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アベノミクスの果実は、結局「移民」が収穫するしかないのか?

自民党が先の衆院選の公約として掲げた「幼児教育無償化」。社会保障の拡充は重要な政策ではありますが、少子高齢化・働き手不足が進む中、その財源はどう確保するのでしょうか。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、安倍政権の経済政策だけを見ると「保守党ではなく英国の労働党的」であり、その行き着く先は国民の多くが貧困に陥る衰退国家だとした上で、まさに今が日本の行く末が決まる「分水嶺」であると断言するとともに、我が国復活に必要な「移民政策」について提言しています。

日本の分水嶺が近い

日本の不可逆的な変化点に近づいている。労働人口が減少するが、幼児教育も無償化して社会保障を拡大し、消費税だけではなく、多くの増税を行い、かつそれでも財政均衡化が遠ざかる。さあ、どうなるのでしょうか? 検討しよう。

社会民主主義への道(英労働党政権の道)

今の自民党政権は、1960年代の英国の労働党政権を見ているようである。自民党は、幼児教育の無償化などの社会保障を充実しているが、その上に労働者の賃金を上げた企業には、法人税を引き下げるという。自民党は、経済政策だけを見ると、保守党ではなく英国の労働党的である。

そして、GPIFと日銀のETFで多くの企業の大株主にもなっている。現時点では企業運営にはかかわらないというが、側面的に企業に圧力をかけることができる位置にいる。

しかし、日本企業は、優秀な労働者の不足で海外生産を増やし、人口減少で国内需要の落ち込みを見越して、海外市場を開拓して好決算にしているので、そう簡単には政府の言うことを聞けない

日本は後継者難で25年には130万社近い中小が廃業の危機に陥る見通しで、国内では部品の調達もできなくなる。経営を引き継いでも中小企業は従業員確保ができずに、廃業になることが見えている。

海外からの労働者を受け入れる移民政策をしないことで、国内需要が減少するとともに労働人口の減少も起きて、日本の国力は消耗することが、企業経営者には見えている。

2019年には消費税を上げるし、高額所得者の所得税を増税して財政均衡化を行うというが、日本の国力がなくなる中で、所得格差を無くす社会民主主義の政策である。

このため、日本に魅力がなくなり、ドイツ自動車以外の欧米企業は去っている。高級品も売れないからである。デフレは継続して、平均単価が500円の幸楽苑も窮地にあり、マクドナルドなどの300円で食べられる外食チェーン店が復活している。というより、外食全体が減少して、スーパーやコンビニのおにぎりなどの安い中食に需要がシフトしている。このため、500円以上の弁当も売れていない。

金融政策の強化

このような国家産業の拡大なしに、社会民主主義政策を行うと、英国の労働党の結果と同じになる。国民全員が今より貧乏になる。

徐々に、黒田日銀総裁も金融緩和の行きすぎが、銀行の経営を圧迫して、資金の流通ルートを詰まらせることがわかり始めたが、安倍首相と取り巻きは、もっと金融緩和をするべきと日銀の金融政策運営に関し「物価2%目標の達成に向けて、大胆な金融緩和を着実に推進することを期待する」と述べた。

有効な規制緩和などの産業振興策も行わず、労働者不足をこのままにして税収も伸びない中で、社会保障制度・年金を維持するために大胆な金融緩和を行うと、それは財政ファイナンスである。

もちろん、増税は行うが、所得控除の縮小、森林環境税や観光促進税などを行っても6,000億円程度しか増えない。年間30兆円の赤字は埋めることができない

このため、年間30兆円の財政赤字を国債でカバーしているが、日銀は毎年80兆円国債を買うと、いつか市場には国債がなくなる。現時点で日銀の保有率は50%を超えている。

銀行の余剰資金は日銀がマイナス金利にしているので行き場を失い、ゼロ金利の国債を買うしかない状況であり、景気が良いという現時点でも、利益が出ずに大規模リストラを行う銀行は不況業種になってしまった。

日銀が年間6兆円のETFを買っているので、市場3位の保有率である。そしてGPIFが1位である。株価は2万2,500円であるが、もう少し上がるかもしれない。世界的な景気が上昇しているからである。しかし、公的介入のある東京市場は魅力がなくなる。このため、景気後退時は、ますますETFを買わないと株価を維持できなくなる。

バーゼル3の全面発効

バーゼル3の全面発効が遅れているが、銀行の資産における国債の格付けによるリスク回避部分では世界は合意している。銀行の安定性のための資産上積が問題にあっているだけである。

このバーゼル3により、AA以下の国債は、銀行にとって安全資産ではなく、リスク資産化を強いる。このため、国債を買えないことになるので、銀行は日本国債A+を買えなくなる。三菱UFJ銀行が国債を買わないと宣言したのは、この理由である。

その上に財政ファイナンスと思われたら、日本国債の格付けは現時点の格付けA+から下がることが予想できる。そして、Bランクの国債は年金機構も買えないことになる。

国債がBランクになると、国リスク増大とになり、1ドル=200円以上の円安になる。そして、輸入品の値上がりで高インフレになる。

これに伴い国家予算も増額が必要になり、そのため、予算編成をするうえでも一層の国債発行が必要で日銀直接購入となり、国債の格付けを下げることになる。悪循環が起こり、悪くするとハイパーインフレになる可能性もある。

こうならないためには、財政均衡化の努力をする必要があり、このため、社会保障の見直しとともに、大規模な増税を繰り返すことになる。当然、増税の中心は高所得者の税金を増やすことになる。ということは、年金生活者の年金が減るが、それ以上に国民の平等化、再分配を強化することにつながる。国民全員を貧しくする社会民主主義の完成である。

分水嶺にある日本

今の自民党のアベノミクス政策を行うと、日本は国民全体が徐々に貧しくなり、衰退することが予測できる。

日本を復活させるためには、労働力をある程度入れて、消費者であると共に納税者の数を増やすことが必要なのだ。そうしないと、日本の衰退は急激に起こってくることになる。

しかし、国内の農産品の方が安くなり、少数化した大規模農家などが復活してくることになり、植生文明の発展にはよいことになる。しかし、日本は先進国ではなくなり、国民全員が貧乏な衰退国家になる。

このように、日本は衰退国家か先進国かを決める分水嶺になってきたようである。そのことを国民も政治家も意識していないことが問題なのだ。アベノミクスの金融緩和一辺倒政策に対して、野党の激しい追及もない。国民全員が知らない間に社会民主主義の道を選択したことになっている。

分水嶺であることを意識して政治的に選択するべきである。

そして、移民政策は慎重に行う必要がある。宗教・文化が著しく違う人たちを大量に入れると、EUと同じ問題を起こすことになる。

そうならないためには、移民政策は民族・宗教に考慮して選択的な移民を行う必要がある。もう1つが、移民の数であり、国民の1割程度にすることが必要である。最大でも1,000万人程度であろうと思う。移民を入れる職種を選択する必要もある。日本人が嫌う介護、建設、サービス産業、製造の中小企業などであろう。

アメリカとEUが金融緩和、特に量的緩和で、景気を押し上げられたのは、需要を作る移民政策があり、人口が減少していないことによる。日本は労働人口の急激な減少で、量的緩和の効果がなかったのである。

それを無視した金融緩和強化策をしても、結果は円暴落を早めるだけである。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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