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NYの2000円ラーメンを笑う日本人に教えてあげたい「景気の話」

NYでは日本の「一蘭」のラーメンが一杯2000円もするそうですが、これを聞いて「クーポンで割引もある日本に住んでて良かった! 」と思った方は、その値引きされた分の金額のしわ寄せがどこに行くかを考えたことはありますか? 今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』では、著者で米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEOの高橋さんが「日本が景気回復からは程遠い」と確信した理由について記しています。

特別コラム:外から見ると

12月の初旬にまた東京へ出張に行きます。行けば、確実にウエイトアップしてニューヨークに戻ります。それを計算済みで、出張前から気持ち若干のダイエットに励みます。世界一美味しい街で、食べずにガマンするのは無理。過去何度も挑戦しましたが、今となっては無理な注文だと自覚しています。

外国人が食べても美味しい!と思う、東京のレストラン群。 日本生まれの日本育ちのアメリカ暮らしの僕は、もう、なんなら「食べる為に東京出張の予定を入れてるようなもの(ウソですよ♥)出張前には「食べログ」などを参考に「行くレストランリスト」まで作ったりします。

クオリティーと同時に、驚くべきは、その価格。世界一物価の高い街から来た僕には、日本だと行くお店すべてが、「なにかのキャンペーンをしているの?」ってくらい安く感じます。

つまりはニューヨークの日本食レストランは、アメリカ人にとっても「高級店」のイメージ。僕の友人も「記念日くらいにしか行けないなぁ」と言ってました。

ラーメン一蘭が一杯(日本円で)2000円、というのが日本でも報道され話題になっていましたが、僕たちからすると、以前からの「常識」なので、「今頃、ニュースになってんのかぁ」って感じでした。

例えば、旅行で来た際、一蘭のラーメンを2000円で食べたら話のネタになります。 でも、在住の僕たちからすると面白くもなんともない(笑)。日々の生活にモロ直撃する問題です。

ニューヨークで日本の味をそのまま再現するということは、当然、食材の入手ほか、あらゆる問題をクリアしなきゃいけません。 なので、当然と言えば当然の価格ではあります。お店側も必死で、決してぼったくってるわけじゃない。2000円でやっと利益が出る、そんな感覚です。

特に、食材が命の、高級なお寿司屋さんは2人で行けば日本円で10万円は覚悟しなきゃいけないお店が結構あります。 特にニュースにはなりません。珍しくはないから。

でも、そんな市場に慣れてしまったら、心の中である逆転現象が生じます。

アメリカが高いんじゃない 日本が安すぎるんだ」と。

なので、東京出張はヤメられない(笑)

美味しくて、格安で、チップもいらなくて、退店時「ありがっ、ございゃーす!!」と声がけしてくれる店員までいる。

マズくて高くてチップの額が少しでも少なかったら店の外まで追いかけてくる店員がいるニューヨークとは大違いです。

それくらい、日本のレストラン文化は素晴らしい

隣の牛丼屋より20円でも安くする。それはレストランに限りません。週刊文春が420円なら、週刊新潮は400円に。あの狭い国の中で価格競争は歯止めが効きません

日本のある男性の知り合いが、ドヤ顔で僕に言いました。「ランチに500円以上かけるヤツ、バカよ。今はワンコインで十分美味いんだから!」

日本のある女性の知り合いが、勝ち誇った顔で僕に言いました。「無料のクーポン雑誌をうま~く利用するから、アタシ、ここ数年、正規価格で美容院行ったことなーい」

なるほど。

素晴らしい国です。

彼らが得意げに話したくなる気持ちもわかります。

と、同時に。

詳しい経済のことはわからないけれど。 間違いなく日本はこの先何年も景気が回復することはないんだろうなぁということもわかります。

GDPが何%プラスになったとか、雇用倍率が何%下がるとか、色々ニュースにはなっていますが。

庶民の肌感覚で「景気が上がってきたなぁ~」と思えるようになるのは到底先だとわかります。

外から見ると。日本を離れて、たまに日本に来ると。あったり前の経済の流れがみんな見えなくなってるの?と不思議に思えてくる。

牛丼チェーン店が20円また値下げをすれば、そのシワ寄せは当然、人件費です。

20円安くなった!と喜んでるオマエの時給がまた下がるんだよ。大丈夫?

ランチはワンコインで済ます♪とドヤ顔してる場合じゃない。さらにスゴいドヤ顔で、その分、おまえの雇い主はおまえの給与を削っていく。

クーポン女子が、どうして貧乏なまままのか。そりゃみんながクーポン使うから。貴女のお客もクーポンを使う。その割引分は、もちろん貴女のオーナーは負担しない。貴女のサラリーが負担する。 前述の女性はマッサージ師でした。「今の客はみーんなクーポン使ってくるの!」と不機嫌な表情で言いました。とてつもない矛盾に気付いてるのかどうかわかりません。僕にはコントに見える。

お客として行って価格競争の恩恵を受けるなら、当然、労働を提供する場合にも価格競争に巻き込まれる

牛丼屋で安い安いと喜んで、格安居酒屋でバイトしてたら、そりゃ一緒だ。

こんな経済学の基本の基本が、どうして見えなくなるのか。見えてるのに、見えてないフリをしてるのか。

マクロで見ずに、自分だけは得できる!と考えているのか。

10円単位の価格競争をしている限り絶対経済は回復しない

今回のメルマガは、日本の方には不快に思う方もいらっしゃると思います。

でも、やっぱり、たまに行く日本で毎回感じちゃうことなんです。

たまに海外から行く僕にとってはありがたい。

でも、いいの? 本当に。それで。

消費者の時だけ、格安を望んで、労働時の報酬だけは、割高を望む。

冷静になれば、それがとてもアンフェアなことだと、すぐわかるはずです。

では対策は?

たまには、背伸びして高級レストランに行ってください。見えない下着に自己満足で高いブランドを買ってください。

見栄で高い消費をするのはバカだという、資産運用本の皮を被ったただの節約本が目立ちます。

確かに、浪費はよくない。でも、マクロの視点で考えれば、日本の景気回復を少しでも担えるならたまにはいいんじゃないの? と思ってしまいます。

今の日本で少しくらいの贅沢しても、食べていけなくなるくらいの貧困層にはならない。

 

高橋克明この著者の記事一覧

全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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