはわかりませんでした。

最近はエナジードリンクというカフェイン入りのドリンクがコンビニなどでも買えるようになりました。栄養ドリンクとも呼ばれています。中身を調べてみると、カフェイン以外にはビタミンB1などが含まれています

ビタミンB1は糖分などの代謝には必須の補酵素です。毎日朝からお酒を飲んでまともな食事をとらない人や、ビタミンB1を含まないカップラーメンや白いご飯だけを毎日食べるような偏った食生活では確かにビタミンB1が欠乏するリスクがあります。特殊なケースとしては、ひどい妊娠遅で食事が全く取れなくなった場合でも不足することがあります。

そういう人は脚気という病気になり、手足の力が入りにくくなったり、心不全になったりすることがあります。また、ものが二重に見える複視の状態になったり、歩くときにフラフラする小脳失調になったり、ひどい場合には意識状態が悪くなるというウェルニッケ脳症になることもあります。さらには、認知症になったり、勝手に嘘をついてしまう「作話」という奇妙な症状をみるコルサコフ症候群と呼ばれる病気になることもあります。

否定されたメガビタミン主義

しかしながら、肉類等を含む通常の食事をとっていればビタミンB1が不足することはほとんどありません。あえてビタミン剤として摂取する必要は無いのです。また、最近のカップラーメンにはビタミンB1があらかじめ添加されているものも多く出回っています。ビタミンB1を充分に摂りたい人は、レバーをよくとると良いでしょう。

また、ビタミンB1をドリンク剤などで大量に摂ったとしても過剰な分は尿中に排泄されます。ビタミンB群は水溶性ビタミンなので水に溶けやすく、腎臓から排泄されやすいのです。これは尿が黄色くなりますのですぐにわかります。

肝心のビタミンB1の急性効果についてはどうでしょうか。実際、ビタミンB1を大量に摂ったからといって体や脳の機能が急に良くなったり肉体の疲労が回復しやすくなったりすることはありません。昔ある有名な学者が、メガビタミン主義を唱えていました。ビタミン剤を大量に摂っていると、病気にならずに健康も増進するという説でした。しかしながら、それはその後の数多くの臨床研究によって規定されています。ビタミンは不足すれば問題ですが、過剰に摂っても効果は無いのです。

カフェイン依存症

では、話をカフェインに戻しましょう。確かに、カフェインには覚醒作用があります。眠気を抑える働きがあります。脳内のドーパミン作用を増強することがその機序としていわれています。

適量をコーヒーやお茶などとして飲んでいると脳の働きが冴え、実際に勉強や仕事がはかどることがあります。私も大学院受験の際には、病院の仕事で呼ばれることがない時間帯の朝5時に起きてコーヒーを飲みジャズを聴きながら勉強をしていたこともあります。また、コーヒーやお茶を摂ると長期的には健康を増進する作用があることがわかっています。

しかしながら、やはり過ぎたるは及ばざるがごとしです。コーヒーやお茶を飲みすぎて気分が興奮状態となり落ち着かなくなった経験を持つ人もいるのではないでしょうか。私自身も、つい飲み過ぎた日の夜は眠れなくなったこともあります。そのため午後からはコーヒーは飲まないようにしています。

また、カフェインには交感神経を刺激する作用があります。コーヒーを飲みすぎた時に心臓がドキドキする動悸や、血圧が高くなったりした経験を持つ人もいるのではないでしょうか。コーヒー一杯に含まれているカフェインの量は120ミリグラム程度です。一般にカフェインを1000ミリグラムグラム以上を一度に摂取すると中毒症状が出ます。コーヒーを9杯飲むと中毒になるのです。

もともと心臓の病気を持つ人がカフェインを少しでも摂りすぎると不整脈を起こして心臓が止まることがあります。また、もともと脳の病気を持つ人が少しでも取りすぎると痙攣を起こしてしまうこともあります。では、エナジードリンクにはどの程度のカフェインが含まれているのでしょうか。レッドブルという商品には80ミリグラムのカフェインが含まれています。モンスターエナジーという商品にはカフェインが142ミリグラム含まれています。

依存症の問題は、だんだん効果が薄れてくるために飲んでしまう量が徐々に増えていくことです。最初1杯から始まるエナジードリンクも、どんどんエスカレートしてたくさん飲むようになった人が副作用をきたすのです。健康のことを第一に考えるならば、コーヒーやお茶として、300ミリグラム以内程度の適量を摂ることをお勧めします

文献

栗原久ら。日常生活の中におけるカフェイン摂取─作用機序と安全性評価─。東京福祉大学・大学院紀要,6(2),pp109-125,2016.3。

image by: Shutterstock

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